小澤征爾さん死去、県内からも悼む声 宇都宮や足利で公演 「人生変えてくれた」と宮田さん

宇都宮市で開かれた小澤征爾音楽塾とちぎ特別演奏会。大勢のファンを魅了した=2004年5月9日、県総合文化センター

 世界的指揮者の小澤征爾(おざわせいじ)さん(88)の訃報が伝えられた9日、本県の音楽関係者にも悲しみや驚きが広がった。共演経験のある宇都宮市出身のチェロ奏者は「人生を変えてくれた方」と悼む。県内の演奏会でも指揮し、多くの観客を魅了していた小澤さん。「功績を残してくれた」「気さくな方だった」-。関係者は「世界のオザワ」の姿を思い出しながら、冥福を祈った。

 「音楽家としての殻を破ってくれた方。ショックで理解できない」

 小澤さんと何度も共演してきた同市出身で日本を代表するチェロ奏者宮田大(みやただい)さん(37)は、存在の大きさを語る。

 初めて出会ったのは約20年前の高校1年の時。初共演となる公演の直前、「私が演奏を付けるからね」と直接声を掛けられ、緊張がほぐれた。「言葉に重みがあり、どんな時も奮い立たせてくれる人だった」と、一緒に立った舞台を振り返った。

 突然の悲報に接し、在りし日の姿を動画で何度も見返したという。「音楽と同じで、小澤さんは心の中に生き続ける。これからもよろしくお願いしますと伝えたい」と話した。

 宇都宮短大音楽科講師の佐藤友香(さとうゆか)さん(38)は、小澤さん主宰の音楽塾に参加経験がある。「小澤さんが指揮に入ると、音のエネルギーが全く違った。もう一度会いたかった」と嘆く。

 小澤さんは、本県でも指揮する姿を見せていた。宇都宮市では2004年、若手音楽家と共演する「小澤征爾音楽塾・とちぎ特別公演」に立った。05年には足利市でも指揮を執った。

 当時、同市市民会館事業係長だった阿部栄(あべさかえ)さん(65)は「気さくな方で、偉ぶることもなかった」。会館の周囲に人の集まりができても全員にサインをして応えていたといい「来てもらったのは、市民にとって幸せだし誇りです」と感謝した。

 県交響楽団の須賀英之(すかひでゆき)会長(69)は「演奏だけでなく、若手を育てることにも熱心だった。本県の音楽文化にたくさんの功績を残してくれた」と語った。

小澤征爾さんの「オペラ・プロジェクト」で演奏する宮田大さん=2004年5月9日、県総合文化センター

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