【デブリ採取延期】廃炉工程の展望示せ(2月10日)

 東京電力は、今年度中に福島第1原発2号機で予定していた溶融核燃料(デブリ)の取り出し開始を断念し、着手を半年遅らせる。延期は3度目で、2051年までの廃炉完了を明記した工程表「中長期ロードマップ」の実現は不透明感を増すばかりだ。政府、東電は廃炉の進ちょく状況を精査し、今後の展望を丁寧に説明する必要がある。

 1、3号機に先駆け、2号機の原子炉格納容器から数グラムのデブリを試験的に採取する。当初は2021(令和3)年の実施を目指したが、機材開発の遅れなどで2度延期した。今回は、格納容器につながる貫通部を覆う堆積物の除去作業が難航し、専用のロボットアームの挿入を当面諦め、細めのパイプ型装置に切り替えざるを得なくなった。原子力規制委員会の認可に要する時間などを考慮し、着手を先送りしたという。

 東電は「非常に狭い上に高線量下での作業となり、安全を最優先に進めるためにも工程変更は仕方がない」と説明する。デブリの取り出しは最難関の作業で、前例もなく、慎重な対応が必要だ。試行錯誤を余儀なくされる事情も理解はできる。ただ、堆積物の存在は以前から把握していただけに、作業の見立てにどんな課題があったのか、きちんと検証すべきだろう。

 今後、パイプ型装置の投入に向けた準備が進められる。これまでの過程で得たデータと教訓を生かし、万全の態勢で臨んでほしい。4度目の延期は許されないとの緊張感も欠かせない。

 デブリ採取に取りかかれない状況が続きながらも、東電は工程表の廃炉完了時期には「影響しない」と繰り返す。2030年以降に作業が軌道に乗れば、遅れを十分に取り戻せるとの理由だが、楽観視してはいないか。可能であると考えるなら、根拠を分かりやすく示すよう求めたい。

 取り出す量は最終的に880トンに達するが、どのような工法で回収するかは決まっていない。本格的な回収作業では、技術の難易度が相当高まると予想される。

 廃炉は本県復興の大前提であり、早期実現は県民の願いでもある。政府、東電は工程表を不断に点検するとともに、作業の円滑化に向けて最大限努力する責務を肝に銘じてもらいたい。(角田守良)

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