【連載】箱根事後特集『萌芽(ほうが)』 第10回 10区 菅野雄太

2度目の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)で再び10区を任された菅野雄太(教3=埼玉・西武学園文理)。今年は前半から攻めのレースを展開し、昨年のリベンジを果たす区間5位の快走を見せた。そんな菅野に、今大会の振り返りと、最上級生として迎える来季の意気込みを伺った。

※この取材は1月14日にオンラインで行われたものです。

頼もしい走りができた

10区を走る菅野

――事前対談時から当日にかけて、調子に変動はありましたか

調子については、むしろ上がったかなと思っています。事前対談の時は一番練習を積んでいて疲労が溜まっている時期でした。本番に向けて2週間くらい疲労を少しずつ抜いていくことができたので、より調子が上がっていったかなという感じです。

――昨年の初出走から今回に生かしたことはありますか

昨年は守りのレースしかできないような走力でしたが、今年は昨年より走力がついたので、攻めるレースというのも引き出しの一つとして持っておこうというマインドで臨むことができました。それは昨年の経験を踏まえたことかなと思います。

――往路5位という結果をどのように見ていましたか

予想以上に良かったかなと思います。大志(伊藤大志次期駅伝主将、スポ3=長野・佐久長聖)という本来平地でも活躍できる選手を欠く中で、元々復路の予定だった辻さん(文哉、政経4=東京・早実)が急きょ往路に回ることになりました。本当に辻さんの走りには驚きましたし、5位というのは本当に予想以上の結果だったと思います。

――復路の選手の走りを振り返っていかがですか

6区、7区に関しては、やなぎさん(栁本匡哉、スポ4=愛知・豊川)と諸冨さん(湧、文4=京都・洛南)は前回大会は出場していないので、うまくつないでくれたらいいなと思っていました。順位としても、シード権までつないでくれたので良かったです。8、9、10区は昨年と同じオーダーで、前回大会経験者なので、ある程度区間上位というのは狙っていきたいと考えていました。8区と10区は区間1桁、9区もしっかり区間11位でまとめることができたので、割とうまくいったのかなと思います。

――ご自身の走りを振り返っていかがですか

頼もしい走りをしたいということを部員日記に書いたのですが、ある程度有言実行できたかなと思っています。また先ほど話したように、走りの引き出しとして攻めるレースも入れていきたいという思いがあったのですが、前を走る法大の選手をしっかり追っていこうと覚悟を決めて、前半から少し突っ込んで入りました。そういったところも今後につながるものになったと思います。

――昨年と比較して余裕はありましたか

終盤は昨年より余裕がなかったのですが、前半は自分の感覚ベースで、タイムにも神経質にならずに余裕を持って走れたかなと思います。

――菖蒲敦司駅伝主将(スポ4=山口・西京)とのタスキリレーはいかがでしたか、何か声かけはありましたか

向こうから何を言われたかはあまり覚えていないです。僕からは選手としての4年間と、1年間主将としてチームを引っ張ってくださったことに対する思いを込めて、お疲れ様でしたと声かけをしました。

――追う相手との差が見えないことの難しさはありましたか

そうですね。かなり難しかったです。特に終盤の競っている時に難しさを感じました。20キロくらいであと11秒と言われてから、きつい中で希望が見えて、切り替えて3キロ絞ったのですが、それでも自分がどこまで追いつけたのか分からないという状況で。目標物が見えないというのが難しかったですね。

――監督の声かけはいかがでしたか

監督の声かけは、今回ものすごく面白くて。15キロくらいまでは余裕を持てていたので、ある程度聞こえていたのですが、毎回クスッとくるようなことを言ってくださって、キツさを和らげてくださいました。また、自分は前半の動きが固くて、後半は徐々に馴染んでいくタイプなのですが、監督の声かけは前半から面白かったので、前半からしっかり緊張をほぐすことができ、いい動きができたと思います。

――7位という結果についてどう感じられていますか

万全なメンバーが組めない中で箱根を迎えて、一時はシード権争いにも巻き込まれそうになっていたので、第一に安堵の気持ちがありました。ただ、シード権獲得というのは元々の目標から下方修正したものであるので、万全の状態で迎えられなかった悔しさはありますし、早稲田はこんなもんじゃないというのを来年は示していきたいと思います。

――事前対談時には目標を区間5位以内とされていましたが、ご自身の区間5位という結果はどう見ていますか

目標を達成できたのは良かったです。やはり、僕や伊福(陽太、政経3=京都・洛南)のような一般組で復路を担う選手が区間の上位で走れたというのは、来年のチームを考えた時、かなり大きな収穫だと思います。ただ、区間5位というのは決して満足できないなと思っています。総合3位や総合優勝を狙うのであれば、やはり全員が区間3位以内でまとめることが必要だと思います。また個人的にも、一時は区間3位くらいで走っていたというのもあって、普段武器としている後半が伸び悩んでしまったことが非常に悔しかったです。

――区間10位の昨年から成長できた要因は何と考えますか

一番は質の高い練習を昨年より積めるようになったことだと思います。昨年はAチームの練習を余裕がない中でやっていたのですが、今年は昨年より速い設定で、少し余裕を持ちながらできていたので、ベースの面で昨年よりも上がったのかなと思います。

――今現在の姿と入学前に思い描いていた姿とに乖離(かいり)はありますか

そうですね。入学前は、やはり箱根を走りたいという気持ちはありましたが、4年間のどこかで走ることができればいいかなくらいだったので。そう考えてみると、3年の時点で2回も箱根を経験できているというのは良い意味で元々描いていた理想と乖離(かいり)があるのかなと思います。

――レース後同じ一般組の伊福選手と言葉は交わされましたか

交わしたとは思いますが、ゴール後はいろんな人と会話したので、 伊福と何を話したかというのは覚えていないです。

――昨年に続き伊福選手と同じ区間順位という結果についてはどう見ていましたか

お互い昨年よりも成長した証拠だと思います。来年はお互いこれで慢心せずに、より上の区間順位を目指していきたいと思うきっかけになりました。

――菅野選手にとって伊福選手はどのような存在ですか

ライバルではありますが、その一方で、 親友みたいな存在だなと思っています。レースの前後にはいつもお互いに声をかけ合っていて、精神的な支柱になっている部分もありますし、練習では切磋琢磨(せっさたくま)し合う仲というように、二つの面があるのかなと思っています。

来年こそは10区で区間賞へ

前回の箱根前合同取材での伊福と菅野。昨年に引き続き、今年も同じ区間順位で走った

――箱根が終わってからはどのように過ごされていましたか

地元の友達や、高校の部活の後輩に会ったりもしましたが、基本は実家でゆっくりしていました。

――箱根を含め今シーズンを振り返っていかがですか

全日本までは崩れることも多かったのですが、そこからしっかり自分と向き合って、やるべきことを洗い出せたのが、結果につながったと思います。今後も、自己分析をしっかりやっていけば、より結果につながるのかなとも思うようになりました。

――今現在の調子はいかがですか

今はあまり調子は良くないです。元々、レース後に疲労が抜けにくい体質というのもあるのですが、それに加えて軽い炎症のようなものもあって。走れてはいるのですが、調子は戻りきってないかなという感じです。ただ、ここから春にかけて走り込みの期間になっていくので、少しずつ練習量を増やしていこうと思っています。

――新チームの目標はありますか

今年は全員が当事者意識を持てるように、 みんなで話し合って目標を決めようということになりました。原案を新4年生が考え、全体に提示するという形にしていて、原案は決まったのですが、 まだチーム全員では話し合えてない状態です。

――最上級生としてどのような役割を果たしていきたいですか

しっかり後輩とコミュニケーションをとって、横のつながりだけではなく、縦のつながりも強化していきたいと思います。よりチーム力を高めていける存在でありたいです。

――今後のレース予定はありますか

2月の頭に、 距離走の練習の一環で愛媛マラソンに出場してスタミナを強化し、その後は3月に日本学生ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)があるので、そこである程度上位を狙っていきたいかなと思います。

――トラックシーズンの目標を教えてください

5000メートルであれば、13分台、10000メートルであれば、28分40秒くらいを1つの目標としてやっていきます。秋になった時に、トラックシーズンで身に着けたスピードをロードにもうまく落とし込めるような土台を作っていきたいかなと思います。

――改めて10区の好きなところを教えてください

沿道の応援が一番多い区間だと思うので、それを力に変えて走れるというのは大きいですし、これまでタスキをつないできた仲間と大手町で会えるというのも、10区の醍醐味だなと思います。また、10区は崩れないという監督からの信頼があってこそ走れる区間だと思うので、その信頼に応えるような走りをできるように考えてやれるというのも好きなところです。

――来年もまた10区を走りたいですか

はい、走りたいと思います。来年は10区で区間賞を狙えるレベルに達していたいですし、 今回チームは6位、7位争いでしたが、もっと上位で争ってみたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 長屋咲希、田島凜星)

◆菅野雄太(かんの・ゆうた)

2002(平14)年5月7日生まれ。165センチ。埼玉・西武学園文理出身。教育学部3年。第100回箱根10区1時間9分(区間5位)。クラシック音楽が好きな菅野選手。監督から「第三楽章はアレグロでいこう」と声をかけていただいたことで緊張がほぐれたそうです!

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