〈動画あり〉ぷるぷるテビチにしみしみレタス 沖縄おでん47種を引き継ぐステーキ運営会社の展望【2月3日~9日 タイムス+プラスから】

 3日間煮込んだぷるぷるのチマグ、テビチのほか、しみしみのレタスに昆布、丸ごとトマトなど。豚骨とかつお節でとった熱々のだしの中に浮かぶ具材は、口に運ぶ前から「間違いない味」と断言できます。

ディーズプランニングのスタッフ(中央)に「おふくろ」の味を教える山川秋久さん(左)と正子さん夫妻=2024年2月6日、那覇市久茂地

 沖縄県那覇市の沖縄おでん専門店「おふくろ」が、経営者夫妻の引退を経て9日、再オープンしました。やっぱりステーキなどを運営するディーズプランニング(那覇市、義元大蔵代表)へ、店名、メニュー共に託しました。両者の事業承継セレモニーがあった6日、私も店に足を運びました。

わずか3週間で「相思相愛」

 「おふくろ」は浦添市や宜野湾市にあった頃を含め、半世紀近くにわたり営業してきた老舗。47種類のおでんをはじめ、おばんざいもあり、時間制の飲み食べ放題を売り出してきました。高齢による体調面の不安から、昨年11月に店を閉めた山川秋久さん、正子さん夫妻。承継先を探していたところ、手を挙げたのがディーズプランニングでした。伝統の味を残したいという双方の思いが合致し、わずか3週間で交渉がまとまったといいます。

 仲介役となった県事業承継・引継ぎ支援センターの上地文人さんは「通常は決まるまで数カ月から1年かかる。3週間は異例です」と強調します。

 後継者問題を抱える中小・零細企業は年々増え、同センターに寄せられた2022年度の相談件数は第三者承継、親族承継を含めて前年度より191件多い497件でした。一方で、実際に承継に至るのはここ数年、年30件ほどと全体の1割前後で推移しており、権利関係や資金面など互いの希望条件で折り合いが付かないケースが大半だそうです。

 ディーズプランニングは、創業10年目にして国内外でやっぱりステーキ約90店を運営するほか、朝ご飯の店などさまざまな業態の飲食店を展開。自負するのは「沖縄発」で、沖縄おでんの継承は、そんな同社が描く経営戦略の幅を広げる一手になりそう。

 義元代表は「インバウンド客(外国人観光客)にPRしたり、他店舗でもおでんを提供したりして浸透させたい」と展望します。多くの人々に愛された「おふくろ」の味を忠実に習得すべく、同社のスタッフが山川夫妻の特訓を受けて、再オープンに備えたそうですよ。

 今週は他にも、酒類卸と泡盛メーカーが、県内で唯一、日本酒の製造を認められた酒造所を事業承継し、石垣島で新たに日本酒造りを始めるとの話題がありました。

事業承継する泰石酒造の安田泰治代表。酒蔵には現在の工場では最後の生産となる日本酒「黎明」が瓶詰めされていた=2024年2月、うるま市平良川

 地域活動を停滞させる自営業者や中小企業の倒産や休廃業は、大きな社会課題。承継に向けた支援体制の充実や制度の周知がますます重要になっています。

困惑の受験生に支援の輪 

 さて、沖縄県立図書館が本の貸し出しシステムなどの更新のため、2月6日から月末まで休館するニュースも読まれました。

図書館の長期の臨時休館を知らせる掲示板=2024年2月1日、那覇市の県立図書館

 県立高校の一般入試まで残り1カ月のタイミング。自習などで図書館を使っていた受験生らから困惑の声が上がり、広く報じられたことで、銀行や進学予備校、公民館などが空いたスペースの開放を打ち出しました。粋ですね!

 県立高校や特別支援学校高等部の初回の志願倍率も発表され、受験生やご家族にとっては落ち着かない日が続いているのでは。進学を目指す皆さんが、試験本番で力を発揮できることを心から願っています。

無料でバス乗車事業、効果は?

 最後にもう一本。県の2024年度当初予算案に、県民が無料でバスに乗れる日を複数設定する事業が盛り込まれたことが明らかになりました。

 エキスパートEyeのコメンテーターからは「単なる一過性のイベントになる可能性がある」(東恩納盛雄さん)との懸念の一方、「バスは乗ってみると意外と便利と分かるが、乗るまでのハードルが高い。その最初の一歩を後押しする企画に」(石垣綾音さん)といった期待の声が寄せられました。運転手不足で苦境に陥るバス業界を盛り上げる妙手となるのか、注目していきたいと思います。

県内各社が運行する路線バス=2020年8月、那覇市・バスターミナル

 インフルエンザが県内で引き続きはやっていますね。私の小学4年の娘も感染し、学級閉鎖になってしまいました。10日から3連休という方も多いと思います。体調管理にはくれぐれも気を付けて、充実した休日をお過ごしくださいね。

 それでは、今週のデジ編チョイスはこの辺で。デジタル編集部の新垣綾子が担当しました。

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