親が介護施設に入ることになったときは年金や貯金で足りるだろうかと考えています。注意点はありますか?

親の介護施設入居について知っておきたいこと

親が介護施設に入居する前に知っておくべきことは、一般的には入居費用などの情報が中心でしょう。しかし、親に資産がある場合はその管理やリスクについても知っておく必要があります。

民間企業の調査で、親の資産に関しての意識調査を行った結果を公表しています。まずは親の介護施設入居の費用に関するアンケート結果を見てみましょう。

親の介護施設入居に関する現状の意識

株式会社ファミトラが2023年9月に行った「介護施設とお金に関する調査」のアンケート結果(抜粋)は以下のとおりです。

__●親のお金や年金で支払い不足分は親の資産を処分:30\.5%
●親のお金や年金で支払い不足分は自分が負担:55.4%
●自分が負担する:8.6%
●その他:5.4%__

__●知っている:21%
●知らない:79%__

__●知っている:27%
●知らない:73%__

8割が親の資産を当てにしているが、7割は不動産売却できなくなるリスクを知らない

アンケート結果をまとめると以下のとおりです。

__●介護施設の入居費用は、80%以上の人が親の預貯金等を当てにしている
●親の預貯金額を知らない人は80%近い
●親が認知症になると自宅が売却できないリスクがあることを70%以上の人が知らない__

親が認知症になると自宅などの不動産が売却できなくなる理由は、親に判断能力がなくなったと法的に判断されるためです。その結果、親名義の不動産の処分や預貯金の引き出しもできなくなります。なお、金融機関の預貯金の引き出しができなくなることを口座凍結と呼んでいます。

口座凍結とは

口座凍結とは、金融機関での口座取引が制限されることで、口座名義人が認知症と認定された場合にも発生する可能性があります。具体的には、金融機関が認知症であることを認識したとき口座が凍結され、現金の引き出しができなくなります。

キャッシュカードで引き出しをしていれば金融機関には分からないと考える人もいるでしょう。しかし、金融取引には本人確認が必要なことが多く、キャッシュカードの破損による再発行にも同様の手続きが必要です。

口座が凍結されると取引が不可能になり、対処するためには法的手続きが必要となります。対処方法としての成年後見制度は、認知症により判断能力が不十分な人に代わって法律行為を代行できる後見人を選任する法的な手段です。通常、親族ではなく弁護士などの専門家が後見人になります。後見の選任には時間と費用がかかるため、早めに家庭裁判所に申し立てることが重要です。

親の年金や貯金で足りない場合の対処法

親に資産や預貯金がそれほどない場合は親族が負担することになりますが、その前に介護費用を軽減する制度の利用を考えてみましょう。

介護費用の負担を軽減するサービスや制度には以下のものがあります。

◆親の不動産がある場合

●不動産を担保に借り入れしたり、売却したりして資金化する

◆介護負担を軽減する制度を利用する

__●特定入所者介護サービス費:低所得者向けの補助制度
●高額介護(予防)サービス費:所得に応じた負担限度額を超えた部分を払い戻す制度
●高額医療・高額介護合算療養費制度:医療と介護の自己負担の合計が所得別の上限を超えたときに越えた分を支給する制度__

上記以外にも各自治体による助成制度があるので、各自治体に確認しておきましょう。

親が認知症になると口座凍結されるので速やかに対処しよう

親の介護施設への入居費用は親の預貯金や資産に頼りたい人が多いものの、肝心の親の預貯金や認知症になった場合のリスクを知らない人は少なくありません。

認知症になると口座凍結のリスクがあり、親の預貯金や資産の処分も難しくなります。親が認知症になる前に情報を集めて速やかに対処できるようにしておきましょう。

出典

厚生労働省 サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
厚生労働省 高額介護サービス費の負担限度額が見直されます
厚生労働省 高額医療・高額介護合算療養費制度について
株式会社ファミトラ 敬老の日に合わせて実施する「親の老後のお金調査」

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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