ふくしま産業賞 紡いだ技、伝統 世界へ 受賞者ら誓う

それぞれの製品を紹介し合いながら、繊維業の将来を語り合う(左から)紺野さん、浅野さん、湯田さん

 福島の地で紡いだ技術、伝統を世界に発信しよう―。福島市の民報ビルで9日に行われた第9回ふくしま経済・産業・ものづくり賞(ふくしま産業賞)の表彰式で、受賞企業の代表や高校生らが活発に意見交換し、交流を深めた。それぞれが情熱を込める取り組みに触れ、刺激を受け合った。福島県のものづくりを盛り上げる決意を新たにし、「力を合わせ、世界に誇れる福島にしよう」と誓った。

■ともに未来織りなす 浅野撚糸 奥会津昭和村振興公社 紺野機業場

 「この(川俣シルクの)ポケットチーフに使っている糸は随分細いね」。知事賞を受賞した浅野撚糸社長の浅野雅己さん(63)、福島民報社奨励賞を受けた奥会津昭和村振興公社専務の湯田文則さん(67)、特別賞の紺野機業場社長の紺野峰夫さん(40)は、ともに糸を紡ぐ繊維業。表彰式後の交流会で互いの製品を紹介しながら、業界発展に向けた連携を誓い合った。

 2023(令和5)年4月に双葉町に双葉事業所を開所した浅野撚糸の浅野さんは、奥会津昭和村振興公社が手がけるからむし織や、川俣町特産の絹織物を生産する紺野機業場を紹介するパネルに見入り「福島に根付く、素晴らしい伝統工芸。とても参考になる」と、何度もうなずいた。浅野さんは国内で衰退傾向にある繊維業界全体を活性化するために「双葉事業所は海外からの訪問者も多く、広い展示スペースがある。県内の優れた織物や生地が一堂に会する合同イベントを開けば反響も大きいはず」と提案した。

 公社の湯田さんは「双葉郡の復興をけん引するような浅野さんの発信力に感心した。合同イベントが実現すれば、福島の繊維業が盛り上がるきっかけになるだろう」と期待を込めた。昭和村は、からむし織の担い手を全国から募る織姫体験生制度などを通じ、技術を継承している。「伝統を守るとともに、新たな挑戦も模索したい。浅野さんや紺野さんの仕事場を見学してみたい」と話した。

 紺野機業場の紺野さんは「お二人と話し、改めて仕事を頑張ろうと思った」と、川俣シルクの振興に向けた思いを強めた。9年前に古里にUターンし、家業を継いだ。「業界発展には競争だけでなく共闘が重要。産業賞を契機としたきょうの出会いを生かしていきたい」と言葉に力を込めた。

■食が生む活力探る 学生部門受賞の高校生

 地元食材などを使った商品作りに励む高校生は、それぞれの活動について語り合い、食がつなぐ地域振興へのヒントを得ていた。

 学生銀賞に輝いた須賀川創英館高オフィス情報科ホームルーム長の鈴木太陽さん(17)は、須賀川市で採れた「伝右衛門はちみつ」を活用したチーズケーキを紹介し、市のふるさと納税返礼品になった経緯を説明した。同賞を受けた福島明成高地域を元気にする活動チームの二瓶由衣さん(18)は「私たちが作っている県産リンゴの商品も、もっと改良を重ねれば返礼品に採用してもらえるかもしれない」と意欲を見せた。

 学生銀賞の小野高家庭クラブ部長の吉田悠我さん(18)はみそを使った料理、学生奨励賞に選ばれたあさか開成高日本文化部長のカレル・プザさん(18)は規格外食材の菓子の販売について解説した。

菓子作りについて意見交換する高校生

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