「じゃあ、俺はそれ以下なのか...」元鳥栖FW二田理央、オーストリア2部での苦悩を吐露「うまくいかないことが多い」【現地発コラム】

パリ五輪日本代表候補の一人として注目されている元サガン鳥栖の二田理央は、所属クラブのザンクトペルテンでどんなシーズンを送っているのだろうか。

21-22シーズンにレンタル移籍で加入したオーストリアのFCヴァッカー・インスブルックではセカンドチーム(U-23)でじっくりと順応し、3部で得点王(21ゴール)に。その活躍を認められ、翌シーズンには2部のザンクト・ペルテンへレンタル移籍。肩の負傷による手術でしばらく離脱していた期間があったが、23年4月中旬から無事に復帰。7月にはサガン鳥栖からの完全移籍が発表されるなど、さらなる飛躍が期待される欧州3シーズン目になると思われていた。

第1節シュトゥルム・グラーツセカンドチーム相手に開始2分にゴールを奪うなど、好スタートを切った二田。ただシーズンが進むにつれ、出場機会が減ってきている。ここまでスタメン出場は4試合。得点もその後生はまれていない。

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取材に訪れた15節のホルン戦では1点を追う試合展開ながら、最後まで声がかからなかった。スタメンを外れながらも常に途中出場はしていただけに、出場なしで終わったことは少なくはないショックだってあったことだろう。それでも試合後のミックスゾーンで二田は丁寧に現状を振り返りながら、今自分がやるべきことについて語ってくれた。

「途中起用された選手たちが監督に、『戦術あんまり理解できてない』みたいな感じで言われていて。でも、僕は今日試合にも出れていないので『じゃあ、俺はそれ以下なのか...』って。もっと日頃からやらないといけないなって思いました」

とはいえ、シーズンを通してずっとうまくいっていなかったわけではないはず。開幕戦でスタメン起用されたことはクラブからの期待の表れを感じさせる。実際その試合でチームシーズン初ゴールをマークし、「悪くない感触でプレーできていた」と振り返る。

「最初の時期はうまくいってた部分もありました。スタメンで何試合か出ていたころは、ポジションがトップ下で、あんまり慣れてない位置だったんですけど、得意な相手の背後に抜けるアクションや、自分でボールを持って突破ができていたんです。ただ...」
シーズンが進むにつれて、相手チームもザンクトペルテンのサッカーを研究してくる。1部昇格を狙うザンクトペルテンは2部において優勢的に試合を進められるチームだ。自然相手は引いてじっくり守るようになる。ゴール前に人をかけて守る相手に対して、ザンクトペルテンは攻め手を失ってしまう。チームは思うように勝ち星を重ねることができず、二田も自分の良さを消される流れを変えることができないでいる。

ホルン戦もボール保持こそできるものの、攻めあぐねてチャンスが作れず。逆にカウンターからあっさり失点を重ねて0-2で敗れた。

「練習でやれていることが試合ではできていないと監督は(試合後の)ミーティングで話していました。チャンスもあって、やっぱ決めきれないと、ズルズルいってやられてしまう」

16節終了時で、他の上位チームより消化が1試合多いにもかかわらず、暫定4位という戦績は昇格を目標としていたクラブとして満足いくわけがない。首位のグラーツァーAKの勝点は11。忸怩たる思いを二田も抱いていることだろう。

「シーズン通してうまくいかないことが多いです。自分からしたら難しくて、大変な感じで、苦しい時間だったんで。ただこれが自分の今の実力でもあります。そこは認めるしかない。でも、自分ならできるっていう自信はもちつつ、練習からもっとやるしかない」

シーズンはまだ終わっていない。チームでは33歳ベテランFWのダリオ・タディッチを除いてほかのFW陣もそこまで結果を残せているわけではない。アピールのチャンスはまだ残されているし、サッカーではちょっとのきっかけで自分らしさを取り戻すことだってできるのだ。二田がその序列をあげることは十分に可能なのだ。

考えすぎたら身体は動かない。やるべきことを整理して、気持ちを込めてプレーをし続ける。下を向いている暇はない。前を向いて、駆け出して、戦って、ゴールを目指す。結果はきっと、あとからついてくる。

取材・文●中野吉之伴

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