新木優子は“報われない恋愛”で輝く 『さよならマエストロ』西島秀俊との関係も脈ナシ?

TBS日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』で、オーケストラの和を乱す“魔性のフルート奏者”倉科瑠李を好演している新木優子。フルートの腕は確かだが、恋愛絡みで事件を起こしてばかりの瑠李は、数多のオケをクビになってきた。狙った獲物は決して逃がさない、通称“カルメン”の彼女は、マエストロの夏目俊平(西島秀俊)と出会い、現在は俊平をターゲットにしている。

「晴見フィルハーモニー」から何度もスカウトされたのに、断り続けていた瑠李だが、俊平に誘われたことで晴見フィルに参加。ところが、俊平は鈍感で、全く自分になびきそうもない。それでも、瑠璃は彼の心を射止めようと燃えている。そんな俊平は、妻の志帆(石田ゆり子)から愛想を尽かされ、離婚を切り出されており、第5話では瑠李との関係を娘の響(芦田愛菜)に勘違いされ、響は家出してしまう。

周囲を引っかき回す瑠李をチャーミングに演じている新木。“カルメン”と呼ばれる瑠李に扮している彼女は劇中、オペラ「カルメン」の主要曲「ハバネラ」を披露するシーンも。本作では既婚者である俊平に惹かれている役だが、過去の出演作『単身花日』(テレビ朝日系)や『六本木クラス』(テレビ朝日系)を振り返ってみても、新木は主人公にアプローチするも報われない役が、なぜかハマる印象だ。

『単身花日』では、初恋の相手・舜(重岡大毅)と17年ぶりに再会し、彼の心を激しくかき乱して翻弄する既婚者のヒロイン・花を演じた新木。舜には妻のゆり子(高梨臨)がいるが、花は単身赴任中の舜と急接近し、彼の部屋で同棲生活まで始めてしまう。

舜は、中学時代からのライバル・片山(田中樹)を、花の不倫相手だと疑ったこともあり、『単身花日』は花をめぐって、舜、片山、ゆり子の四角関係が繰り広げられるスキャンダラスなドラマに見えた。だが、実は非常に複雑な物語だということが、エピソードが進むうちに分かってくる仕掛けになっていた。

花は舜と暮らしても、ずっとプラトニックな関係を続けており、ゆり子との生活を壊す気はなかった。片山も花のことを妹として見守っているという関係で、不倫などではなかった。でも、花と舜の関係は決して未来があるものではなく、本作でも新木が演じたのは、愛に報われないヒロインだった。

『六本木クラス』で新木が演じたヒロイン・優香(新木優子)は、主人公・新(竹内涼真)の同級生で初恋の相手。幼少期に親に捨てられ、「長屋ホールディングス」が資金援助する児童養護施設で育った優香は、自分を支援してくれる長屋に恩義を感じているが、新は長屋と敵対関係にあった。本当は優香も新が好きだったが、長屋への恩と、新への想いの間で気持ちが揺さぶられ、ジレンマを感じていたため、新の純粋な気持ちを長い間受け入れられずにいた。

そんな中、新に積極的に想いをぶつける葵(平手友梨奈)が現れ、やがて新も葵に惹かれていく。本作でも、新木は主人公をどんなに想っていても報われないヒロインを切なく演じていたが、どの作品でもそんなヒロインに扮する新木は輝いて見える。決して可哀想だとは感じさせず、きっとここから強くなっていくのだろうと思える輝きが、新木にはあるのだと思う。

『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』の企画プロデュースを務める東仲恵吾は、新木について「力強さと可憐さを持った素敵な目と笑顔になったときのチャーミングさのギャップが魅力的」だと語り、「瑠李という役の、魔性の女性でありながらその奥に抱えた“複雑な想い”を見事に演じてくれると思ってオファーした」とコメントしている(※)。今回も、恐らく瑠李の俊平へのアプローチは報われないと思うけれど、複雑な想いを秘めた瑠李に扮する新木の好演を、最終回まで見届けたい。

参照
※ https://realsound.jp/movie/2023/12/post-1508346.html

(文=清水久美子)

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