シェイクスピアの“庭”も…技術駆使、来場者らの声生かし改装 彩の国さいたま芸術劇場で内覧会

大ホールでは、照明やセットをつるす舞台装置を、音楽に合わせて動かすデモンストレーションが行われた=8日午後、彩の国さいたま芸術劇場

 3月1日にリニューアルオープンする彩の国さいたま芸術劇場(埼玉県さいたま市中央区)で8日、市民向け内覧会が行われ、約3千人が訪れた。1994年10月に開館した同劇場は老朽化が進み、2022年10月から1年5カ月かけて天井の耐震改修やバリアフリー化などの工事を実施。県によると、改修費の予算は約84億円。この日は見学のほか、工事の解説や演奏などのデモンストレーションもあり、来場者らは「すごい」と劇場を楽しんでいた。

 東日本大震災の際は大型施設で天井の落下が発生したことから、今回の改修では、危険性が指摘されている「つり天井」を撤去。大ホール、音楽ホール、小ホールなど5カ所の天井を、建物の鉄骨と一体化し、耐震性を高めた。ただ張り替えるのではなく、舞台芸術の命である「音響」を保つため、3Dスキャン技術で改修前の天井を計測し、形状を正確に再現するという難しい工事を行った。

 大ホールをはじめ、三つのホールの客席椅子を更新。座面を2センチ高くするなど疲れにくい客席に変更した。「音楽ホールにエレベーターを新設」「ステージが見えやすい2階席」「車椅子対応エリアの増設」―など来場者から集めたアンケートを生かした部分も多い。そのほかに戯曲にちなんだ花やハーブを栽培する「彩の国シェイクスピア・ガーデン」、県内食材を利用したカフェ、子どもの遊び場など新たに三つのスポットができた。

 同劇場の名物劇「彩の国シェイクスピア・シリーズ」のファンだという蓮田市の遠藤妙子さん(62)は「椅子がすごく座りやすくなった。響きもいい」とにっこり。同劇場を運営する県芸術文化振興財団の加藤容一理事長は「より安心安全で快適性を高める工事を行った。進化した劇場にぜひ来てほしい」と話した。

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