中華圏の春節(旧正月)が10日から始まる。今年は中国政府による国外旅行の規制がなく、旅行需要の増加が予想されるが、鹿児島県内ホテルや観光バスの中国客の予約は思うように伸びていない。関係者は「直行便がないと厳しい」と口をそろえる。一方、飲食店では台湾や香港の団体予約や中国からの問い合わせが増えている。
鹿児島市の城山ホテル鹿児島では、10、11日に餅つきや羽子板作りなど、旧正月に合わせて日本の正月を体験するイベントを開く。春節期間中、アジア圏からの宿泊予約は伸びているが韓国が4割を占めており、中国と香港はそれぞれ1割に満たないという。
鹿児島サンロイヤルホテル(同市)には中国からの予約はなく、韓国と香港がほとんど。予約センターの野田武章課長(53)は「直行便の再開遅れと原発処理水の風評被害もあるのでは」と分析した。
「春節に期待していたが、今のところ恩恵はなさそう」と嘆くのは観光バスを運行する南薩観光(南九州市)の菊永正三社長(55)。台湾との定期便がある熊本県発着のツアーがあるものの、行き先は福岡県や北九州市、長崎県が多く鹿児島への観光は3分の1程度にとどまっている。
一方で、飲食店は予約が好調だ。華蓮鹿児島店(鹿児島市)は店舗だけでなく運営するJA鹿児島県経済連(同市)にも中国から問い合わせがあり、春節の効果を実感しているという。
鉄鍋で作る黒豚しゃぶしゃぶ「くろくま鍋」が人気のホテル&レジデンス南洲館(同市)は台湾や香港からの利用が多い。橋本龍次郎取締役(60)は「春節期間は団体客の予約が増えた。売り上げもコロナ前に戻っている」と話した。