「超速ラグビー」掲げる新生エディージャパンが始動! 次回W杯へ台頭が期待される若手ブレイク候補5選

ファンにおなじみのだみ声が響く。

「上手! 上手!」

「15秒、休み!」

ラグビー日本代表のヘッドコーチへ9年ぶりに再登板のエディー・ジョーンズが、新体制の発足後初めて選手を集めた。

福岡で2月6日から2日間あったトレーニングスコッド合宿には、9名の大学生を含む36名が実戦仕様のメニューで「超速ラグビー」というコンセプトを学習。本稿では計23名いた初選出勢のうち、今年中の代表戦デビュー、もしくは4年後のワールドカップオーストラリア大会でのブレイクが待たれる5名を紹介する。

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(カッコ内は所属先/ポジション/身長・体重/年齢)
●原田衛(東芝ブレイブルーパス東京/フッカー/175センチ・101キロ/24歳)

慶大で主将を務めてから加入の東芝ブレイブルーパス東京では、実質1年目の22年度からレギュラーに定着。躊躇なく繰り出す突進、タックルは威力がある。今季のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦では、対面にいたニュージーランド代表90キャップのデイン・コールズに当たり勝つこともあった。

「あれは、たまたまっす」としつつ、「フィジカルの部分は、リーグワンのなかでは通用するかなと。自分のやってきたことが間違いじゃなかったというの(手ごたえ)はあるので、引き続き頑張れたら」。謙虚で堂々としている。

「日本代表よりも、世界で戦うところを目標にしているので」

つまり、目指しているのは日本代表になることではない。日本代表として強豪国を倒すことだ。

●石橋チューカ(京都産業大学/ロック/190センチ・95キロ/19歳)

サイズに恵まれストライド、ばねが特徴的。このほど呼ばれた大学生9名のうち、キャンプ後にジョーンズが高評価を与えたひとりだ。

指揮官曰く、「スリムで今後体重を増やしていかないといけないですが、本当に懸命に取り組みたい、学びたいという願望を持っている」。キャンプ初日の練習後、不得手なジャッカルについて教わるべくワールドカップ4度出場のリーチ マイケルに自ら声をかけた。昨季主将の姫野和樹を交えて手ほどきを受け、本人は改めて誓う。

「自分より格上ででかい人にどうしたら勝てるのか? 低さ、速さで勝っていくしかない。そこをもっとレベルアップしていきたいです」

母子家庭で育ち、報徳学園高時代はOBの家族宅へ下宿した背景も知られる。
●ティエナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ/ナンバーエイト/192センチ・102キロ/23歳)

岡山のIPU環太平洋大へ進んだのは2019年。元日本代表でもある小村淳ヘッドコーチに誘われた。

異文化体験のチャンスに「行かなかったら後悔しちゃうと思った」。入学1年目に父の逝去、2、3年目にはウイルス禍に伴う行動制限に苦しむが、4年目に大学選手権へ初出場。23年にコベルコ神戸スティーラーズへ入ると、ピンチの際に駆け戻る速さ、堅実な防御でブレイクした。

ジョーンズは「すごく頭がいい選手です。日本語も上手」と太鼓判を押す。本人は端正な「日本語」で話す。

「私の強みはスピードで、エディーさんもスピードを使っていきたいと言っている。強みを活かしたプレースタイルを見せて、チャンスを作りたいと思います」

●チャーリー・ローレンス(トヨタヴェルブリッツ/センター/170センチ・89キロ/25歳)

イギリス人の父とフィリピン人の母が香港に住む間に生まれ、5歳で出会ったラグビーに没頭すべく15歳でニュージーランドへ渡っている。

同国では7人制代表入りに迫るも、現コベルコ神戸スティーラーズに入った18年以降ずっと赤と白のジャージィを目指してきた。この冬、初のリストアップが叶った。

「やっと、自分にもチャンスが来た。楽しみです」

トップレベルのセンターにあっては小柄も、強靭でスキルフルだ。攻防の境界線へ仕掛けながらのパス、相手の懐をえぐるような突進、堅実なタックルで渋く光る。ジェイミー・ジョセフ前ヘッドコーチ時代の日本代表にも注目されていた。

●高本とむ(帝京大学→リコーブラックラムズ東京/ウイング/182センチ・82キロ/22歳)

東福岡高時代から韋駄天として名を馳せ、帝京大では2季目終了後に転機を迎えた。同部名物の猛練習と並行し、エクストラのウェイトトレーニング、走り込みに注力。大学選手権決勝でメンバーから外れたのが悔しかったからだ。

「言ったら、自分の身体が商売道具なんで。自分がどんだけ頑張れるかで次の試合の結果、将来の結果も変わってくるとわかっていたので、しんどくても頑張れましたね」

かくして学生シーン屈指の仕留め役として福岡入りし、ジョーンズに「(防御網を)抜ける能力がある。フィジカルもいいです」と褒められた。

今回招集のウイングでは、サモア出身で代表資格を得たばかりのマロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ/182センチ・91キロ/27歳)も即戦力と見られる。タフな競争へ若者は息巻く。

取材・文●向風見也

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