88歳で亡くなった世界的指揮者の小澤征爾さんは、神戸との関わりも深く、29年前の阪神・淡路大震災直後には、被災した子どもたちを励ますコンサートを開いた。
1995年3月、当時の神戸山手女子短大(神戸市中央区)の体育館。小澤さんは「被災者とともに演じたい」と希望し、会場中央に高さ30センチほどの台を置いただけのステージを設けた。集まった親子連れ約1500人に囲まれながら「追悼のため、バッハのアリアを演奏したい」と話すと、指揮後は直立不動で目を閉じ、震災犠牲者に黙とうをささげた。
震災10年の2005年10月にも同じ場所でタクトを振った。10年前と似たような簡素な舞台で、コンサート名は「あの日を忘れない」。選曲も同じだった。
10年秋には若手音楽家を育てる「小澤征爾音楽塾」の演奏会を神戸で企画。11年2月の開催に向けて「たくさんの思い出がある神戸でのコンサートが楽しみ」と話していた。
兵庫県立芸術文化センター(西宮市)の芸術監督で指揮者の佐渡裕さんも、小澤さんに師事した。(有島弘記)