【作ってみた】『厨房のありす』化学×料理は相性抜群! 牡蠣のクリーミーグラタンで実践

あの映画やドラマに出てくる美味しそうな料理は、どうやったら食べられるのか。スクリーンの向こうから食欲を誘う、濃厚で魅力的なパスタや、物語の中から香り立つように登場する心温まるクリーミーなスープ。ああ、どうしても食べてみたい。でもその料理たちは、画面の中の世界でしか味わえない……。

しかし、ふと思った。もし食べられないのなら、自分で作るのはどうだろう?

そんな“エンタメグルメ”に憧れるライターのすなくじらが実際に料理を作ってみる連載「絶対食べたいグルメ」をスタート。第1回は、化学の力でお悩みを解決する、八重森ありす(門脇麦)のぬくもりを感じる料理の数々が美味しそうなドラマ『厨房のありす』(日本テレビ系)でお送りする。

■『厨房のありす』牡蠣のクリーミーグラタン

ドラマに登場するのは、ありすが店主を務める「ありすのお勝手」と名付けられた小さな食堂。ありすの口癖は「料理は化学です!」。ありすにとって化学は父親・心護(大森南朋)との大切な絆を表すものなのだろう。料理によって周囲と繋がったありすから見れば、料理は科学と同じくらい大切なものなのかもしれない。

マイペースなありすの言動からは伝わりにくいものの、ありすが作る料理には、彼女ならではの不器用な思いやりが込められている。つまり、「ありすのお勝手」で食べられる料理は、他人とうまく接することができないありすの“人を想う気持ち”が詰まった料理なのだ。食事を通して誰かを知る……『厨房のありす』の大きな魅力はそこにある。

第2話でストレスを抱えた常連客に対して、ありすが作ったのが「牡蠣のクリーミーグラタン」。「ありすのお勝手」が街の人にとってどんな場所なのかを表したこの料理を作ってみたい。

公式サイトに載っている「ありすのレシピメモ」に書かれた「牡蠣にはタウリンC2H7NO3Sが豊富に含まれています。タウリンはカテコールアミンの放出を抑え、ストレスによるダメージを軽減します」という言葉が、“超高速”で脳内再生される。(※)要するに、化学的にもリラックス効果が期待できるということなのだと思うが、こればかりは食べてみないとわからない。

今回の料理のポイントは「バターと小麦粉を炒めるときは弱火で。牛乳はルウより温度を高くする」とのこと。天才料理人が“ポイント”と言っているのだから、しっかりと温度を測って作った。

完成したグラタンが口に入ると、ふっと心が温まる味わいが広がる。ふんわり口の中に広がる、ホワイトソースの甘さがどこか懐かしい。「クリーミーグラタン」だからこそ、どろっとした重さがない軽やかな口当たりが、疲れた人にもぴったりな一品だ。

完成品がこちら。軽やかな口当たりが美味しい。

グラタンは子どもから大人まで幅広く愛される料理。きっと、やり方次第では洗練されたスタイルで提供することも可能だろう。しかし、そうではなく、家庭的な温もりを感じさせるこの料理の特徴は、まるで「ありすのお勝手」が提供する安心感と繋がっているかのよう。そこから感じ取れるのは、ただの美味しさだけではなく、日常の食事の役割を超えた、特別な安らぎだった。

エンタメの「味」は何で決まるのか。それは出演している役者や映像の美しさ、あるいは物語そのものの面白さなど、人によってさまざまだ。しかし、「料理」はレシピや分量が決まっているからこそ、「味」もさほど大きくはブレない。店では味わえない作品の“味”、そしてその料理を通して見えてくる“料理以上のもの”を、連載を通してお伝えしていきたい。

■参照
※ https://www.ntv.co.jp/alice/recipe/#02
(文=すなくじら)

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