「ザ・ブルーハーツや郷ひろみも来た」岡山市民会館が60年の歴史に幕 さとうもかさんら19組のアーティストが魂の演奏 特別な思いを伝える

岡山市北区丸の内にある岡山市民会館は来月(3月)末で、60年の歴史に幕を閉じます。こうした中、地域の文化を支えてきたこの建物に感謝の気持ちを伝えようという音楽イベントが開かれました。企画したのは県内で音響の仕事をしている36歳の女性、出演したアーティストにもそれぞれに特別な思いがありました。

岡山市民会館は日本を代表する建築家が設計・1963年完成

(砂子紋里沙さん)「色々ありましたが、やっとこの日を迎える事ができたので、本当にみなさんには感謝しかありません。きょう一日安全に。よろしくお願いします」

まもなく閉館を迎える岡山市民会館です。

この日、建物にこれまでの感謝を伝える音楽イベントが行われようとしていました。県内を中心に19組のアーティストが出演する「アナゴフェス」です。

企画したのは小さい頃のニックネームが「アナゴ」で、現在は県内で音響の仕事をしている砂子紋里沙(まなご・ありさ)さん。本番を間近に控えたこの時もどこかで閉館を信じられずにいました。

(砂子紋里沙さん(36))「(閉館するのは)すごくさみしいです。あると信じて疑ってないものだったので」

設計を手掛けたのは日本を代表する建築家・佐藤武夫。

1961年に工事が始まり2年後の63年に完成しました。

外光を取り込むモザイクガラスに立体的なホワイエなどモダンな建築が話題に。そして…

(アグネス・チャンさん)「♪ひなげしの花」
オープンすると人気歌手が次々にコンサートを開催。ザ・ブルーハーツや郷ひろみさんらも訪れました。小中学校の音楽発表会や成人式に利用されるなど、多くの人に愛されてきましたが…

(ハレノワオープン)
岡山芸術創造劇場ハレノワの建設に伴い、3月で閉館することになりました。

砂子さんが感謝を伝えたいと思った理由

こうした中で、砂子さんが感謝を伝えたいと思った理由。それはこの場所での体験が音響エンジニアとしてのキャリアの原点にあるからだといいます。

(砂子紋里沙さん)「6年とか5年とか、合唱とかよくクラスのみんなで一緒に来たりして。あんなに人がパンパンにいるのは、ここで見たのが初めてで、本当に楽しかったですね」

(砂子紋里沙さん)この岡山市民会館での体験が人生にいきて、私は音響の仕事をやっているんだと思います。ありがとうですかね、結局」

建物の最後に華を添えたい…砂子さんはできるだけたくさんの人に関わってもらうことにしました。

(砂子紋里沙さん)「舞台セットを学生さんと一緒に制作して、それを今、設置しているところですね」

舞台の一部を大学生と制作。お客さんに楽しんでもらおうと、デザインはアーティストによって一つ一つ変えることにしました。

(倉敷芸術科学大学芸術学部 竹本桜菜さん(3年))「もうすぐ閉館になるっていうことで、みんなの中ですごく印象に残る企画っていうのを一番大事に思っています。すごく楽しみです。自分たちの作品がこうして舞台にあがるのはあんまりない体験なので、すごくわくわくしています」

本番には19組のアーティストが出演 それぞれの思いを伝える

準備から1年。いよいよ、本番です。

(演奏)「The Wailars」

「柳家睦&ザ・ラットボーンズ」

「The タイマンチーズ」

「THE GREEN HEARTS」

出演者としてこのステージに上がるのはどのアーティストも初めてですが、それぞれに市民会館への思いがあります。

(さとうもかさん)「高校の時に音楽の学科に通っていたんですけど、(演奏者として)定期演奏会に出られず、いつかここで歌を歌えたらいいなと夢を見ていたんですけど、きょうそれが叶って嬉しかったです」

(演奏)「Idol Punch」

(Idol Punch Raccoさん)「(ロックバンドの)ユニコーンのツアーですね。それを見に来たのが初めてですね。緞帳の中からアーティストが出てくるっていうのを一番最初に見たところなんで。感動はしましたね。感慨深くはありますよね。何年か経って見に来ていた市民会館でやれる機会が来たっていうのは」

(飲食スタッフ)「(子どもの頃)クラシックバレエの舞台で、おじいちゃん、おばあちゃんやいとこと、みんなでここにきて、小さいのに大きいステージでがんばったねって言われるのがすごく嬉しかった」

(飲食スタッフ)「きょうは仕事として来られたのが、あったかい気持ちです。ちょっと恩返しみたいな気持ち」

アーティストやスタッフが一つになり盛り上げた「アナゴフェス」。閉館を前に大切な思い出として心に刻まれました。

(来場者)「地元の方が色々やられてこうやって盛り上がれるのはすごくいいことだと思います」

「ぜんぶ楽しかった」

砂子さんの思いは…

(砂子紋里沙さん)「めちゃくちゃいいお別れできました。文化振興じゃな、これって。めっちゃ思います」

(砂子紋里沙さん)「それぞれの人生の中で少しの思い出だったり、エッセンスだったり衝撃的な出来事だったり、そういう風に変わっていったら」

60年に渡り愛され続けてきた岡山市民会館。惜しまれながら3月、その歴史に幕を閉じます。

(スタジオ)砂子さんは今回のイベントが岡山の音楽シーンの盛り上げにも繋がればと話していました。

岡山市民会館は3月で閉館し、その後、取り壊される予定ですが、岡山市は跡地の活用方法について現在も検討中だということです。

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