小澤さんに涙、感謝 水戸芸術館で献花 茨城

小澤征爾さんの笑顔の写真が飾られた献花台を訪れ、別れを惜しむ女性=10日午後、水戸芸術館

世界的指揮者として活躍し、多くの音楽家の尊敬を集めてきた小澤征爾さんの訃報を受け、茨城県水戸市五軒町の水戸芸術館に10日、献花台が設けられた。水戸に豊かな芸術文化をもたらし、音楽の魅力を伝え続けた功績や親しみある人柄をしのび、来館者たちは「世界のオザワ」との別れを惜しんだ。

献花台は同館1階のコンサートホールATM入り口前に設置され、穏やかな笑顔を浮かべる写真が掲げられた。来館者は持参した花束を供えて手を合わせ、黙とうした。

1990年の開館当初から水戸室内管弦楽団(MCO)の音楽顧問を務め、2013年からは2代目館長も務めた。

長年にわたり同館友の会運営委員を務め、交流があった水戸市の西連寺節子さん(73)はこの日、献花台にある写真を見つめ、静かに大輪のユリの花束を供えた。

西連寺さんによると、友の会会員と楽団員との交流会が行われた際、仲間と手作りしたコサージュをプレゼントした。小澤さんは楽団員に呼びかけ、翌日の演奏会で全員がコサージュを身に着けて舞台に登場。西連寺さんや仲間たちは驚き、喜びを分かち合ったという。

何度もコンサートに訪れたという同市の女性は「もう一度水戸に来て演奏が聴けると希望を持っていた。かなわず残念だ」と声を震わせた。同県那珂市の女性は「直接演奏を聴く機会が失われ、もう想像するしかできない。まだまだ活躍してほしかった」と沈痛な面持ちで話した。

副館長の大津良夫さん(68)は「芸術、音楽が生活の身近にあるよう尽力し、形にしてくれた。これからもその遺志を継承していく」と力を込めた。

小澤さんは「子どものための音楽会」や楽団員によるセミナーなどを積極的に実施し、水戸市をはじめとする多くの県民に芸術活動の魅力を伝え、若手育成に尽力してきた。

同館の各種事業を運営する市芸術振興財団は同日、「これまでの小澤館長の長きのご貢献に改めて感謝申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りいたします」などのコメントをホームページで発表した。

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