実写『ゴールデンカムイ』山崎賢人&山田杏奈 原作者・野田サトルの言葉は「とても心強かった」

(左から)山崎賢人、山田杏奈 クランクイン! 写真:上野留加

野田サトルの大人気漫画が、豪華キャスト×本気の熱量×圧巻のスケールで実写映画化された。全国公開中の映画『ゴールデンカムイ』は、日露戦争直後の北海道を舞台にしたアクション大作。戦争帰りの陸軍兵・杉元佐一(山崎賢人)とアイヌの少女・アシリパ(山田杏奈)がバディを組み、大日本帝国陸軍第七師団や元新撰組の土方歳三と莫大な金塊の争奪戦を繰り広げる。『HiGH&LOW』シリーズの久保茂昭監督、山崎・山田・眞栄田郷敦・矢本悠馬・玉木宏・舘ひろしといった顔ぶれが集結した本作。山崎と山田が、作品愛にあふれた現場を原作者の野田との交流も含めて振り返る。

■スタッフの愛が詰まった撮影現場に

――漫画『ゴールデンカムイ』は設定の面白さから熱量に至るまで、一言では言い表せられない魅力が詰まった作品です。おふたりはどういった部分に、すごさを感じますか?

山田:それぞれのキャラクターの濃さや食事など、さまざまな要素が複雑に組み合わさっていながら、「金塊を見つける」という軸でそれらをまとめ上げ、一つのお話として成立させているところです。そして、野田サトル先生の圧倒的な取材と知識量。この世界観を創り上げるのにどれだけの年月を費やして考え抜いたんだろう?と思ってしまうほど多くのことを調べて描かれていて、のめり込んで読んでしまいました。

山崎:僕も全く一緒です。シンプルに「面白い」の一言に尽きますが、何が面白いのかと考えてみると、アイヌ文化や日露戦争、土方歳三といった史実に基づくノンフィクションの要素に「脱獄囚に金塊の在処を記した刺青を入れた」というフィクションの設定を混ぜ合っているところかなと感じます。事実が入っていることで「こういう世界が本当にあるんじゃないか」と思ってしまうところも魅力的です。

――正直、いち原作ファンとしては「あの『ゴールデンカムイ』を実写化できるのか?」と思った瞬間はあったのですが、本作を拝見して熱量と本気度にうならされました。おふたりが現場で“ゴールデンカムイ愛”を感じた瞬間はありましたか?

山崎:スタッフさんのカメラや、休憩場所に置いてある箱など、至るところに『ゴールデンカムイ』のシールが貼ってあって、シンプルに作品が好きな人たちが集まっているんだなと感じました。さまざまな準備をしてクオリティーを上げていくというのはもちろん、そうした小さな部分にも“ゴールデンカムイ愛”があふれている現場でした。キャストもみんな原作を読み込んできて、自分が演じるキャラクターをめちゃくちゃ好きになって演じていましたし、衣装や小道具の一つひとつにもこだわっています。アイヌのコタン(集落)などは、撮影の半年以上前から美術スタッフによって一から作られました。

山田:村を一つ作っているようなものなんですよね。例えばアクションシーンにしても、アシリパをはじめ「そのキャラクターらしいアクション」を考えてくださいました。その結果、画(え)として見たときに、いかにも「これはアクションシーンです」というものではなく、日常と地続きになっていてすごくステキだなと感じました。あとはもう、久保茂昭監督がとにかく原作の大ファンなんです。現場では原作漫画がいつでも読める状態にされていましたし、私は監督お手製の「アシリパのここがいい!」が詰まった大容量の重たい資料をもらいました(笑)。

山崎:あれは(役作りの上で)助けられたよね。

山田:はい。久保監督が「すごく良かった…ありがとう」と泣きそうになりながら撮っていて、完全に“ファンの人”でした(笑)。

――山田さんは、弓矢を持ち帰って自主練習もされたそうですね。アシリパらしいアクションというのは、言語化するとどのようなものでしょう?

山田:アクション部の方と話していたのは、カッコよく決めすぎないということです。野田先生からも「バチバチに動ける感じじゃないほうがいい」というリクエストがあってその形になったそうなのですが、キレイに着地したりせずにちょっと転がったりするのがアシリパっぽいよね、と相談しながら作っていきました。山で暮らす中で身に付いた動きが一番自然かな、というのは私も思っていたことでした。

――野田先生からのリクエストもあったのですね!

山田:私たちが知らないようなところでも、野田先生と相談しながら決めていった部分がいろいろあるんじゃないかと思います。

――山崎さんは、野田先生にお会いした際に「味方ですから」と言ってもらえた、と話されていましたね。

■野田サトルが山崎賢人にかけた言葉

山崎:野田先生は何回か現場にいらっしゃっていたのですが、初めてお会いした際に「いろいろな意見があるかと思いますが、自分は味方ですから」と言ってくださり、とても心強かったです。そのほか、日露戦争中の日本人の闘志のお話もしていただきました。野田先生の曽祖父の方が、“杉本佐一”というお名前で、実際に日露戦争に行かれたそうなのですが、僕自身が杉元の衣装を着てお会いした際に「ひいおじいちゃんに会えた気分です」と言っていただき、うれしかったです。

――ステキなお話ですね。アクションなどにおいて、「不死身の杉元」感はどうやって作り出していったのでしょう。

山崎:アクション監督の下村勇二さんと話し込んで、二○三高地の戦い(日露戦争における最大の激戦)で杉元の人格が変わってしまったという点に着目し、「狂気」をキーワードに構築していきました。「やられる前に絶対にやる」という状況の中で生き残った狂気と生命力が「不死身の杉元」に説得力を持たせるため、二○三高地の戦いはワンカットで撮影しよう、という話になりました。どれだけダメージを負っても敵を殺し続けて、「俺は不死身の杉元だ!」と叫ぶ冒頭シーンで、そのすごみを感じていただけたらと思います。日露戦争終結後、金塊探しに出てからは一見穏やかな日常に戻っているようにも映りますが、何かあったらすぐにスイッチが入ってしまう狂気は常に出せるようにしたい、と思いながら臨んでいました。

――本作の撮影は長期間にわたるかと思いますが、その間もアクショントレーニングはされていたのでしょうか。

山崎:そうですね。

山田:撮影の合間にアクションの型の練習をされていましたよね。「山崎さん、すごいな」と思いながら見ていましたが、型はすぐ覚えられるものなんですか?

山崎:いや…何とか乗り切った感じだった(笑)。今回は銃剣もあれば素手でのアクションもあったから、難しかったです。特に苦労したのが、間合いです。『キングダム』ではずっと剣を持っているので剣の間合いが多かったのですが、今回は銃剣を持った際の間合いと、素手の間合いをつかまないといけませんでした。素手での戦闘においては、柔道や柔術といった日本の武道を練習させていただいて、それを基礎とする動きを作っていきました。

――杉元とアシリパのバディ感が出来上がっていくのも、本作の見どころの一つです。

山田:「こうしていこう」みたいに細かく話したりはせず、一緒のシーンが多い中で自然とバディ感が出来上がっていきました。夜にヒグマとの対決シーンを撮ってから杉元とアシリパの出会いのシーンを撮るなどの前後はありましたが、序盤のシーンから入れたことも大きかったと思います。

山崎:物語自体がふたりが出会うところから始まりますしね。これが仲良いところから始まる話だったら「どうする?」と相談したかと思いますが、お互いの演技を見て対応していく中でスムーズに関係性が出来上がっていきました。

(取材・文:SYO 写真:上野留加)

映画『ゴールデンカムイ』は全国公開中。

山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

※アシリパの「リ」は小文字が正式表記

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