【テニスルール虎の巻】試合をスムーズに進行させる「スタートオブマッチ」とは一体どんな規則なのか<SMASH>

多くのアマチュアは自分自身でゲームの判定を下す「セルフジャッジ」でテニスの試合をしています。「自分で判定するなら簡単」と思うかもしれませんが、それは大間違い。いい加減な判定によってトラブルを起こすことが多々あるからです。

そうしたトラブルなしで試合を楽しむには、とにかくルールに詳しくなることが大切です。そこで四大大会の出場経験を持つ元プロ選手で現在公認審判員も務める岡川恵美子氏にケース別でルールについて解説してもらいました。

今回は、コートに入って試合を始めるまでの時間を対象としたルール「スタートオブマッチ」についてです。これは決められた時間内で速やかに試合を始めることを促す比較的新しいルールですが、果たして草大会などでも適用されるのでしょうか。岡川氏にお話を聞きました。

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草大会であってもJTA(日本テニス協会)のルールブックに則って行なわれる試合では「スタートオブマッチ」を守らなければなりません。

両選手がコートのベンチに到着後1分以内に中央に集まりトスをして、その後はすぐにウォームアップを5分間やり、アップ後は1分以内に試合を開始する、「スタートオブマッチ(ワン・ファイブ・ワン)」という2021年に生まれた比較的新しいルールです。

このようなルールができたのは、選手がコートに到着してから着替えを始めたり、荷物を探すなど、試合開始までにすごく時間がかかることがあるからです。こうした行為は試合時間を長引かせることにもつながり、テレビ中継が入るような場合は間延びしたものになります。よって時間をコントロールして試合を敏速に進めようという考えから生まれたルールだと思われます。
選手はすぐに試合ができる格好でコートに入り、アップを終えたら速やかに試合を始めること。これは決められたルールの中で試合を進めましょうというマナーに近いものでもあります。

なお、「スタートオブマッチ」にもコードバイオレーションが存在します。“ワン・ファイブ・ワン”を守らなかった場合、ロービングアンパイアがこのルールを適用します。ただ、このバイオレーションは他のバイオレーションとは違い、出されるのは1試合で1回のみでポイントペナルティにはつながりません。

別の理由(ラケット破壊等)でコードバイオレーションを受けたとしても、この2つを連動させることはありません。とはいえ、ルールを守って気持ちよく試合を始めてください。

解説●岡川恵美子
17歳で全日本選手権を制覇して日本初の高校生プロとなる。グランドスラム(四大大会)では、全豪オープン3回戦進出をはじめ、全仏オープンやウインブルドンの本戦に出場。現在はベテラン大会に挑戦しながら、ITF国際審判員、JTA公認審判員も務める。

構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2024年1月号より抜粋・再編集

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