大型商業施設のイトーヨーカドー青森店(青森市浜田1丁目)と弘前店(弘前市駅前3丁目)が閉店することが正式に発表された9日、それぞれの来店客や地元関係者の中に「寂しい」などと惜しむ声が広がった。両店と五所川原店は食品スーパー「ロピア」を運営する「OICグループ」が引き継ぐことが同日明らかになったが、歓迎の声とともに、お気に入りのテナントや長年の憩いの場が変わることへの懸念も聞かれた。
▼郊外拠点 子連れも重宝/青森
「ニュースを見てびっくりした。よく来る店なのに…」。普段の買い物で青森店を頻繁に利用するという青森市内の無職山本元次さん(77)は驚きの表情を見せていた。
同市の郊外に位置する同店は、2000年10月に開店。周辺の住宅街「浜田地区」を含め、青森市民の生活を支える拠点の一つとなっている。西秀記市長は閉店の発表を受け、「これまで浜田地区のランドマークとして、ショッピングや家族の憩いの場として長年愛されていたため、非常に残念。しかし、後継の事業者に8月ごろに引き渡しとの発表があったので、ひとまず安堵(あんど)をしている」とコメントを出した。
住宅街に構える郊外型の大型店という特徴から、同店を利用する客の中には、子ども連れの若いファミリー層も多い。同店の近所に住む会社員女性(31)は「子どもを連れて出かけるには、なるべく買い物は1カ所で済ませたい。ここだと食料品から子どものものまで用が足りるので、なくなると困る」。後継の事業者が決まってはいるものの、「店内のショップや品ぞろえが変わってしまうのは、寂しい」とこぼした。
以前まで同店に勤めていたという市内のパート畑井綾子さん(70)は「辞めてからもずっと大好きな店だから本当にショック。ここは商品の質が良い。店の近所に住んでいる友人も多いから、きっと困るはず」と気にかけていた。
青森商工会議所の倉橋純造会頭は「(同店を含め)県内店舗が全て閉店することは残念。何よりも従業員の雇用継続について、イトーヨーカ堂をはじめ、今後関係する事業者には最大の配慮をお願いしたい。当会議所としても、(同店の取引先など)地元事業者等から相談があれば真摯(しんし)に対応していきたい」とコメントした。
▼後継店に戸惑いと期待/弘前
「ロピア」という聞き慣れない店名に、普段弘前店を利用する市民からは戸惑いの声が漏れた。
「名前を初めて聞いた。県外の企業とのことだが、県内企業なら良かった」と話すのは弘前市の40代男性。「せっかくなので弘前になじんでほしい」とエールを送った。
弘前店の入居テナントで働く女性(20)は「昔から通っている人にとっては(イトーヨーカドーがなくなり)寂しいと思うが、新しい店とかが入ってくるのではと思うと楽しみ」という。買い物に来ていた滝吉聡仁さん(61)は「後を継ぐ店には最低でも現在のレベルを維持してほしい」と注文した。
新しいスーパーに変わることで、店舗全体の形が大きく変わることを心配する声も相次いだ。
弘前店は「無印良品」と「ロフト」という生活雑貨に強い2本柱が1階フロアの大部分を占め、高い集客力を維持してきた。弘前市の松島恵美子さん(71)は「無印などの店舗は何らかの形で残ってほしい」と語った。
バスターミナルが併設し交通の拠点としても機能していることもあり、買い物に来た女性(70)は「バスターミナルは車のない人たちにはとても便利なので何とか残せないか」と話した。
地下1階の食品売り場前のフードコートは、市民の憩いの場としてにぎわっている。高校3年の工藤鈴(りん)さんは「学生にはフードコートがとても便利。今まで通り営業を続けてほしい」と願った。
核テナントの交代が正式に発表され、弘前市の桜田宏市長は「雇用の継続と市民サービスの継続の2点をしっかり見ていきたい。食品部門以外の事業がどう承継されるかや、テナントの従業員の雇用など詳細が発表されていないので注視したい」と述べた。
▼ロピアの進出でエルム魅力増す/五所川原市長
五所川原市のショッピングセンター「ELM(エルム)」へのロピア進出について、佐々木孝昌市長は「人気が高いスーパーで、インパクトがあると思う。また一つエルムの魅力が増し、訪れる若い人たちがさらに増えるのではないか」と歓迎した。
エルムを含む同市郊外では、複数の県内資本のスーパーが営業しており「さらにスーパーの競争が激戦になる」と話した。