「高岡発ニッポン再興」その130 下水管の修理に使えない被災者支援制度に「穴」

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・トイレは修理できても下水管は対象にならない等、応急修理制度に「穴」。

・3.11から液状化による被害が支援対象になった。国の支援制度は災害を踏まえて改正されていく。

・現実の災害を見据えて地域を守るのは政治家の仕事。

高岡市に見舞われた液状化の現場を歩くたびに、私は政治家として何ができるのか、考え込んでしまいます。被災者の暮らしを守るためには、まずは支援金です。高岡市の担当者は「国や県の制度に則っています」というスタンスです。しかし、私は被災者の生活を守るためには、できることはすべてやるつもりです。前例踏襲だけでなく、制度に問題点があれば、変更を訴えます

液状化に見舞われたある住民Aさんは先日、私に応急修理制度の問題点を訴えました。応急修理制度というのは、災害救助法が適用された市町村に適用されます。災害により「準半壊」以上の被害を受けた住宅に関して、屋根、床、窓、台所、トイレなどの修理を、自治体が行うものです。自治体が修理費用を直接業者に支払うものです。

Aさんは「うちの家は応急支援制度をつかって、トイレ修理する以前に問題を抱えています。下水管が破損しているのです。トイレを修繕しても、水が流れないのです。しかし、応急修理制度では、下水管の修理は対象になっていません」と訴えました。

こうした現状について、被災者支援に詳しい長岡技術科学大学の木村悟隆准教授は「液状化の起きた地区では、確かに、下水管の破損が多く発生する可能性がある。応急修理制度の『穴』かもしれない」と指摘しました。

制度は災害の経験を踏まえて変わっていくのです。木村准教授は2015年の関東・東北豪雨の際に、現場に出向き、当時の応急修理制度の「穴」を発見しました。関係者に働きかけて、対象外だった水に濡れた断熱材も対象にしたのです。

木村准教授は今回の下水管の修理についても、応急修理制度の対象になるよう、政府などに働きかけるとしています。私も、国会議員の先生などを通じて、変更を訴えます。

過去を振り返っても、震災に合わせて、国の支援制度はどんどん変わってきています。例えば、罹災証明の被害認定基準です。罹災証明は、国や県の支援を受けるための基準となるものです。

2004年の新潟中越地震の時も液状化が発生しましたが、住宅が仮に敷地から1沈んでも、傾いていなければ、被害として認定されませんでした。今なら全壊です。

その後、2007年に能登半島地震と中越沖地震が起きました。この年の国会で、被災者生活再建支援法の改正案が国会で審議され、住宅本体に使えるようになったのです。

そして、液状化の判定基準が設けられたのは、2011年の東日本大震災の後です。浦安市などで大規模な液状化が発生し、それが認定できるようになったのです。災害の実態を踏まえて、制度の改訂は繰り返されているのです。

木村准教授は「決まっているルールを機械的に適用するのは行政の事務職の仕事ですが、現実の災害を見据えて地域を守るためにどうすればいいか考えるのは政治家の仕事です」と訴えています。私はこの言葉を肝に銘じて被災者を守るため、全力で取り組みます。

トップ写真:液状化が深刻な高岡市「吉久」地区(筆者提供)

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