中世城館調査の成果報告 茨城・笠間で城郭サミット 研究者6人が登壇 県央・県西編

県央、県西地域で確認された城郭について報告した「茨城城郭サミット-県央・県西編」=笠間市石井

茨城県内で中世に点在した城館に関するシンポジウム「茨城城郭サミット」(茨城大人文社会科学部、同県笠間市、同市教委、県教委主催)が10日、同市石井の笠間公民館大ホールで開かれた。県教委が主体となって県全域で中世城館を調査した「県中世城館跡総合調査」(2018~22年度)で計1135カ所もの城館跡を確認。今回は「県央・県西編」として、6人の研究者が調査の成果を報告した。

「戦国期江戸氏の拠点城館とその役割」を報告した同県水戸市立博物館の藤井達也さんは古文書を読み解き、本拠の水戸城(同市)と支城の小幡城(同県茨城町)にうかがえる江戸氏の築城思想や管理体制などを推論した。

藤井さんの報告によると、江戸氏は城を交通の要衝に置き、支城に家臣を送り込んで管理。城館は戦いに備えるだけでなく、流通でも重要な役割も担っていたとみられるという。

同県桜川市役所の越田真太郎さんは「河川湖沼と中世城館」をテーマに報告。3方を水に囲まれた場所にあった山川綾戸城(同県結城市)について、「山のない地域で、いかに守りの堅い場所に城を築くかという考えがうかがえる」と述べた。

記念講演もあり、考古学研究者の浅野晴樹さんが「戦国城館のやきもの」をテーマに、甕(かめ)の役割の変化などを解説。甕は酒の醸造などにも使われたが、15世紀後半以降、結桶(おけ)の登場で食品の貯蔵を主にした用途に変わっていったという。

「県北・県南・鹿行編」は24年度に同県常陸大宮市で開かれる。

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