能登半島地震発生から一月余り経つも、未だ難航する復旧作業。届け、支援の心

 能登半島地震の発生から1カ月以上が経った。厳しい寒さの中、被災地では現在も1万5000人以上の方が不自由な避難生活を余儀なくされている。甚大な被害を受けた珠洲市などでは、自治体やボランティア団体、自衛隊などが懸命な復旧作業にあたってはいるものの、未だインフラの復旧も進んでおらず、2月5日の時点では、珠洲市のほぼ全域で断水が続いているような状況だ。

 一刻も早い日本政府の対応が望まれる中、岸田総理は発生からちょうど一月経った2月1日、総理大臣官邸で第1回令和6年能登半島地震復旧・復興支援本部を会合し、議論を行った。政府はこれに先立って、緊急に取り組むべき施策について「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」として生活や住宅、産業など各方面の支援を取りまとめている。しかしながら、今回の地震の被災地は高齢者も多く、先の見えない避難生活に「もう限界」という声も上がっている。国会は今、自民党派閥の政治資金問題でもちきりだが、被災地は一刻を争う状況だ。そちらの問題を一旦差し置いてでも、速やかに復興支援を進めていただきたい。

 そんな中、多くの企業や団体が被災地支援に乗り出している。

 大手コンビニやスーパー、ショッピングモールなどでは店頭に募金箱を置いて義援金を募っているので、すでにいくらか寄付したという人も多いのではないだろうか。義援金や支援金はもちろん大切だが、インフラや物流がままならない現況では、食料品や衛生用品など、お金以外に必要とされているものも多い。

 今回、もっとも迅速に動いた業界団体の一つが「日本パン工業会」だ。同団体は地震発生翌日の2日早朝、国からの支援の要請を受け、山崎製パン<2212>、敷島製パン、フジパンの大手3社が各社の菓子パンや総菜パンなど約20万個のパンを搬出拠点である金沢市の石川県産業展示館に届けており、避難所までは自衛隊などが配送している。

 また、サントリー食品インターナショナル<2587>はペットボトルの飲料水約18万本を4日に、ブルボンも11万5000本を5日に石川県内に届けた。食料品だけではない。ユニ・チャーム<8113>などの日用品メーカーが加盟する「日本衛生材料工業連合会」も、1月2日よりこれまでに大人用紙おむつ9万4千枚超、子ども用紙おむつ1万2千枚超、生理用ナプキン8万枚、医療用マスク10万枚他、現地で不足が懸念される衛生用品を送り続けている。

 2月に入ってからの支援物資は、少し変化がみられる。十分とはいえないまでも、食料品や衛生用品が行き届きはじめた今、被災者の心の健康と美容をおもんばかる支援物資を送るのは山田養蜂場だ。同社は1月末、特定非営利活動法人「ピースウィンズ・ジャパン」 を通して被災地から要望のあった、女性向けと男性向けの基礎化粧品の提供を決定。女性向け基礎化粧品RJエクセレント シリーズ ミニボトルセット1000セット、男性向け基礎化粧品Mr.PROPOLISオールインワンジェル500個を被災地に届ける。同社は今後も被災地からの要請に応じて、自社の化粧品及び食品・健康食品などを随時提供していくとしている他、義援金として、1000万円を「山陽新聞 社会事業団」へ寄託している。

 ここに挙げた他にももちろん、様々な業界の企業や団体が支援に乗り出している。1カ月を過ぎた辺りから、被災した方々の心には現実が重くのしかかる。避難所生活のストレスやこれからの生活を悲観して、抑うつやPTSD(心的外傷後ストレス障害)、不眠などの症状が表面化してくるのもこの時期だとされている。支援物資や義援金とともに、支援者たちが心配し、応援する温かな気持ちが被災した方々の心に届き、少しでもやすらぎとなることを切に願う。(編集担当:今井慎太郎)

能登半島地震の発生から1カ月以上が経った。厳しい寒さの中、被災地では現在も1万5000人以上の方が不自由な避難生活を余儀なくされている

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