【追跡】小学校「スキー学習」必要?必要ない? 「楽しい」「チャレンジする力がつく」一方、授業のためだけに数万円負担も… 北海道の子どもと保護者のホンネ

北海道ならではの文化「スキー学習」。ゲレンデにはスキー学習の練習をする多くの親子の姿が。「速く滑れる時が楽しい」(小学4年生)「これだけ雪が豊かにあるところなので、積極的にスキー学習をやってほしい」(小学生の父親)その一方でネットでは…「スキー学習の準備が尋常じゃない。お金も手間も」(ネットの声)「たった3回の授業のために一式用意するの?」(ネットの声)「スキー学習を廃止してください。趣味のスポーツです」(ネットの声)「本当に冬の悩み」(小2、小6の母)「私はスキー学習なくていいかなと思っている」(小1の母)物価高が続くこのご時世、反対の声も上がっている「スキー学習」。アナタはどう思う?「(Q:きょうは何の目的できた?)スキー学習の練習です。 (Q:一式今年買った?)ウェアは今年で板は去年。トータル5~6万円。結構かかっている。3回くらいしかスキー学習ないのに、すごい出費」(小1の母)「本当に冬の悩み。1番お金がかかる。年々身長が大きくなれば上の子は特にそう。毎年毎年ウェアがきついとかで、背が伸びればスキーもだし、2年乗れればいいかなという感じ。本当になんとかしてほしい。北海道って絶対じゃないですか!学校でやるし…本当に援助してほしい」(小2・小6の母)子どものスキー用品代のほかにも思わぬ出費が…

出費はスキー用品だけではない…

「リフト代とかも家族で来ると結構かかる。きょうで1万円ちょっとくらい。負担はあるけど家族で来てやるのも楽しいので」(小2、小4の母)「(Q:お父さんのスキーは?)子どもにスキーを教えるのに買った。3万円くらい。短い方が教えやすいと思ったので」(小3の父)さらにコチラのご家庭は…「学校の授業が始まる前に短期のレッスンに通わせた。それもまたお金かかりますよね」(小4の父)「今シーズンは12月にスキースクールに通わせた」(小3の父)「(Q:いくらくらいかかる?)3万8千円くらい」「(Q:3万8千円と聞いてどう思った?)結構高いから、ちゃんと集中して頑張りたいなと思った」(小学3年生)スキー学習について、札幌市教育委員会 に話を聞いてみると…「(Q:そもそもスキー学習を行っている理由は?)札幌らしい特色ある学校教育ということでテーマが3つあって。『雪』『環境』『読書』。これだけの降雪量があって近隣にたくさんのスキー場があるというのは世界的に見てもかなり珍しい。こうした恵まれた環境を活かした形で子どもたちに体験的な学習を提供したい。できるだけ保護者の負担を大きくしたくないという思いから「就学援助」というところでスキー用具の支給「スキーリサイクル事業」を展開している」(札幌市教育委員会 教育課程担当課長 伊達さん)

札幌らしい特色あるテーマ 雪・環境・読書

札幌市では2010年から使わなくなったスキー用具を集め、希望したご家庭に抽選のうえ無料で提供するリサイクル事業を行っています。2023年度は1200件のスキー用具を配布。それに対し応募は約6000件と、年々応募もリサイクル品も増えていて、需要の高さがうかがえます。

リサイクル用具への応募も増えている

「(Q:今後はどうなる?)やっぱり優先順位をつけていくことが大切。これは本当に行わなくてはいけない教育活動であると。その一方で、年間を通して保護者の負担が変わらないようにするために今年度は別の教育活動は縮小するとか、そうしたところを学校は判断していかないといけないし、そういった学校の教育活動の狙いを一緒に理解しながら進めていくことが非常に大事だと思う」(伊達さん)一方、札幌国際大学の安井政樹 准教授にお話を聞きました。20年間、小学校の先生をしていた経験から、現在は大学の授業はもちろん、教育番組の監修もしている教育のプロフェッショナルです。「(Q:教員はどういう思いでスキー学習に取り組んでいる?)他の面でも育つところがいっぱいあると思って先生たちは実践を続けている。きちんと周りを見るとかマナーを守るとか。(Q:家と学校の協力が必要な授業ということに関しては?)間違いなく保護者の協力があっての授業だと思う。昔ほど家族でスキーに行くという機会が減っているようなので、学校の時だけ使うためにスキーを買わなくちゃいけないという声もきく」(安井 准教授)30年前、1770万人いた日本のスキー人口も2021年には200万人と激減。スキー学習への抵抗はそれも影響していると言います。

日本のスキー人口の推移

「今はなんでも体験不足になっている。経験はしている。YouTubeで何か見たり、色々な事は知っているけど、体験はしていない。自分で何かするということがまだ出来ない子どもが多い。そこに保護者の方がどれだけ寄り添うのか。世の中的にスキーが体験できない、じゃあ学校でサポートしてあげようか、そういうことだと思います。何をもってコストか?確かに道具の費用負担は大きいが、そこだけを見てしまうと確かに高くて数回しかないのにと思うが、もう少し視野を広げて子どもたちの未来とかこの地域の未来と考えたときに、経験を通して何か得るものがあるんじゃないか?苦手なことにもチャレンジするなど色んな力がつく。北海道ならではの授業だと思う」(安井准 教授)

「北海道ならではの授業」

時代が変わるにつれ、スキー学習への保護者の向き合い方も変わってきていると言います。「スキー場にボランティアで来てくれる保護者の方もいる。先生たちだけでお願いねという時代ではない。みんなで子どもを育てる。その輪を広げていきたいし、ただ家庭の状況もあるので、1人1人できること。1番の協力は『スキー嫌だよね、寒いよね』と言って送り出されると『寒かった、つまらなかった』と帰ってくる。『今日行けてよかったね』と送り出してもらうと『楽しかった』と帰ってくる。声かけをしていただくだけでも十分スキー学習の協力だと私は思う。大人はいつの間にか雪を嫌いになった。こんなにいい教育に使える材料があるのにもったいない」(安井 准教授)

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