坪根悠仁(俳優・富岳三郎役) - 『正しいアイコラの作り方』心情的な面で凄いリアルを追い求めている作品

成長していく過程を演じることができて楽しかった

――不思議な作品で最後までどんな結末を迎えるのか分からなかったです。

坪根悠仁:そうですよね。 ――富岳三郎は作中もそうですがナレーションもあって、かなり情報量が多いですが大変ではなかったですか。

坪根:ナレーションもあって台詞は凄く多かったです。 ――そのナレーションもあって情報量が多い作品なので、そこに引っ張られて結末が予想できなかった部分もあるのかなとも思っていました。

坪根:それはあるかもしれないですね。物語の入りからミスリードを誘う要素の連続ですから。 ――そうなんです。だから、最後までどうなるんだろうと思いながら観ていました。

坪根:僕も最初に脚本を読んだ時は、「これってどう終わるんだろう。」と思いました。ナレーションもあって台詞も多く、一冊の小説を読んだような読後感がありました。 ――分かります。劔鈴の秘密も凄くて驚きの連続でした。 坪根:衝撃ですよね。実際に三郎が気づくシーンを演じた際、初めて台本を読んだ時のことを思い出して演じました。 ――本作はメインで出てくるのは四人ともみんないい子たちなので、逆に裏があるんじゃないかなと勘ぐってしまいました。

坪根:鈴もストーカーをしていますから、そう勘ぐってしまうのも仕方ないですね(笑)。確かにみんないい子ですね。 ――それぞれのキャラクターが持っている性格もありますし、別々の高校に進学したということもありますが、一言伝えておけばもっと上手く回ったのにと思うシーンも多々ありました。私もそういう部分があるなと、身につまされる部分がありました。

坪根:三郎は過去のこともあって、内に抱え込んでしまう子なんだろうなと思いながら演じていました。作中でいろいろな経験をして成長していく過程を演じることができて楽しかったです。

――中学生・高校生はとくに精神的にも成長しますからね。

坪根:そうなんです。心情もガラッと変わる時期なので、そこを物語に落とし込んでいるのが面白かったです。 ――各世代の精神状態をリアルに表現しているのが凄いなと思いました。小学生時代など女の子と一緒にいるのが恥ずかしいという時期ですが、私も身に覚えがあるなと。

坪根:そうですよね。僕もその気持ちが分かるので、三郎を演じる時は小学生時代のシーンを意識しました。 ――だから物語の繋がりとして違和感を感じることがなかったですね。

坪根:三郎はなんだかんだ一人の男子高校生なので好きな気持ちもあると思います。恋愛って高校生の時が一番盛り上がる時期じゃないですか。 ――そうなんです。だから谷川あさひからの誘いもよく我慢できたなとも思いました。

坪根:そうですよね(笑)。 ――三郎にアドバイスをするとしたら何を伝えますか。

坪根:変に意識をすると三郎ではなくなってしまうので、「自分が思った通り動けばいい。」と言うと思います。

富岳三郎の捉え方が神谷監督と同じだった

――撮影に入る前に神谷正智監督とお話しされたことはあったのでしょうか。

坪根:最初に全体的にこういう感じで行こうという話はしていなくて、シーンごとにこうやって欲しいということを話しながら進めていきました。最初の本読み時点で作品の世界観や流れを共有することが出来ていたので、現場で大きく直すということはなかったです。富岳三郎の捉え方が神谷監督と僕とで同じだったので、悩むことはなかったです。 ――演じている時とナレーションの時、意識して演じ分けをした部分はあったのでしょうか。

坪根:意識しました。ナレーションは普段より早く話していて、あえて感情をのせない様にしています。神谷監督からもそういう要望をいただいたので、感情の波を付けずに読みました。 ――かなり難しそうですね。

坪根:難しかったですけど、楽しかったです。撮影後に録っていますが、ナレーションは映像を観ながら収録したわけではないんです。 ――そうなるとより大変そうですが。

坪根:三郎を演じていたことで物語や撮影した時の空気感が体に染みついていたので、凄くやりやすかったです。 ――思い出を語っているという部分もあったんですね。

坪根:そうかもしれません。

作品を観て感じていただくのが一番

――完成した映画を観られていかがでしたか。

坪根:自分が出演しているので純粋に映画を楽しむのは難しいですね。もっとこうすればよかったなと思う部分はありました。演じていた時は分からないこともありましたが、完成した映画を観ると全体が分かりスッキリすることが多かったです。心情的な面で凄いリアルを追い求めている作品だと思います。 ――人間関係で悩む部分などは誰しも経験することなので、身につまされるものがありました。

坪根:そうですね。多くの人に刺さる物語だと思います。 ――結末を知ったうえで観るとまた違った捉え方ができる作品です。

坪根:そこもこの映画のいいところだと思います。僕も三回観ています。 ――作品としては会話劇で日常を積み重ねている作品なので、みなさんの演技力を試される部分もあったかと思いますが如何でしたか。

坪根:大変な部分もありましたが、一人の人間として成長できました。主演ということで周りを見ないといけない部分もあり、そうすることで周りから吸収できることもありました。勉強にもなり楽しかったです。日常が積み重なる映画だからこその難しさもありましたが、だからこそ長い時間ずっと観ていられるんだと思います。 ――撮影時、印象に残っているはありますか。

坪根:鈴とタクシーで逃げるシーンの会話は凄く印象に残っています。実際の山形の街を走りながら撮影したので、一度で成功させないといけないという緊張とワクワクもありました。シーンも好きなので思い入れがあります。 ――一緒に作品を作り上げてきた神谷監督の魅力を伺えますか。

坪根:神谷監督の世界観の良さを言語化するのが難しいですね、作品を観て感じていただくのが一番だと思います。日常の会話劇をここまで面白くできるのは凄いと思います。現場で新たなセリフが生まれることもあって、そのワードチョイスも神谷監督らしく面白かったです。映画から神谷監督の良さを楽しんで欲しいです。 ――そのライブ感も魅力なんですね。

坪根:はい。この映画はいろんな要素を取り入れていて情報量の多い映画ですが、だからこそ二度三度楽しめる映画です。何度も劇場に来ていただきたいです。

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