兵庫県の伝統的工芸品に指定されている手すき和紙「杉原紙」の原材料となるコウゾの川ざらし作業が、同県多可町加美区鳥羽の杉原川で本格化している。杉原紙研究所の藤田尚志所長(52)がコウゾをダイナミックに水にたたき付け、不純物を取り除く風景は、多可の冬の風物詩となっている。
杉原紙は約1300年前の奈良時代に生まれた「播磨紙」の系統を引くとされ、町内の農家が栽培したコウゾの樹皮から取りだした繊維で作られる。今年は12軒の農家から10トンを集荷し、1メートルほどに切りそろえてから釜で蒸し、黒い外皮をそぎ落とした。
黄色みがある内皮を薬剤を使わず白くするため、川の流れに一昼夜さらす。水が冷たいほどに白さが磨かれるといい、藤田所長は厳しい寒さの中、川の中でコウゾを振り続ける。
今年は暖冬の影響で工房周辺に雪が降らず、「本当は雪解け水の方が水温が低く安定するが、それでもだいぶ下がってきた」と藤田所長。昔ながらの作業風景は、写真愛好家からも人気を集める。作業は3月にピークを迎えるという。(伊田雄馬)