銚子電鉄とJRが取り組む「SideM」コラボ「315にイイ銚子!」キャンペーンにこめられた願いとは?異例の楽曲コラボも

「アイドルマスター SideM」(以下、「SideM」)のアイドルたちが実際の企業や団体とコラボレーションした企画「アイドルマスター SideM 315プロダクション お仕事コラボキャンペーン」。そのひとつとして2021年秋、ソーシャルゲーム版「アイドルマスター SideM」のゲームそのものも巻き込み大々的に始まった銚子電気鉄道と「SideM」のコラボはその後もさまざまにアップグレードされながら続いていき、2023年3月にいったんのフィナーレを迎えるまで1年以上を「SideM」と共にした形となった。

そんな長期コラボが終わってしばらく経ち、寂しさを覚え始めた方もいたであろう2023年10月28日の「THE IDOLM@STER SideM 8th STAGE ~ALL H@NDS TOGETHER~ CATCH MY H@NDS」公演にて、銚子電鉄と「SideM」が再度コラボすることが発表された。今回はJR東日本千葉支社も加わってさらにパワーアップするということで心待ちにしていた方も多かったはずだ。

そうして昨年12月から始まった「315にイイ銚子!」キャンペーン。すでに多くのプロデューサーが参加し充実の体験が綴られたSNS投稿も散見されるが、「銚子電鉄開業100周年&EeeE銚子サービス開業記念」と銘打たれた本コラボはどのように生まれたのだろうか?

コラボを企画した銚子電気鉄道 常務取締役の柏木亮氏とJR東日本千葉支社 成田統括センターの吉川香絵氏に、コラボの経緯や実感、そして本コラボと同時に発表されたJupiterと銚子電鉄のコラボ楽曲の話まで広く話を伺った。

■1年以上共にしてきた銚子電鉄×「SideM」の黄金コンビに今、JRが加わった理由

――まずは自己紹介からお伺いできますか?

柏木氏:銚子電気鉄道の柏木です。銚子電鉄の経営や、町を盛り上げる企画運営などを行っています。今までの銚子電鉄と「アイドルマスター SideM」とのコラボもすべて担当してきました。

吉川氏:JR東日本千葉支社の吉川です。今回の315にイイ銚子!キャンペーンを担当しています。

――JR銚子駅と銚子電鉄ってホームも共有していて物理的に近い存在だと思うんですが、お二人も普段接点はあるんですか?

吉川氏:そうですね。銚子を盛り上げるためのイベントを一緒に行うこともありますし、これまでの「SideM」のコラボについてもたくさんお話は伺っていて、たとえば315プロダクション銚子支部の飾りつけを手伝ったりしたこともあります。

――銚子電鉄さんは2021年秋から「SideM」と長らくコラボをされていますが、今回の「315にイイ銚子!」キャンペーンではついにJR東日本千葉支社さんが加わることとなりました。どのような経緯だったのでしょうか。

吉川氏:そもそものきっかけは、私が「EeeE銚子」というJR東日本が提供する観光型MaaSの担当になったことです。

地域・観光型MaaS「EeeE銚子」
https://www.jreast.co.jp/multi/maas/eeeechoshi/

「MaaS」というのは「Mobility as a Service」の略で、簡単に言うと、公共交通機関やそれ以外の移動手段など、とある地域に存在する移動に関する複数の情報をひとまとめにしよう、というものです。その中で、移動手段の他にも食や遊び・おすすめスポットや電子チケットなどの情報も加えて観光に特化した形でまとめたものが「観光型MaaS」と呼ばれます。

「EeeE銚子」は、千葉支社のエリア内では初めての「観光型MaaS」ですね。2023年の8月3日から始まりました。

――そのPRに「SideM」とのコラボを採用された理由はなんですか?

吉川氏:どうPRしたらいいのか考える中で、先ほどもお話したように銚子電鉄さんから聞いていた「SideM」コラボのお話が思い浮かんで。プロデューサー(※「アイドルマスター」シリーズファンの総称)のみなさんが本当に多くの場所を周って楽しんでくださる様子もたくさん見てたんですよね。それで「これしかないな」と思って、「EeeE銚子」が始まってすぐの8月に、コラボ企画について相談しました。

――過去の銚子電鉄さんと「SideM」とのコラボを見ていて、吉川さんの中で印象に残っていたことはありますか?

吉川氏:いろいろありますが、最初に「『SideM』とプロデューサーさんたちってすごいな」と衝撃を受けたという意味では銚子電鉄さんとJR銚子駅で開催したイベントで2022年2月20日の「来らっせ銚子!温泉FES」ですね。

この時犬吠埼温泉郷PR大使としてカエールが来てくれることになり、この日はかなりの雨だったのにたくさんのプロデューサーさんがカエールのぬいぐるみを持って銚子に来てくださったんです。あんなにカエールに会いに来てくれて嬉しかったですし、そのパワーに本当に衝撃を受けましたね。

イベントの様子。JR東日本千葉支社マスコットキャラクター・駅長犬(左)とカエール(右)

あとは、銚子電鉄さんが2022年7月からやっていた「銚子PR大作戦!」の最中に柏木さんと打合せで銚子市内を周ることがあって。その時に来てくれたプロデューサーさんたちに柏木さんが「どこから来たの?」とか聞くんですけど、遠くから来てくださった方も多いんですよ。その様子からも、その頃からやっている銚子支部のホワイトボードの書き込みからも、みなさんが本当に銚子を楽しんでくださっていることは伝わってきていました。それにみなさん、すごく発信もしてくださいますよね。

そういうものを2年間見せていただいて、「EeeE銚子」をたくさん使っていただけるという意味でも、広めていただくという意味でも親和性が高いと思い、銚子電鉄さんの力もお借りして参画させていただきました。

柏木氏:「EeeE銚子」をPRするのであれば、まず銚子に来てもらう人を増やして、その上でさらに使ってもらわないといけないですよね。でも「EeeE銚子」は簡単に言うと電子チケットサービスが主なので若い方のほうがすんなり使っていただけるはずで、かつ、せっかくだから大きいイベントをやるのであれば「SideM」とのコラボ企画がいいんじゃないか、という話をしたんです。

――そうだったんですね。吉川さんは当時から「SideM」はご存じだったんですか。

吉川氏:いえ、その頃は銚子電鉄さんとコラボしているアイドルがテーマの作品ということしか知らなくて。なので私は「SideM」で初めて知ったのがカエールだったんですよ。手帳に315プロダクションのアイドルのみなさんの名前や前職を書き出したり、曲を聴いたりして、今でも毎日勉強中です。でもとにかく、あの時カエールが来てくれたから今に繋がっていますし、JR東日本千葉支社のマスコットキャラクター「駅長犬」とカエールが手をつないで並んだこのイベントは、今思うと今回のコラボを予告していたのかな、と感じます。

■「EeeE銚子」が「315にイイ銚子!」になるまで

――「315にイイ銚子!」キャンペーンは本当に盛りだくさんですが、どんなところから決めていきましたか?

吉川氏:まずは、ずっと銚子電鉄さんとコラボされていたJupiterの天ヶ瀬冬馬(以下、冬馬)さんに加えて、今回はDRAMATIC STARSの天道輝(以下、輝)さんにも前面に出ていただこう、というところから決めました。

柏木氏:JR東日本千葉支社さんも加わるということで、Jupiter以外のユニットにも出ていただいて今までのコラボ企画とは違った雰囲気を出せたらと思ったんです。それで考えた時に、Jupiterが銚子電鉄のイメージを背負って立ってくれるのであれば、今まで「SideM」とずっとコラボさせてもらってきた経験上、もうひとつのユニットはDRAMATIC STARSしかないだろうと。そして代表として出てもらうなら冬馬と輝でいこう、というのは即決でした。

――しかも「EeeE銚子」というサービスのネーミング自体も「いい調子」と「いい銚子」をかけたギャグじゃないですか。ギャグをよく言う輝はぴったりだなと感じました。

吉川氏:そうなんですよね。サービス名称を「EeeE銚子」と名付けた時は「SideM」とコラボするとはまったく考えていなかったんですが、天道さんのギャグも、笑えないけどそこが可愛くてちょっとくすぐったくなる感じじゃないですか。「315にイイ銚子!」っていうキャンペーンの名前やハッシュタグもみなさんすごく「DRAMATIC STARSっぽい」「輝っぽい」と喜んでくださるので、ありがたいです。

――ちなみに今回のコラボに通してJRのイメージを変えたい気持ちがあったんですか。

吉川氏:そこは「EeeE銚子」を作った時から考えていたことでした。たとえば「EeeE銚子」と一緒に始まった銚子電鉄さんの1日乗車券・Beicaは、もともと現金での清算だけだった銚子電鉄さんがインバウンドのお客様にもゆくゆくは銚電の切符を買いやすくなるように、というところを見据えて始まったものなんですね。で、それを作る時、素直に「1日乗車券」としてもよかったんですけど、やっぱりそれだけじゃ面白くない。銚子電鉄さんが多くのぬれ煎餅の販売米菓(べいか)製造業者と言われているというエピソードと、JRのSuicaを掛け合わせた名前にしたんです。JRがSuicaを文字ったBeicaを宣伝することで「そんなことを許していいんだ、JR!」と思っていただければなと(笑)。

Beicaと「315にイイ銚子!」キャンペーンでもらえるBeica風カード。Beicaのデザイン自体もどことなくJRのSuicaを感じさせる。

JRとしては銚子電鉄さんとご一緒させていただくことでそういった相乗効果があったらいいなと思いつつ、JRが持つプラットフォームを提供することで、Beicaのように、銚子電鉄さんや銚子の方々のお力になれたらいいなと思っているんです。

――輝がJRさんのイメージを変えるというお話で言うと、やっぱり今回のキャンペーンの中で、東京駅から銚子駅を繋ぐ特急しおさい号の特別車内放送を輝がやっているのがものすごいことだなと思いました。銚子電鉄ではずっと冬馬の車内放送を使われていますが、それこそ「これってJRさんでも許されるんだ!?」という感じで。実際に車内で聞くと想像以上に“アイドルとしてPRの仕事をしている天道輝”を感じて驚きました。

吉川氏:銚子電鉄さんと「SideM」がコラボしているということはすでにプロデューサーのみなさんに認知されていると思うので、JRとのコラボも広くみなさまに知っていただけたら嬉しいなと。でもみなさんに喜んでいただけているようで安心しました。まだ期間もあるので、プロデューサーさんたちにはぜひ、しおさい号に乗って聞いていただけると嬉しい限りです。

――輝については、JR東日本千葉支社さんのXアカウント(@bosohakkenden)で2023年11月16日に「315にイイ銚子!」キャンペーンのポスター撮影こぼれ話もされていましたよね。あの輝の髭についてのポストも「何かすごいキャンペーンが始るんだな」と感じさせるものでした。

吉川氏:すべて本当の話です! 実はポスター撮影の前に、「髭を剃った方が良いか」というご相談をいただきました。社内でも少々議論した上でポストに書いたとおりに「輝のトレンドマークでもあるのでそのまま大丈夫ですよ」とお伝えしたら、当日は普段よりも短く整えた状態で撮影にご参加いただきました。

――実際にあったお話だったんですね! ああいったところから、車内放送もこうやって収録したのかな? とかキャンペーンについての想像がいろいろと膨らんでいきました。

柏木氏:そういうところを想像していくのは、「アイドルマスター SideM」が持つ楽しさのひとつですよね。

吉川氏:みなさんそうやって自分たちでいろいろストーリーを作ってくださるんですよね。私は結構みなさんの発信を拝見してるんですが、こちらが思うストーリーを汲み取ってくださる方もいれば、全然違ったストーリーを考えている方もいて、ちょっと感動します。みなさんの発信はすごく楽しませてもらってますね。

先日も、しおさい号の天道さんの車内放送で流れるギャグに対して知らない方が「つまらないな」ってこぼした……というポストを拝見したんですが、あれも最高でしたね!(笑)。しっかり物語が生まれてるじゃないですか。そういう、プロデューサーさん以外の方も巻きこんだ予想外の反応が起こっていて、さらにプロデューサーのみなさんがそれを面白がってくれるのがいいなあ、素敵だなと感じています。

――今回は他にも、駅に設置されている輝と冬馬のパネルに白フチがなかったり、銚子支部にタイムカードができたり、今まで以上に実在性へのこだわりを感じます。

柏木氏:考え方としては、私が「SideM」関係なく銚子電鉄でいろんなことをやるのと同じなんです。銚子に来て銚子電鉄を使ってほしいという私たちの都合もある、でもお客様にもちゃんと喜んでもらいたい。その両方をどう取るか常に考えてきて、今回は「SideM」にとってもプロデューサーさんにとっても、銚子電鉄とJRさんにとってもいいところを考えた結果、バンダイナムコエンターテインメント(以下、バンダイナムコ)さんが今目指しているところでもありプロデューサーさんに求められているものでもある実在性をより大事にしようと思ったんです。

吉川氏:JRもコラボが決まってじゃあどうやってエリア内で宣伝しようかと考えている時に、銚子電鉄さんから「これが『SideM』コラボですよ」と日常から切り取ったテーマパークみたいにはしないほうがいいというアドバイスをいただいて。結局特別な扱いをせず、JRがタレントさんとお仕事した時のポスターと同じようにどこの駅でもいろいろ展開する形にしたんです。そうしたらみなさん「普通に溶け込んでるところがいい」と言ってくださって、たくさん貼ったのに16駅のポスターを全部めぐってくださったりして。本当によかったです。

■なぜ本キャンペーンは「SideM」のプロデューサー心を揺さぶるのか

――先ほど「SideM」の楽しさについてのお話がありましたが、なぜそこまで「プロデューサー心」がわかるのでしょうか?

柏木氏:最初は全然わかってなかったです。コラボを発表してすぐの2021年10月5日、吉川さんもいましたが両国駅前のイベントに出店した時に、いきなりプロデューサーさんが来て「コラボしてくれてありがとうございます!」と頭を下げられて。「このコンテンツとプロデューサーのみなさんのすごさってこれなんだ」と腑に落ちました。つまり自分の担当アイドルが、現実の世の中でちゃんと仕事をしてると伝わることに大きな喜びを感じてくださるんですよね。そこが始まりでした。

吉川氏:担当アイドルが活躍できるように世に広めていく感覚を楽しむのがプロデュースなんですよね。

柏木氏:言葉だけだと難しいかもしれないですね。私はというと、もともとゲームが好きなんです。「NAMCOT」や「ギャラクシアン」など、ナムコのゲームが好きでした。そういう昔のゲームってドット絵が基本で、たとえばRPGで何か呪文を唱えるボタンを押してもただ画面が白く光るだけだったり、できる表現も本当に限られてたじゃないですか。でも、だから自分の中で想像が膨らんで楽しかった。

お話をいただいてソーシャルゲーム版「アイドルマスター SideM」を初めてやった時に、それと同じだなと思ったんですよね。もちろんストーリーやカードもありますが、それをもとにして自分で想像を膨らませながら楽しんでいくものだと思ったんです。大事なのは、そうやってリアルを無限に想像させる余地があることなんだと。話しているとバンダイナムコの担当の皆さんは根っからのゲーム好きなんだなと感じました。それぐらいゲームが好きな方たちが作ってるコンテンツだから感覚がつかみやすかったのかなと思います。

あと(代表取締役社長の)竹本は理解が早かったです。それは多分、みなさんおっしゃってくれていますが「SideM」と銚子電鉄の性格が似てるから。「SideM」には「理由(ワケ)あって」というキャッチコピーがありますが、銚子電鉄もやっぱりそれが一番にある。だから「SideM」コラボの最初にソーシャルゲーム版「アイドルマスター SideM」で実施したポスター企画(2021年10月2日開始「電車屋なのに自転車操業!理由(ワケ)あって銚子電鉄コラボ!」)も、1万枚もポスターを作って大盛り上がりしてくださったんだと思います。

犬吠駅に飾られたポスター企画参加者一覧(2021年)

あれは面白かったですね! ゲーム内でポスターを作るアイディアなんて見たことないですよ(笑)。でも、企画してくれる方がいて、そこに面白がって参加してくださる方もいて……そしてそこから2年ぐらいやってきて、銚子支部のコメントにも「銚子を好きになった」と書いてくださる方も結構いて。そういったいろんな親和性を考えると、本当に運命だなって思いますね。

吉川氏:……ちょっといいコメントしようとされてますか?(笑)。

柏木氏:(笑)いやいや、実際そうなんですよ。今回のコラボがきっかけで、今までのファン層と全然違う方々がたくさん来てくださるんですから、面白いし楽しいですよ。

「より多くの鉄道ファンの皆様に来ていただく発想」だけでは、鉄道ファン自体ものすごい多いわけでもないので限界があるわけです。じゃなくて、やっぱりもっと違う人たちに鉄道を知ってもらいたい。世の中の人は鉄道にもぬれ煎餅にも興味ないとわかってますが、でもきっかけがあれば、鉄道業界のメインターゲットとされている男性だけだけでなく女性だって見てくれるかもしれない。じゃあそのきっかけになるものってなんだ? って話してた時に、このお話をいただいて。本当にありがたいきっかけをいただけたなと思っています。

■「315にイイ銚子!」キャンペーンに込めた想い

――今回のキャンペーンで、今までと違った手応えを感じたポイントがあればお聞きしたいです。

柏木氏:銚子支部に来る方が増えた点でしょうか。(銚子支部に入るために必要な)入室証も最初に500枚用意していたんですが、1ヶ月ほどでなくなってしまい予想より早かったです。アクリルキーホルダーも一度売り切れました。あと、銚子支部のノートやホワイトボードに書いてくださる方が増えているように感じます。

吉川氏:「初めて来た」という方も多いですよね?

柏木氏:多いですね。「やっと来れました」って方もいて。コロナ禍の影響もあって今やっと、という方もいらっしゃると思うんですが、今回来てくれる方が多いのは、JRさんと一緒にキャンペーンを企画させていただけたことも大きいと思います。銚子電鉄だけでコラボしていた今までと大きく違うのはそこです。

――銚子に電車で行く場合、必ず何かしらJRさんの電車には乗りますし、移動時間を考えるとできればしおさい号にお得に乗りたい。そしてさらに着いたら、お得に観光を楽しみたいわけですが、「315にイイ銚子!」キャンペーンサイトにそのあたりの導線のヒントがあったので、行く想像をしやすかったかもしれません。それこそ「MaaS」がやろうとしてることですよね。

吉川氏:それはありがたいですね。本当はJRとしては、世に広まっている電子決済サービスのように自然に「EeeE銚子」を使ってほしいんです。今回「SideM」と銚子電鉄さんに力をお借りして。三者コラボがすごくハマってちゃんと花開いたんじゃないかなと思っています。

柏木氏:導線の話は、実は今までも課題だとは考えていたんです。ただ、自分ひとりでやるとやっぱり限界があってできなかった。それで「次やる時はもっと!」と考えていたので。その部分は今回はクリアできたと思います。そしてこれができたのは、2年間コラボさせていただいて、進めるスピードがものすごく上がったからだと思います。バンダイナムコさんとJRさんが8月に会われてから3カ月、普通なら絶対こんなに早くできなかったです。毎日めまぐるしくいろいろ決めていきました。

私たちが考えるうえで大事なのは「EeeE銚子」を使ってもらうための方法だけじゃなくて、地域にお金を落としていただくにはどうしたらいいか、だと思ってるんですよ。それが鉄道会社の存続にも繋がるわけで、やっぱり「SideM」が地域貢献をするためにもそこが大事なんだってことは言いたいです。

僕がやってることも基本そうです。銚子電鉄の経営でもあるけど、そこに付随する地域のマネジメントという側面もある。なぜかというと地域が廃れれば鉄道も廃れるし、鉄道が廃れれば地域も廃れるからです。同時にふたつとも成り立ってないとローカル鉄道は成り立ちません。そのうえで私たちがやっていることは、もしかしたらお金に見合わないように見えるかもしれないけど、やった分だけお金だけじゃないものが戻って来るんですよ。

ぬれ煎餅やグッズを売ることもなんでやっているかというと、いろんな方がそれをきっかけに銚子に来て町を回ってくれて、地域にもお金も落ちるから。そして次も来たいと思えるぐらい町を好きになってくれれば、もっと町は元気になる。要は1回目に来る目的を作り、次も来たくなるようなチャンスを作るというのが私の仕事なんですね。

そういった中で今回はそこにJRさんも入ってくれて、吉川さんの企画によって、今までしおさい号を知らなかった方も初めて乗るような機会を創出されて。なんならホワイトボードに「通算6回目」と書いてくれた方もいるんですけど、銚子のリピートにも繋がった。それは地域やお店の方といった“ここにしかいない人に会いに来る”構図を作れたからだと思います。

でも要は今回、銚子電鉄としては確かにいろいろノウハウは教えましたけど、何より吉川さんが頑張ったからこのキャンペーンがあるんです。「大きいことやるか」と聞いたら「やる」と言うから。「大変だぞ」とも言いましたけど「頑張る」と言って一生懸命やってました。私は結局こういうキャンペ―ンがうまくいくにはおもてなしの心が大事だと思っているんですけど、おもてなしの心がわかる方だからできたものだと思います。今回のキャンペーンには、吉川さんの魂が入ってるんです。

吉川氏:(笑)。実はバンダイナムコさんにお話に行った時はこんなに大きくなるとは想像してなかったんですけど。結果として本当に、これで心置きなく……ぐらいの、私のJR人生一世一代の企画になりました。

――そこまで異例のものだったんですね。

吉川氏:そうなんです。でも、ここまで来るのにも「SideM」やプロデューサーのみなさんからすごく力をいただいて。私、横浜Kアリーナで開催された「THE IDOLM@STER SideM 8th STAGE ~ALL H@NDS TOGETHER~」の現地に行かせていただいたいんですね。

その時はまさに準備の真っ只中で、私は初めてのことも多かったので泣きながら進めているような感じだったんですけど(笑)、でもライブで今回のキャンペーンのことが告知されてプロデューサーのみなさんが「ワーッ」と言ってくれた瞬間に鳥肌が立って。「頑張ってよかったな」と思いました。そのあと1ヶ月はさらに調整が大変だったんですが、くじけそうな時にあの歓声を思い出して「頑張ろう」と奮い立たせていました。感動的でしたね。行けてよかった、歓声を聴けてよかったです。

それに「SideM」の歌からも元気をもらっていて、最初は歌を覚えようと思って聴いてたんですけど、特にDRAMATIC STARSの“GOOD NEW MORNING”が泣けますね。天道さんが歌う歌詞がとても良くて、仕事が大変な時の朝によく聴いていました。11月に幕張で開催された「315 Production presents F@NTASTIC COMBINATION LIVE ~BRAINPOWER!!~」にも、初日に今回のキャンペーンのポスターが貼られることもあり駅のチェックも兼ねてお邪魔して。贈った楽屋花をみなさんが撮ってくださるのが嬉しくて、遠くから怪しく見たりしてたんですけど(笑)、それでライブを見たら結構S.E.Mも好きになって、あれから聴くようになったり……結構いろんな元気をもらったんです。

――そうだったんですね。

吉川氏:まだキャンペーンの終了まで少しありますけど、現時点(1月中旬)まででも個人的にはもう、想像していた以上の反応をいただけていて逆に怖いぐらいで。そこまでみなさんに言っていただけるところまでできたのであれば、私個人的に本望だなって感じですね。泣きそうなぐらいです。

JR16駅のポスターを見に多くのみなさまが行ってくださって、「ありがとう」と言ってくださって。何回も言いますけども、正直想像できていなかったです。だから本当にありがたくて。

柏木氏:今回、あとはもう少し早く告知できれば、みなさん予定も空けやすかったのかな、とは思いました。他にも「もっとよくなりそうだな」というところも実はあって(笑)。

――キャンペーンの反響はいかがでしたか。

吉川氏:おかげさまで、たくさん反響いただきました。私はSNSとあのホワイトボードのみなさんのコメントがすごく原動力になっています。

柏木氏:私も「#315にイイ銚子」見てますよ。常にエゴサしているので(笑)。

吉川氏:そうですね。今までSNSを見ることもそんなになかったんですけど、今、みなさん銚子に来た時のお話をハッシュタグをつけてXにポストしてくださるじゃないですか。あれをめっちゃ面白く、毎日の仕事の帰りとかに見てます(笑)。みなさんに喜んでいただけてるなって。それだけで本当にありがたいです。

■銚子と「SideM」が奏でる未来の音色とは

――最後に、こちらも「THE IDOLM@STER SideM 8th STAGE ~ALL H@NDS TOGETHER~」で告知された情報ですが、銚子電鉄さんの開業100周年テーマソングをJupiterが担当されることが発表されています。315プロダクションのアイドルが実在の企業さんとコラボして歌をリリースすることは初めてではないかと思うのですが、簡単に経緯をお伺いできますか?

柏木氏:Jupiterと曲を作ろうと決まったのは、1年続けてきた「銚子PR大作戦!」コラボが終わる2023年の2、3月頃です。「開業100周年記念で何をしましょうか」「歌を作るのはどうでしょう」という話になり、そうこうするうちにJupiterに歌ってもらえることが決まりました!

――歌の内容について、銚子電鉄さん側から何かオーダーはされましたか?

柏木氏:歌のイメージは伝えました。まず社内でも「銚子電鉄らしい歌ってどんな歌だろう」って話になったんですよ。その中ではさっきの「理由(ワケ)あって」の話のように、銚電っぽい意表をついたギャグみたいな歌という案も出たんですけど、私としては「いや、さすがにここはカッコいい歌のほうがいいんじゃないか」という想いがあって。やっぱりJupiterが歌うわけですから。Jupiterの961プロダクションから始まった歴史を考えたら、ちゃんとカッコよくやるほうがいいんじゃないか、と話をしたんです。そしたら周りも「そうだよね」と。

銚子電鉄の100年というのは、もちろん銚電が100年頑張ってやってきた歴史があるわけじゃないですか。だから銚子電鉄100年の歴史と、「アイドルマスター SideM」を通してJupiterが今まで頑張ってきた歴史、ふたつの歴史の振り返りというイメージの曲が良い、ということを伝えました。「100年間ありがとう」ってみんな言ってくれるかもしれないですけど、銚電としては「次の100周年へ」と思っているんです。感謝ももちろんあります、でも次の100年まで絶対やりたいじゃないですか。「SideM」も同じで、ゲームはもうないかもしれないけど、「SideM」も次の100年の時代に一緒に行くんだというテーマを入れてほしい、って。聞いてもらえばわかると思います。有名な方に書いていただきましたし、かなり元気になる曲だと思いますよ!

吉川氏:私も聴かせていただいたんですけど、やっぱりJupiterの歌だなって。歌ってくれてよかったなって思う曲だと思います。

柏木氏:なので「315にイイ銚子!」キャンペーンは今年の2月までですけど、まだまだこれから歌の話も含めてまたすごいことが始まりますよ!

――ありがとうございます。すごく期待が膨らみました。

吉川氏:ほんとすごいですよ。多分、みなさん喜ぶものです! 待ち望んでいたやつじゃないかなと。

柏木氏:ですね。ぜひ、期待していてほしいです。

アイドルマスター SideM×銚子電気鉄道×JR東日本千葉支社 銚子観光誘致コラボキャンペーン「315にイイ銚子!」
https://www.choshi-dentetsu.jp/sidem/315-eeeechoshi.html

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