燃料は「使用済み天ぷら油」自ら車を改造→公道も走行可能 地球にもお財布にも優しい“自給自足”生活を送る男性のモットーは?

ガソリンや物価高騰で、家計は厳しくなる一方…
しかし、廃棄された「天ぷら油」を燃料に車を走らせるなど、物価高とは縁のない自由な生活を送る男性が鳥取県にいます。
一体どんな生活を送っているのでしょうか?

取材したこの日、鳥取県南部町の田んぼで稲刈りをしていたのは、坂下訓弘さん、39歳です。

稲の種をまく作業から収穫して脱穀するまで、機械は一切使わずすべて手作業で行っています。

坂下訓弘さん
「手間はもちろんかかりますけど、でも石油もいらないし、二酸化炭素も出さないし」

福井県出身の坂下さん。2021年10月、自然に囲まれた暮らしを求め、鳥取県南部町にIターンし、現在、妻と長女の3人で暮らしています。

「自分の生活を自分でデザインする」をモットーに、環境にやさしい生活を心がけ、光熱費もできる限り節約します。
暖房として使っているのは、薪ストーブ。

坂下訓弘さん
「薪ストーブはプレゼントしてもらったもので、『ありがとうございます』って感じなんですけど、あと2重煙突は自分で頼んで買って、レンガはホームセンターで一番安いレンガを買ってきて作りました」

もちろん、薪も自分で調達します。

木を切り出す際に使うチェーンソーにも秘密があります。

この日、坂下さんが向かった先は、町内の飲食店。

法勝寺温泉 やぶ勝 後藤健一郎さん
「倉庫に7缶あってそれプラス3~4缶だから、全部で10缶ほどかな」

店の人から受け取ったのは、一斗缶です。
中に入っているのは…

坂下訓弘さん
「廃油です。」
Q.何に使ってるんですか?
「これ、チェーンソーのチェーンオイルにしていますね」

チェーンオイルとして使っていたのは、なんと「廃油」。
町内にある2つの飲食店から廃棄される天ぷら油を回収し、再利用しているんです。
自宅にある「ろ過装置」を用い、使える状態にしています。
このろ過装置も、もちろん自作だといいます。

坂下訓弘さん
「理由なんてあんまりないね。好き!やりたいね!みたいな感じ!
この現代日本は捨てるものがめちゃくちゃある。多分捨てるものだけで生活できるぐらい。廃材で家を建てた人もいるし、やらない手はないなって。」

自らの生活を自らの力でデザインし、環境にやさしい生活を送る坂下さん。
そんな彼の人生の分岐点はどこにあったのでしょうか?

坂下訓弘さん
「やっぱり旅かな。旅の中でいろんな知らない土地に出会ってそこで旅している人たちと出会って、そこで定住して暮らしている人たちと出会って…その全部の出来事が、結果そういうマインドを作りあげていったと思います」

坂下さんは24歳の頃から11年間、アジアやアメリカを旅して巡ったり、国内各地で季節労働をしたりして過ごしてきました。
そうしたなかで、現在のような生活を送りたいと思うようになったとのこと。

そんな坂下さん、最近、あるものを完成させたといいます。

坂下訓弘さん
「これ、天ぷら油の燃料を入れるタンクを、車内に作ってます」

ろ過した天ぷら油で走る、その名も「天ぷらカー」です。
軽油で走る中古車を買い、1年ほどかけて自ら改造しました。
運輸局への申請も済ませ、公道も走れるといいます。

燃料が天ぷら油ということで…

木嶋雄大キャスター
「普通のガソリンじゃなくて、ほんのりと天ぷらっぽいにおいがしますね!」

車は、天ぷら油と軽油を切り替えながら走行する「天ぷらカー」。
これによって、お財布事情も変化しました。

坂下訓弘さん
「2年間びっしりと家計簿付けたんですよね。それでガソリン代を何とかしたいと思って、その時調べて存在を知ったのが天ぷらカーで。」

給油のため、これまで多い時は毎週ガソリンスタンドに通っていましたが、天ぷらカーのおかげで頻度は2か月に1回ほどに減りました。
ガソリン価格の高騰は、坂下さんの生活にはほとんど影響がないんだそうです。

知人の仕事の手伝いや林業などで現金収入を得ている坂下さんですが、基本的には、自給自足の暮らし。
今後の目標を聞いてみると…

坂下訓弘さん
「電気の自給をしたいですね。太陽光とかいろんなものから電気を自給して、暮らしと軽トラとかを動かす。持続可能な生活をできたらなって思っています」

「地球のことも、自分の体と思って環境を大切に暮らしたい」と話す坂下さん。
便利なものがあふれる時代、一度、立ち止まって自分の生活を振り返ってみるのも大切なことなのかもしれません。

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