能登地震受け倒壊家屋からの救助も想定 複合災害の対応確認 川内原発30キロ圏防災訓練

倒壊家屋からの救助訓練をする警察と消防の職員=10日、薩摩川内市寄田町

 鹿児島県は10日、九州電力川内原発(薩摩川内市)の重大事故に備えた原子力防災訓練を原発30キロ圏内の9市町と実施した。住民約600人を含め、約210機関4000人が段階的に避難する手順や連絡体制を共有。能登半島地震を受け、倒壊家屋からの救助訓練を組み込むなど複合的な災害への対応を確認した。

 薩摩半島西方沖を震源とする最大震度7の地震が発生し、川内原発で外部電源が喪失、放射性物質が外に漏れたと想定した。原発から5キロ圏の住民が優先的に避難。5~30キロ圏は、屋内退避後に避難を始めた。

 薩摩川内市に設置した対応拠点「オフサイトセンター」では、県と周辺9市町などが空間放射線量や原発の炉心の状態を確認。地震に伴う道路の損壊箇所を避ける避難ルートを検討した。

 倒壊家屋からの救助は、薩摩川内市寄田地区で行われた。自衛隊が倒木を重機で払い、車両の通行スペースを確保。消防と警察が倒壊した家の屋根にチェーンソーで穴を開け、住民を救い出した。

 長島町では孤立した集落から海上自衛隊のゴムボートなどを利用して避難。住民役を務めた消防団員の赤嵜弘則さん(45)は「ボートからはしごで海自艦に乗り移ったが、高齢者には厳しいと感じた」と話した。

 九電は原発構内で、格納容器内の冷却に使用する移動式大容量ポンプ車を設置した。放射性物質の汚染検査や除染を行う「避難退域時検査場所」では、原子力防災アプリを活用し、避難者情報を把握した。

 塩田康一知事は避難車両と避難者をマッチングするシステムなどを視察。訓練後、「能登半島地震の今後の対策を踏まえながら、避難計画について改善すべき点は対応したい」と述べた。

【地図】川内原発の防護措置準備区域と主な避難訓練

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