無麻酔採血、クマも成功 茨城・日立のかみね動物園 訓練重ね柵外に前肢

無麻酔採血に成功したツキノワグマの「ナオ」(奥)と飼育員自作の専用装置=日立市宮田町

茨城県日立市宮田町の市かみね動物園は9日までに、猛獣のクマの無麻酔採血に初めて成功した。「ハズバンダリートレーニング」という動物の心身の負担を減らす試み。全身麻酔による事故のリスクを避けることができ、園は今後も他の動物に広げていく考え。

成功したのは今年で15歳になるツキノワグマの雄「ナオ」(体長149センチ、体重101キロ)。飼育員と獣医の2人で実施し、昨年11月、人間で例えると手の甲に近い前肢の先を柵外に出してもらって採血した。健康管理や調査研究に役立てる。

採血には、担当の飼育員が塩ビ管を使って手作りした専用装置を活用。柵の一部を切断して取り付け、管の中に前足を突っ込んでもらい、途中に開けた穴から注射を打つ仕組みだ。鋭い爪が飛び出ないよう管の中に取っ手を付けるなど工夫した。

賢く積極的なナオは、半年もかからず必要な動作を覚えたという。トレーニングは、飼育員のかけ声に合わせて竹の棒を触る、肩を柵に寄せる-などの動作に成功した時にはご褒美のえさを与え、その行動を強化していった。

これまでの採血は、年1回ほど、銃で全身麻酔をかけて健康状態を確認する際に実施してきた。だが全身麻酔は高齢になるほど命に関わるリスクが高まり、精神的ストレスにもつながるという。今後、別のツキノワグマやエゾヒグマでも成功を目指す。

同園は10年近く前から無麻酔採血に本格的に取り組み始め、これまでライオンやトラ、ジャガー、ゾウ、クロサイ、キリン、クモザルなど10種類以上で成功。チンパンジーも現在訓練中で、生江信孝園長は「さらに導入例を増やすことで動物福祉の向上につなげていきたい」としている。

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