23歳まで無所属、ゴミ収集人、無実の罪で刑務所入り…ハットトリック決めた31歳の経歴にアルゼンチンが注目

アルゼンチン1部リーグ前期第4節が9日に行われ、ホームのラシン・クラブがサン・ロレンソに4-1で勝利した。その試合でハットトリックを決めたラシン所属のアルゼンチン人FWアドリアン・マルティネスの珍しい経歴に現地で注目が集まっている。9日、アルゼンチンメディアの『TyCスポーツ』などが報じた。

1992年生まれで現在31歳のマルティネスは、少年時代や17歳時に地元チームでプレーをした以外は23歳までクラブに属してプレーした経験がない。ゴミ収集人やレンガ職人として働いたが、バイク事故でそれらの職を失った。

2014年、マルティネスに悲劇が起こる。兄(弟)が射殺され、更にその後、マルティネスは襲撃犯の自宅を放火し強盗をした疑いで逮捕され、刑務所に入ることになった。

だが、本人は容疑を否認し、普段からマルティネス家の評判が良かったことから近隣住民も真相解明を要求。捜査の結果マルティネスの無実が確認され、6ヶ月後に釈放された。

マルティネスはのちにインタビューで刑務所での日々を「嫌な思い出を残さないようにしている。何かが起こったんだ。病気に苦しむ人もいれば、刑務所に行く人もいる。大切なのは、それを一人一人がどう乗り越えるかだ」と語った。

その後マルティネスはアルゼンチンの下部リーグのチームのトライアウトに参加し、無給という条件で23歳にして初めてクラブと契約した。

アルゼンチンの下部リーグで実績を残したマルティネスは、2018年にパラグアイのソル・デ・アメリカと契約し12ゴールを挙げチーム得点王に輝き、同じ年にパラグアイのリベルタに移籍。コパ・リベルタドーレスのデビュー戦でハットトリックを達成し、コパ・パラグアイでは優勝を果たした。

そしてパラグアイのセロ・ポルテーニョやブラジルのコチリーバへのレンタル移籍を経て2023年に母国アルゼンチンのインスティトゥートACコルドバにフリーで移籍。公式戦41試合に出場し18ゴールを挙げた実績が評価され、2024年にアルゼンチンのラシンに加入した。

ハットトリックを決めた試合後マルティネスは「神様が自分の人生に与えてくれたことは素晴らしい。刑務所から出て23歳でサッカーをプレーするチャンスがある人が、果たして何人いるだろうか」と刑務所に入った日々を乗り越え、母国の名門クラブでプレーできる喜びを語った。

【動画】アドリアン・マルティネスのハットトリック

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