「避難用バス 計画通り来られるのか」「海路での避難も難しいのでは…」複合災害で起きうる“孤立”対応求める声 川内原発30キロ圏防災訓練

汚染検査をする訓練参加者ら=10日、出水市中央町

 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の重大事故を想定した10日の県原子力防災訓練では、1月に発生した能登半島地震を受けて、参加者から避難計画の実効性を不安視する声が相次いだ。複合災害に伴う地盤の隆起や集落の孤立-。発生する事態を具体的に想定することを求める声も聞かれた。

 川内原発から5キロ圏内の「高江こども園」(同市高江町)。保護者に引き渡しできなかった園児を、県が準備するバスで避難させる訓練を初めて実施した。道路の通行止めが相次ぎ、複数の集落が孤立した今回の地震を踏まえ、園長(51)は「車で送迎する保護者が多く、人ごとではない。バスも計画通り来られるだろうか」。避難計画や訓練内容の見直しが今後の課題だと考えている。

 さつま町久富木の住民8人は、バスで1時間余りの鹿児島市に向かった。久富木区公民館長(77)は「初参加の住民ばかりだったが順調だった」と評価する一方、「交通渋滞の恐れもある。経路を複数準備し、把握しておく必要性を強く感じた」と話す。

 高齢化による移動の不安も聞かれた。日置市伊集院の男性(71)は「車を持たない住民も多い。大人数が一斉に避難したらパニックになる」。日頃から高齢者の避難手順などを確認したいという。薩摩川内市入来で屋内退避をした女性(73)も「今は自分も周りの人たちも車の運転をしているが、乗れなくなったらどうなるだろうか」と心配する。

 今回の地震では、海底が隆起して船が接岸できないケースもあった。いちき串木野市西浜町の男性(62)は「海路での避難も難しいのではないか。津波が発生すれば住民は混乱し、スムーズな移動はできないだろう」と懸念した。

 終了後、田中良二市長は陸路が途絶した場合を念頭に「ヘリコプターや船舶などの活用が重要になってくる」と指摘。川内港で進む耐震強化岸壁の整備を急ぐべきという考えを示した。

倒壊家屋からの救助訓練をする警察と消防の職員=10日、薩摩川内市寄田町

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