先進技術を活用する「新農人」 中国甘粛省

先進技術を活用する「新農人」 中国甘粛省

1月26日、甘粛省隴南市武都区桔柑鎮賀家坪村で、農業用モノレールを用いてオリーブ畑に生産資材を運ぶ村民。(蘭州=新華社配信)

 【新華社蘭州2月10日】農業用モノレールに乗った男性が山の斜面をすいすいと進みながら餌をまき、ニワトリが押し合いへし合いしながらその後をついていく。そんなコミカルな動画が中国のSNS(交流サイト)で話題になっている。「手間も時間も省ける。『新農人』は本当に幸せだ」。視聴者からはたくさんのポジティブなコメントが寄せられている。

 「新農人」とは、専門的な知識に富み、農業技術をよく理解し、経営管理を得意とする新しいタイプの農業従事者をいう。ここ数年、科学技術を活用して農村で夢を追う「新農人」の話がしばしばネットをにぎわすようになった。

 甘粛省隴南(ろうなん)市武都区にある中国最大のオリーブ栽培拠点では、科学技術の導入でより生産性が高く、より効率的な栽培ができるようになった。冬場の手入れが重要なオリーブ農家はこの時期、施肥や耕うん作業に追われる。ここでも活躍しているのが農業用モノレールだ。肥料や農具を満載した運搬車が軌道に沿ってゆっくりとオリーブの木が生い茂る棚田を登っていく。

 「ここは山が高く険しい。以前は肥料を担いで山を登るのも、収穫して山を下るのも、全て人手に頼っていた」。同区桔柑鎮賀家坪村のオリーブ農家、趙詞平(ちょう・しへい)さんは「政府の支援で導入した軌道式運搬車のおかげで、燃料を入れればあらゆる運搬作業を簡単にこなせるようになった」と語る。

先進技術を活用する「新農人」 中国甘粛省

甘粛省隴南市徽県にある隴青智控産業園のスマート栽培ハウスで活用されている、モノのインターネット(IoT)プラットフォームのクライアント端末のスクリーンショット。(資料、蘭州=新華社配信)

 同区オリーブ産業開発弁公室の趙海雲(ちょう・かいうん)主任によると、モノレールを使えば一度に200キロを運搬でき、500メートルの坂をわずか11分で登ることができる。地元の農機部門が企業や大学と共同開発したもので、険しい山岳地帯で生産資材や農産物を運ぶ際の問題を効果的に解決した。隴南一帯ではこれまでに106本、計66.7キロの軌道が設置されているという。

 同市徽県永寧鎮の隴青智控(スマート制御)産業園にある第2期野菜スマート栽培ハウスでは寒い冬にも関わらず、青々とした苗が育っている。責任者の孫理平(そん・りへい)氏によると、ハウス内の温度が10.4度、湿度が57.8%など重要な栽培データをリアルタイムのモニタリングでいつでも正確に把握することで、農作物の成長にとって最適な環境を用意できるようになったという。

 従来型の農業から現代的な農業への移行には科学技術による支援も必要だが、生産・経営モデルの革新も欠かせない。

先進技術を活用する「新農人」 中国甘粛省

甘粛省隴南市武都区にある隴郷源オリーブ油現代化無塵加工工場。(資料写真、蘭州=新華社配信)

 李樹紅(り・じゅこう)さんは2014年、長く働いていた浙江省を離れ、故郷の隴南市武都区に戻った。中国南部で電子商取引(EC)がちょうどはやり出した頃で、さまざまな農産物がネットで販売されるようになっていた。隴南のオリーブやコショウ、茶葉、蜂蜜といった良質な特産物がまだほとんど知られていないことに目を付けた李さんは、市場調査を経て、農産物のネット通販会社、隴南隴郷源茶葉土特産開発を設立。ネットと実店舗の連携により、地元の特産品をより広い市場で売ろうとする試みだった。

 同市もインターネット活用の機運を捉え、農村のネット店舗立ち上げを推進し、商品の供給、オンライン販売、物流・配送からなるEC体系を構築、李さんのような「新農人」に利便性を提供した。

 9年余りにわたる努力の末、李さんの会社は家族経営の農場、合作社(協同組合)、企業、ECを一体化した新しい農業事業体となり、昨年には売上高が4800万元(1元=約21円)を上回るまでになった。

 市農業農村局の邱暁旭(きゅう・ぎょうきょく)局長は、「新農人」と新技術の組み合わせで農業はより楽になると語る。同市は引き続き「新農人」を支援し、科学技術の革新や難題の克服、技術サービスの提供に取り組み、農業の質の高い発展を促進していく方針だという。(記者/宋常青、張文静、郎兵兵)

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