「神戸電鉄」と「京福電気鉄道」営業利益の伸びに開きが 両社の差はどこから

神戸電鉄の神戸・新開地行きの普通列車

関西の大手私鉄である阪急阪神ホールディングス<9042>傘下の神戸電鉄<9046>と、同じく関西の大手私鉄である京阪ホールディングス<9045>傘下の京福電気鉄道<9049>の本業の稼ぐ力を表す営業利益の伸びに差が現れてきた。

両社の2024年3月期の売上高の伸びは3%台で大きな違いはないが、営業利益の伸びは神戸電鉄の8%台に対し、京福電気鉄道は30%台に達する。両社の差はどこにあるのか。

インバウンドで鉄道やバスが好調に推移

京都府と福井県で営業展開する京福電気鉄道は、京都エリアでインバウンド(訪日観光客)需要が回復し運輸部門が想定以上の増収となっているほか、福井エリアでもホテルなどのレジャー・サービス事業が堅調に推移している。

こうした状況を踏まえ、同社は2024年2月6日に発表した2024年3月期第3四半期決算で、通期の利益予想を上方修正した。

営業利益を当初予想より3億円多い17億円(前年度比31.5%)に引き上げたほか、経常利益も4億円多い17億円(同20.9%)に、当期利益も4億5000万円多い18億5000万円(同51.2%)にそれぞれ引き上げた。

ただ売上高は、子会社が運営する福井県のホテルを事業譲渡したため、5億3000万円少ない137億7000万円(同3.3%増)に留まる見込みだ。

2024年3月期第3四半期時点の部門別の業績を見ると、鉄道やバスなどの運輸部門の売上高は前年同期比12.4%増加し、これに伴い営業利益は11.07倍に急増した。

ホテル運営などのレジャー・サービス部門も、ホテルの事業譲渡の影響で売上高は13.1%減少したが、堅調な需要に支えられ営業利益は逆に41.9%増加した。

もう一つの事業であるマンション賃貸などの不動産部門は安定しており、6.3%の増収、4.4%の営業増益となった。

20年ぶりに復配も

一方、神戸の市街地と有馬温泉などを鉄道で結ぶ神戸電鉄の2024年3月期は、売上高221億3000万円(同3.8%増)、営業利益15億1000万円(同8.6%増)と増収増益を見込む。ただ京福電気鉄道と比較すると営業利益の伸びは3分の1以下に留まる。

2024年3月期第3四半期の状況を見ると、鉄道やバスなどの運輸部門でコロナ禍からの回復傾向が現れており、同部門では前年同期比6.7%の増収、45.1%の営業増益と好調に推移したものの、京福電気鉄道の伸びには届かなった。

これに加え、土地建物の賃貸や販売の不動産部門が1.1%の減収、10.2%の営業減益となったほか、食品スーパーやコンビニの流通部門でも5.2%の増収、営業損益の黒字化(6800万円、前年同期は300万円の赤字)と全体を引っ張る勢いはなかった。

同社ではこうした堅調な状況に伴い2024年3月期に、2004年3月期以来20年ぶりに復配し1株当たり10円を配当する計画だ。

営業利益の伸びにかかわる要因の一つであるインバウンド需要は、今後どのように推移するのか。両社の来期以降の業績にも影響を与えそうだ。

文:M&A Online

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