うんちのトイトレが進まない、ときどきおなかが痛くなる・・・もしかして便秘かも?【ママ小児科医】

引用元:Nuttawan Jayawan/gettyimages

小児科医・白井沙良子先生が、診療の中で質問が多いことや、季節や時期に合わせてママ・パパたちに伝えたい役立ち情報、そして気がかりへのアドバイスまで、さまざまな情報を発信する連載「ママ小児科医さよこ先生の診療ノート」の3回目。今回は多くのママ・パパたちが「これって便秘なのかな?」と悩んでいる「子どもの便秘」についてです。「子どもが便秘になりやすい時期は三つある」と白井先生は言います。

激痛で暴れる3歳の娘を夫と2人がかりで押さえつけた日々「小児慢性機能性便秘症」の怖さ・ママの声

「1週間に2回以下」「出すときに痛がる」「足を交差させて我慢する」は便秘のサイン

「うちの子、うんちが毎日出なくて、3日に1回とかなんです。これって便秘なんですかね?」(5歳)
「うんちが出る前に、泣き叫んだり、いたーい!って言ったりしてるんです。うんちがかたいからなんでしょうか?」(3歳)

子どもののうんちについての相談は、外来診療時によくあります。とくにうんちが出る回数やかたさについては、ほかの子と比べてどうなのかがわかりづらく、判断が難しいですよね。

子どもにも便秘の「診断基準」(※1)があります。まず頻度は「1週間に2回以下」つまり、だいたい2〜3日に1回は排便がないと、便秘の可能性を考えます。また「便を出すときに痛がる」「かたい便が出る」のも便秘のサインです。どれくらいかたいかは難しいですが、便の表面がひび割れていると、かなりかたいなという印象です。

ほかにも「トイレが詰まるくらい大きな便が出たことがある」「便を我慢して足を交差させる姿勢をとる」という項目も、便秘の診断基準に含まれています。

「うんちのトイトレが進まない・・・」それって便秘のせいかも

「おしっこのおむつははずれたんですが、うんちがなかなかできなくて・・・パンツやおむつをぬらしてしまうので、いつも怒ってしまいます。」(4歳)

2〜3歳を過ぎると、トイレトレーニング(以下トイトレ)のお悩みもつきない時期です。トイトレは個人差も大きく、絶対に何歳までにできないといけないということはありませんが、うんちのトイトレだけがうまく進まないという場合は、便秘の可能性があります。
便秘のせいでうんちを出すときに痛い・うんちを気持ちよく出せないという体験がかさなると、トイレでうんちを出したいという気持ちにブレーキがかかり、トイトレが進まないのです。

また「トイトレが一度完了したのに、週に1回ほど便がもれてしまう」というのも、実は便秘のサインです。便がもれるというと「便秘ではなく、下痢なのでは?」と思いがちですが、「便秘のせいでかたい便がつまっていて、その横を、やわらかい便がつたってもれ出てしまう」というメカニズムで、便秘であっても便がもれてしまうことがあります。

たかが便秘、されど便秘。ひどい腹痛を起こすことも。

さて、そんな子どもの便秘ですが、とてもありふれたもので、世界的にも「便秘になりやすい時期」がある(※1)といわれています。

まずは、離乳食の時期です。母乳やミルクに限らないさまざまな食材が腸の動きにも入ることや、徐々に食事に含まれる水分量が少なくなることが影響します。
次はトイトレの時期です。おむつ以外に排泄するという初めての行為を、ときにはまわりからプレッシャーを受けながら乗りきる中で、どうしても便を出すことを怖がったり、避けたりすることがあります。
最後は就学の時期です。学校のトイレでは恥ずかしいから排便を我慢するという子どもも少なくありません。

ただし、「たかが便秘」とあなどっていると、便秘はさまざまな不調の原因になります。前述の通り、トイトレが進まない原因にもなりますし、さらに未就学の子だと、便秘のせいで尿路感染症を繰り返す原因にもなります。これは便がうまく出せず、腸内ガスでおなかが張ってしまうことで、膀胱がうまく収縮できなくなるためです。

さらに重症だと、便秘のせいで嘔吐、食欲が出ない、体重が増えづらいといった影響も出ます。また夜中に激しい腹痛を起こして救急外来を受診する、といった事態にもなりかねません。便秘ごときで病院に行っていいのかな・・・などと思わず、後述するとおり、適切に受診をして、薬を飲むことも大事なのです。

自宅ケアはほどほどに。薬を正しく使うほうが大事。

「うんちがかたいから、水分を取ってほしいのに、嫌がって全然飲んでくれなくて・・・、どうしたらいいですか?」(2歳)
「便秘対策に食物繊維をとってほしいのに、いもや豆は嫌いで食べてくれなくて・・・ヨーグルトって効果ありますか?」(4歳)

便秘対策に、水分や食物繊維をとってほしいと思っても、子どもがなかなか受け付けてくれないという相談も多くいただきます。ただ結論からいえば、どれくらい水分や食物繊維をとれば、便秘に効果があるのかという医学的な根拠は、とくに小児においては乏しいです。無理ない範囲で取り組めればOK、くらいのスタンスがいいでしょう。

まず水分ですが、たしかに推奨されている水分量(※2)はあります。これは子どもの体重あたりで決まっており、たとえば体重が5kgの子どもなら1日500mL、10kgなら約1000mL、20kgなら1500mLが目安です。ただしこれをどれくらい下回ったら便秘になるのか、という根拠はありません。同様に食物繊維やヨーグルトといった乳酸菌なども、便秘に効果的な量などは明示されていません。

水分や食物繊維をとってくれない、となげくよりかは、適切に受診をして、便秘の薬を正しく使うことのほうが大事です。ガイドラインにも「便秘の薬を使ったからといって、くせになる(薬がないと排便できない体質になる)ということは医学的に証明されていない」と書かれており、薬を使うことを過度に心配する必要はありません。シロップ、粉、錠剤など様々な剤形で、量も調節できるので、恐れずに使ってあげてください。

また「薬をすぐにやめない」ことも大事なポイントです。完全に薬を中止できるまでには、数カ月や数年かかることもあり、かつ、やめたあとに再発することもあるという報告があります。そのため、薬をすぐにやめないこと、また徐々に薬の量や回数を減らしていくことが大切とされています。医師の指示にしたがって、気長にしっかりとつき合っていくことが大事です。

生後6カ月ごろまでは、一時的に排便のペースが落ちても、正常なことも。

「新生児のときは毎日うんちが出ていたのに、最近、4日間くらい出ないときもあります。母乳もよく飲んで元気なんですけど・・・、これって便秘ですか?」(生後2カ月)

まだ生後まもない時期は、うんちの回数が減ると心配になりますよね。たしかに上記のとおり「1週間に2回以下」という便秘の基準はありますが、生後数カ月の間は、一時的に排便ペースがこれくらいに落ちても正常なことも多くあります。

具体的には、産まれてから生後6週間くらい(生後1〜2カ月くらい)で徐々にうんちの回数は減ることがあります。目安の排便回数は、生後3カ月では1日2~3回、生後3カ月以後では1日1〜2回(※3)とされていますが、母乳のたびに出る子もいれば、1週間くらいうんちが出ない子もいる(※4)(※5)とされており、ほかに異常な所見がなければ、いずれも正常な排便ペースとされています。

もちろん便秘のせいで、今までより嘔吐の頻度や量が増えていたり、哺乳の量が減るようであれば受診をおすすめしますが、元気であれば、生後数カ月の間は、便の回数にそこまでこだわる必要もないということです。

文・監修/白井沙良子先生 構成/たまひよONLINE編集部

大人の便秘とは違う、赤ちゃんの便秘、予防、早期発見が大切「小児慢性機能性便秘症」必ず治療を【小児科医】

重症な便秘は、排便以外にもさまざまな影響があるとのこと。適切な受診と便秘の薬を正しく使うことが大切とのことなので、「これって便秘かな?」と思ったら「たかが便秘」と思わずに小児科を受診しましょう。

※1 UpToDate, Functional constipation in infants, children, and adolescents: Clinical features and diagnosis
※2日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化機能研究会、小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン、診断と治療社、2013年
※3 阪下和美、正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン、東京医学社、2017年
※4 NIH, Constipation in Children
※5 NHS, Constipation and breastfeeding

●記事の内容は2024年1月30日の情報であり、現在と異なる場合があります。

© 株式会社ベネッセコーポレーション