『新空港占拠』は『大病院占拠』とまったく同じ流れに 獣たちが空港を占拠した理由とは

前回のエピソードのラストで馬(竹内まなぶ)と猪(後藤剛範)、牛(サーヤ)の3人の正体が判明した『新空港占拠』(日本テレビ系)。2月10日に放送された第5話で、残りの3人の獣もようやくお面を外す。兎が安斉星来で羊が山本千尋、そしてリーダー格である龍が高橋メアリージュン。ちょうど前半戦で10名の占拠犯の顔が見えるようになるというのは、前作『大病院占拠』(日本テレビ系)とまったく同じ流れだ。すなわち次回以降の後半戦で、占拠の目的など獣たちのより深いところまで入っていくことになる。まず今回は、その伏線となる様々なポイントが見えるエピソードとなった。

突如苦しみだして絶命した川越(片桐仁)。彼が飲んだ水のペットボトルに何かを入れる様子が監視カメラに記録されていた和泉(ソニン)は、殺人の嫌疑がかけられ指揮官の座から降ろされてしまう。和泉の無実を信じる武蔵は、新たに指揮官を務めることになった大久保(生津徹)と対立。志摩(ぐんぴぃ)と本庄(瀧内公美)と共に和泉の無実を示す証拠探しに奔走する。そんななか、獣たちは和泉と人質の交換を要求。大久保はこれが好機と、SAT隊員を空港内に突入させることを強行するのである。

今回のエピソードの前半は、獣たちが仕掛けた“嘘”に翻弄される登場人物たちの姿を描くことに徹していた。和泉が毒を盛ったというフェイク動画で指揮本部の内部は大きく揺れ動き、挙句に大久保の指示で動いたSAT隊員たちは獣たちの仕掛けた罠にまんまとハマって撤退を余儀なくされる。一方でVIPラウンジにいる人質たちも、神経系に作用する毒を盛ったという獣たちの言葉で解毒剤の取り合いになり、さらなる疑心暗鬼に陥る醜い争いを繰り広げる羽目になる。

ある意味では彼らが振り回される様子を高みから見物しながらただ楽しんでいるようにも見えるが、これは獣たちによる“復讐”の一環なのだろう。今回ようやく、獣たちの関係を裏付けるひとつの大きなヒントが見える。それは和泉のカバンの中から発見された“いぬ”のお面(これがあるということは、指揮本部に出入りできる誰かが内通者ということでもあるわけだが)に仕込まれていた13桁の数字から特定された百首神社という地元の神社で、5年前に起きたある事件だ。

空港建設の反対運動をしていた地元の漁師が何者かに殺害され、漁師仲間とその恋人、幼馴染の3人が逮捕される。その3人こそ、馬と猪、牛の3名のことである。そして殺害された漁師には娘が2人いる(それは指揮本部の画面に表示された捜査関係者リストで確認できる)。終盤で獣たちに捕えられて処刑台にかけられた天童(黒沢あすか)に対し、羊と兎が「父さんと同じ痛みを」と言っていることから、彼女たちは事件の被害者の娘ということが推測できよう。獣たちが空港を占拠した理由のひとつは、反対運動を封殺しようとした圧力――権力者たちによる“嘘”に対するものということか。

同時にこの神社に本庄と出向いた武蔵は、そこで祀られている十二個の箱を見つける。そこに収められているはずのものは、豊漁祈願で子どもたちがつけるという十二支のお面。それらがすべて出払っているのは、まさに獣たちが着けているものだということだろう。これで彼らが単なる“鬼たち”の模倣犯ではなく、なんらかの意図や信念をもってお面を被っていたということがわかるのである。前回今回で顔を明かした5名、そしてこれまでのエピソードで空港建設の関係者への因縁が明らかになっている鶏(山谷花純)と虎(平山浩行)と猿(岩瀬洋志)の動機は、なんとなく見えたことになる。

あとは龍と、まだ見ぬ“山猫”との関係か(蛇である駿河がなぜここに加わったのかもポイントではあるが)。この“山猫”をたどっていった先に、武蔵の兄・健一が失踪した理由が見えてくるとして、もちろん健一=山猫というケースも充分に考えられる。そしてまったく別のところで進行している、怪しげな警察官・綾部(吉田健悟)に狙われた裕子(比嘉愛未)と、彼女を助けに現れた謎の男(ジェシー)の攻防。謎の男は、裕子が彼の愛する人を殺したのだと語るが、それは第1話冒頭の病院のシーンでのやり取りと関係しているのだろうか。そうだとしてもまだこの周辺は謎だらけだ。

(文=久保田和馬)

© 株式会社blueprint