思い込みからトラブルに/社会保険労務士法人KESERA 代表 清成 留美

ここ最近、ハラスメント研修の依頼を受けることがとても多くなった。私自身が産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格も取得していることもあり、以前から研修講師の依頼は受けていたが、多くても月1件ペース、平均すると年間で7~8件くらいが通常だった。

しかし昨年辺りから、顧問先はもちろんだが、当法人のホームページ経由の依頼や、同業の社労士からの依頼、研修会社からの依頼などがあり、多いときは月に5件のハラスメント研修を行うようになった。

当法人は、就業規則・諸規定の作成や社会保険・労働保険の保険料計算、従業員入退社時の手続き代行、助成金申請サポート、労使紛争の予防コンサルティングなどを行う普通の社労士事務所である。研修をメインとしている事務所ではないことを考えると、現在の依頼件数は非常に多い状況といえる。

依頼の動機は、実際に企業内で問題があったケースや、今まで研修を実施したことがないのでそろそろやっておかないと、というケースなどさまざまだ。3時間でグループ討議を含めた研修依頼だったり、1時間程度で概要をレクチャーしてほしいというオーダーだったりと、研修の所要時間や内容も多様である。

依頼の件数は、令和2年6月(中小企業は4年4月)のいわゆるパワハラ防止法(労働政策総合推進法)の施行当時ももちろん多かったが、そのときを上回る印象だ。

多くの研修をし、受講されている方の話を聞いていると、法律の内容やハラスメントの定義などを学習することはもちろん大事だが、結局最終的には人間関係、コミュニケーションをどうとっていくかという話になってくる。

「そんなつもりで言ったわけではないのに…」「良かれと思って忠告したのに…」。実際トラブルが起こっている現場ではそのような声がよく聞かれる。注意する側の思い込みや決めつけで言ってしまうと双方の認識のずれが生じ、トラブルに発展する可能性が高まる。

かくいう私も事務所内で注意した際、「きっとこうだろう」と思い込みから発言してしまったことにより、相手に誤解を与える結果となってしまった。「トラブル」とまではいかないが、関係性がぎくしゃくしたという経験がある。

ビジネスの現場だけではなく、家庭や友人同士など人間同士が接すると少なからず確執は起こる。より良い人間関係を築くためには相手を思いやる気持ち、自己理解と他者理解が重要だと「ハラスメント研修」の講師を行いながら思い知る今日この頃である。

社会保険労務士法人KESERA 代表 清成 留美【福岡】

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