心待ち笑顔真っ黒「すみつけ祭り」 佐伯市宇目で4年ぶり開催【大分県】

4年ぶりに開催した佐伯市の「木浦すみつけ祭り」。顔に墨を塗り合って無病息災を祈る参加者ら=10日、佐伯市宇目木浦鉱山
顔に墨を塗り合って無病息災を祈る参加者ら
地域を練り歩く荒神ら
木浦すみつけ祭りに参加して笑顔の佐藤光里記者(左)

 ダイコンの切り口に付けた墨を顔に塗り合う佐伯市宇目木浦鉱山地区の「木浦すみつけ祭り」が10日にあった。新型コロナウイルス禍などで開催は4年ぶり。心待ちにしていた住民、見物客らが大勢集まり、山里には「祝わせて」「幸せに」といったかけ声が響き、真っ黒な笑顔があふれた。

 山(さん)神社での神事に続き、地区公民館前で開会行事あった。「宇目の唄げんか」や赤い面と衣装をまとった荒神(こうじん)の舞などが披露され、号砲を合図に“すみつけ”が始まった。

 集まった人は声をかけ合いながら、無礼講で互いの顔に墨を塗り合った。逃げる子、泣く子もいたが、大きな笑いが絶えなかった。

 この後、祭りは本番へ。荒神と、大幣(おおべい)を担いだ住民らが地区内の各戸を巡り、荒神が舞を披露して無病息災と家内安全を祈った。

 銀やスズの産出で栄えた木浦鉱山を守る神に安全、無病息災を祈願する祭りで400年以上の歴史があるとされる。閉山後に中断されたが、1970年代に地元の祭り保存会が受け継ぎ、隔年で開催を続ける。

 過疎、高齢化が深刻で、2007年は中止を余儀なくされた。地区出身の若手を中心にした実行委員会方式で再開し、地域の実情に合った開催方法を模索する。今回も地区の高齢者に配慮し、メイン会場を平らな公民館前に移した。

 保存会の清家義人会長(65)は「久しぶりに開催できてうれしく思う。祭りは楽しいもの。担い手が減り、やりにくくなってはいるが、住民も来てくれた人たちも楽しめる祭り。子どもたちに伝えたい」と話した。

<記者体験>市内外から多くの人、地域を元気に

 午前11時半ごろ、花火を合図に祭りが始まった。誰彼構わず、目が合ったら「幸せになりますように」と言いながら顔に墨を塗り合う。私の顔もすぐ真っ黒になった。警備に当たる警察官や市長だって例外はない。「奇祭」と呼ばれるのもうなずける。

 初めて祭りに参加した。普段は静かな集落に、市の内外から多くの人が集まる。「こんなに楽しいのは久しぶり。生き返ったみたい」。住民の男性が興奮気味に話した一言が心に残った。

 木浦鉱山地区の高齢化率は70%を超える。担い手不足は深刻で、過去には祭りを中止したこともある。昨年夏ごろから、地区出身の若手が帰省するなどして準備を進めた。来場者に墨を配っていた米田倫明(みちあき)さん(61)は「参加者がこんなに喜んでくれる。途絶えさせるわけにはいかない」と語った。

 私が生まれ育った隣の豊後大野市三重町では昨年、夏の人気イベントが約20年で幕を下ろした。地域を元気にしてくれる祭りが長く続いてほしい―。参加して強く思った。

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