『百年後芸術祭』で小林武史プロデュースのスペシャルライブ開催 櫻井和寿、スガ シカオら出演

市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市にて開催中の『百年後芸術祭-内房総アートフェス-』にて、小林武史プロデュースによるスペシャルライブが行われる。

同ライブは“通底縁劇・通底音劇”と題され、櫻井和寿、スガ シカオ、宮本浩次、アイナ・ジ・エンド、MOROHAらが出演。イベントは、総合プロデューサーである小林とアートディレクターの北川フラムが、それぞれのフィールドで携わってきたこれまでの経験や想いをもって表現し、“LIFE ART”と“LIVE ART”の両軸で展開する。

“LIFE ART”は、日本各地の芸術祭をディレクションし、市原市の『いちはらアート×ミックス』の総合ディレクターを務めた北川が、人々の生活に根ざした地域の営みに美を見いだし、アーティストとともに表現するアート。一方、“LIVE ART”は、音楽と音楽以外の様々な才能を融合させた新しい形のバンド Butterfly Studioをはじめ、木更津のクルックフィールズなどを手掛けてきた小林が、瞬間瞬間に生み出されるライブパフォーマンスを中心に表現するアートだという。

この2つのアートが融合し、混ざり合うことで生まれる、アート作品展示とライブパフォーマンスの新たな表現へ挑戦。“LIFE ART”ではアート作品展示を中心に、気鋭の現代アート作家を国内外から招聘し、内房総5市の各所で、アート作品を展示する。市原市においては、上総牛久駅周辺や市原湖畔美術館、旧里見小学校などの各拠点に約60作品展開。新設となる、木更津、君津、袖ケ浦、富津の各市では、来場者が巡回しながらアート作品を鑑賞しやすいよう、それぞれ拠点となる地域を選定した。

出展アーティストとして、梅田哲也、小谷元彦、SIDE CORE、さわひらき、島袋道浩、名和晃平、リナ・バネルジー/ペギー・E・レイノルズ、保良雄、ディン・Q・レなど、総勢約80組が参加。新たに、五十嵐靖晃や角文平といったアーティストの参加も追加で決定した。絵画、彫刻、映像、インスタレーションなど、様々な手法を用いて表現される作品たちが、内房総5市を舞台に展開する。

“LIVE ART”のタイトルは、“通底縁劇・通底音劇”。通底という言葉は、アンドレ・ブルトンの『通底器』からヒントを得たもので、「つながるはずのないものがつながる、つながっている」ということをイメージしたという。この通底という言葉には、歴史的な要因による戦争、自然災害による物理的な分断など、表面的には様々な分断が絶えないように見える現実に対して、「本来、私たちは根底でつながりあえる(わかりあえる)のではないか」という想いを込めた。また、地理的な要因として、東京と内房総エリアはアクアラインで海の底で通底している、ということもある。

この通底を根底とした“通底縁劇・通底音劇”を表現する形として、4会場で小林武史プロデュースによる、それぞれ異なるスペシャルライブを開催。4月6日は富津公園ジャンボプールにて、アイナ・ジ・エンドをフィーチャーしたアートパフォーマンスライブ『不思議な愛な富津岬』、4月20日、21日には、クルックフィールズ(木更津市)で、櫻井和寿、スガ シカオを中心とした『super folklore(スーパーフォークロア)』、5月4日、5日は、君津市民文化ホールで宮本浩次を中心とした『dawn song(ドーンソング)』、5月12日には荻野目洋子、MOROHAをフィーチャーした『茶の間ユニバース』を行う。通常の音楽ライブとは異なる次元の、様々なアート的表現も展開されていく。

また、年初に石川県能登地方で起こった能登半島地震に対して、「通底」の思いで内房総エリアから、表現を通じて想いを伝えつつ、APバンクの協力も得て、支援も行うとのことだ。イベントのチケット料金や販売日などの詳細は、2月20日にオフィシャルサイトで発表予定。

■小林武史コメント

「環境問題を考えるときに、欲望と切り離して考えることはできない」
16年前の2008年に、ap bankのイベントとしておこなった「東京環境会議」で僕はこう話しました。音楽という表現にたずさわっている者として、欲望を抑えながら、理想を追い求めることを続けていくことはできないと感じたからです。
「欲望」、つまり自己の利益を考えることと、「環境」、すなわち他者の利益を考えること。(それぞれ逆もあり得るけれど)その両立と共振を考えること、それこそが未来を創っていくことなのではないかと思います。

月日は流れます。2019年に千葉県木更津市にクルックフィールズを作るのを経て、新しい未来を創っていくためのサステナブルなプラットフォームとしての芸術祭を立ち上げることになりました。
市原市で2014年から既におこなわれていた北川フラムさん(僕に地方の営みの大切さとアートとを様々な意識に結びつけて教えてくださった方です)ディレクションによる「いちはらアート×ミックス」とも連動しながら、新しい扉を開けることになります。
それを「百年後芸術祭」と名づけることにしたのは、「芸術」という己の中から生み出されるものと、自分が存在しない「百年後」の環境を共存させた、まさに「環境と欲望」の両立と共振をコンセプトにしたかったからです。

そして、この芸術祭を千葉でやる意味。それは、もちろん千葉や内房総に関わっているからでもありますが、東京に対するカウンターとしてのエリアだということが、都市と自然、物性と精神性、アートとビジネス、利己と利他、現在と未来、環境と欲望、など様々なカウンターパートを考えるこの芸術祭にとってふさわしいと考えたからであります。

経済合理性に強く引っ張られる都市にだけ未来を委ねるのでは危ういことが明らかになってるいま、百年後芸術祭がこれから続いていく未来に対して、何かのきっかけになり、役割を果たしていけることを願っています。

(文=リアルサウンド編集部)

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