『ちはやふる』作者が提言「原作者と脚本家が会うルールも必要では」小学館の声明うけSNSで深まる議論

『セクシー田中さん』公式サイトより

2023年10月期放送のドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)の原作者・芦原妃名子さんが急死したことをうけ、2月8日、小学館が「第一コミック局編集者一同」名義で声明を発表した。

約2000字に及ぶ長文メッセージは、《芦原妃名子先生の訃報に接し、私たち第一コミック局編集者一同は、深い悲しみと共に、強い悔恨の中にいます》という文章で始まった。

原作者の利益を守る「著作財産権」、心を守る「著作者人格権」があると説明したうえで、《著者の意向が尊重されることは当たり前のことであり、断じて我が儘や鬱陶しい行為などではありません。守られるべき権利を守りたいと声を上げることに、勇気が必要な状況であってはならない》とつづられている。

また、小学館が、ドラマ制作陣に芦原さんの意向を伝えていたのかという点についても、芦原さんが残していたコメント等の時系列を説明しつつ、《ドラマ制作にあたってくださっていたスタッフの皆様にはご意向が伝わっていた状況は事実かと思います》とした。

今後も組織として検証を続け、映像化についても《原作者をお守りすることを第一として、ドラマ制作サイドと編集部の交渉の形を具体的に是正できる部分はないか、よりよい形を提案していきます》と表明した。

声明文には大きな反響があり、漫画家や読者たちから反応が相次いだ。なかでも、『ちはやふる』作者である末次由紀氏は、こう指摘している。

《芦原先生を想うプチコミック編集部皆さんの言葉を大事に受け取りたい。その上で、「守られるべき権利を守りたいと声を上げることに、勇気が必要な状況であってはならない。」この部分がこれからどう担保されるのかを見つめたいし考えたい。原作者は製作者と脚本家に早い段階で会うなどのルールも必要だと思う。》

現状、日テレから詳しい経緯の発表はなく、ドラマ制作の過程でどこに問題があったのか、外部から判断するのは難しい。だが、関係各所のコミュニケーションに食い違いが生じていたのは明らかだ。

ここ数日、芦原さんの急死が話題になるなかで、メディアミックスにおける原作者の立場の弱さを指摘する声もあがっている。こうした事態を生まないための仕組みづくりについて、SNSでは議論が白熱している。

《会う事による圧力とかもあるので・・・。「会って話そう」というのは大体において従わせるためだったりするから、出版社ではなくちゃんとしたエージェントが必要だと思う》

《出来上がった脚本を演出なり監督なりも弄ったりする訳で 結局制作側のチーム全体が原作者の意向を受け入れられるかどうかの直接的な確認が必要なんだと思う それが出来ないのなら承諾しない》

《もう慣習任せでは救いようが無いから、何か明文化した原作者を守るルールを作らなきゃいかんのじゃないか》

声明文の最後は、《それでもどうしてもどうしても、私たちにも寂しいと言わせてください。寂しいです、先生。》という言葉で結ばれていた。悲劇が繰り返されないよう、業界に変化が求められている。

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