あいまいな旅行記 ロマンスカーを奮発してよかった 箱根から平塚へ

普段は付き合ってくれない中2の次女が、軽いコロナで6日間家から出られなかったタイミングで「自由に出かけられるのは、ありがたいだろ」と誘ったのがうまくいって、週末、2人で箱根観光とサッカー観戦に出かけた。

一人なら普通電車だけど、新宿から小田急ロマンスカーを奮発した。旅のスタートとしては、やはり気分があがる。次女はずっと車窓を見ているから、気に入ったようだ。ここは得点。ただ、箱根登山鉄道のスイッチバックには、まったく興味を示さなかった。電車の走る向きが変わるのなんて、どうでもいいらしい。加点はなかった。

ロマンスカーで箱根湯本に着いた

ロマンスカーという名称は、外国人にはどのように受け止められるんだろう。日本人に向けては「恋愛車両」というアプローチだろうか。かつて、箱根は新婚旅行のメッカだった時代があった。向かい合わせの4人ボックスシートじゃなく、2人シートがロマンスを想起させるんだろうか。

スキー場の2人乗りリストは、昔、ロマンスリフトと呼ばれていた。今では死語だろうか。上信越自動車道妙高SAに「免許第一号のスキーリフト」が展示されているのを見たことがある。2人乗りのリフト搬器で、実際にロマンスが生まれ、お礼の手紙が届いたりしたそうだ。

今までで一番すごかったうんち

この日のメインのイベントは午後7時開始の平塚でのサッカー観戦だけど、せっかくだから丸1日のツアーにしようと、鎌倉や江ノ島周辺なども吟味した上で、箱根彫刻の森美術館を昼の目的地に決めた。次女を連れて行くのは久しぶりだ。

個人的に今回の旅行では、もう少しスマホに慣れようというテーマもあって、サッカーチケット、ロマンスカーの指定席、美術館の入園券を全部事前にオンラインで購入した。お陰で美術館の入館料は大人が100円引き、週末は中学生が無料だと知って得をした。それに列ができていたチケット売り場に並ばずにすんだ。

箱根彫刻の森美術館では、tupera tupera (ツペラツペラ)著の「しつもんブック100」に答えながら美術館をめぐるイベントが開かれているのを知っていて、これも次女とのコミュニケーション手段として面白そうだと思っていた。園内の屋外展示場やイベントスペース、レストランなどに質問ボードが立っていて、「好きな色はなに」「おべんとうにはいっていたらうれしいものは」など書かれている。これらに答えながら、「そうなんだ」とお互いを発見して盛り上がろうという趣向だ。

ところが真っ先に見つけた質問が、「魔法が使えたら何をする」で困った。「空を飛ぶとか透明人間になるとかって言いたいけど、大人としては、今は全ての戦争を終わらせるになっちゃうかな」と答えると、次女は「私もすべての病気を治すかな」「すべての虐待されている子供たちを救うとか」と、重たい会話のスタートになってしまった。

でもすぐに調子を取り戻せたのは、「今までで一番すごかったうんちはどんなうんち」の質問のお陰。なにも思い浮かばなくて「最近、うんちがやわらかいだよ、年かな」と、こちらの健康相談話に対して、次女は「1回で流れなかった大きいうんち。流れなかったんだよ」と笑いながら告白していた。洋式で流れないうんちって、どんなうんちだよ。

作品名当てゲームでパーフェクト出る

作品名はなんでしょう

美術館では、もう1つ準備していた楽しみ方がある。これはいつもやっていて、作品を見て、そのタイトルを当てる遊び。台座の作品名を見ないようにして、作品からタイトルを当てる。これは難しいし、1つ1つやっていくととても時間がかかる。作品からは想像できないタイトルが多いからこそ、成り立つ遊びだ。

例えば「時空のゆがみ」とか、「焦点の拡散」「平和の祈り」「X軸の妄想」とか、彫刻からは想像できない、訳の分からないタイトルが多い。だから、ほとんど当たらない。ところが今回、次女がタイトルを完璧に当てた。それは鶏を抱いている女の像で、こちらは「鶏をつかまえた女」、次女の「鶏を抱く女」がタイトルそのままで、この時は2人で盛り上がった。このゲームではピタリ賞なんて、本当に出ないんだから。

ステンドグラスの塔

ステンドグラスの塔に上り、それからネットの森を見学した。吊るされたネットの部屋に子どもは入ることができる。4歳くらいだった長女がネットの穴から潜り込んで行ったときは、戻って来られるかドキドキしたのが懐かしい。中学生の次女でも、もうネットの部屋に入れない。

ピカソ館には長い時間いた。ピカソの絵は面白い。どんな絵だったかはすぐに忘れてしまうから、いつも新鮮で、次に行ったときもきっと長居する。ピカソがどんな風に絵を描いたかを紹介するビデオがあって、画用紙の端からとか、上から下へとかじゃなくて、あちらこちらに好きに描いた絵が、やがて1つの絵になっていく様子に驚いた。絵は、どこから描き始めてもいいんだ。たぶん、いろんなものがそうなんだ。

箱根彫刻の森美術館の英語名はTHE HAKONE OPEN-AIR MUSEUMなのです

ネットの森

ケーキとビール、ランチとビールも含めて、箱根彫刻の森美術館には半日はいた。箱根に行く外国人旅行者は多くて、東京で箱根のお勧めの場所を聞かれると、大涌谷や芦ノ湖と一緒に箱根彫刻の森美術館を勧める。

英語でなんて言うんだろう、箱根スカルプチャー・ミュージアムだろうかと調べたら、箱根オープン・エア・ミュージアムだった。確かに野外博物館だけど、施設名に彫刻は入ってないんだ。外国人には彫刻美術館より野外美術館の方が刺さるということなんだろう。直訳にこだわらないネーミングが参考になる。

時間が余れば強羅までハイキングして箱根強羅公園に行くプランも用意していたけど、それほどの時間は余っていなかった。登山電車で箱根湯本まで降りて、駅前商店街をぶらついた。このエリアを代表するお土産の1つは練り物で、昔は鈴廣かまぼこしか知らなかったのが、数年前、近所の人から籠清の練り物をいただいて以来、箱根や小田原のお土産は籠清にしている。夕食はスタジアムで籠清とスタグルを食べることにして、多めに籠清を買って、店のイートインで早川を眺めながら籠清をつまみにビールを飲んだ。

箱根湯本駅から平塚駅までは電車で40分ほど。駅からスタジアムまではシャトルバスで10分ほどだった。今日はビジターとして観戦する。長女は関心を持たなかったけど、次女は一応、親と同じチームを応援するように育ってくれた。スタジアムで物心つかない小さな子どもが、ユニフォームを着せられて観戦しているのを見ると、次女は「決まったな」と、自分と同じように、ほかに選択肢の持ちようがなく、親が推すチームのファンになる宿命を笑って見ている。

この日の試合はドローで、内容も結果も冴えなかった。でも次女との箱根-平塚旅行は楽しかった。次回につながる得点を決められたんじゃないだろうか。

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