【漫画】私にはどうせ無理……“なりたい自分”を諦めた女子大生、なぜ前を向けた? SNS漫画『私の声をきいて』

何気ない言葉が呪いになり、自分らしく生きることができずに苦しんでいる人は少なくない。1月中旬にXに投稿されたオリジナル漫画『私の声をきいて』では、「周囲の声」ではなく「自分の声」に耳を傾けることで、成長していく女子大生の姿が描かれた作品だ。

女子大生の唯は常に周囲の視線を気にしてばかり。本当は派手なカッコ良いビジュアルに挑戦してみたいのに、何かと無難な選択ばかりをしてしまう。そんな自分が嫌で、一大決心して下北沢のアパレルショップを訪れると、そこはインフルエンサーの凪が働く店だった。憧れの凪を前に動揺する唯は、結局何も買えずにその場を去ってしまう――。

本作を手掛けたのは、趣味から始まり、現在は賞レース向けの作品を本格的に制作しているという五日一日さん(@itsukaiu)。SNSの普及などもあって簡単に他人の声に触れられる今だからこそ読みたい本作を手がけた経緯など、話を聞いた。(望月悠木)

■ビジュアルへのこだわり

――『私の声をきいて』は“周囲の目を気にして自分の好きなことを表現できない女性の成長物語”でした。ストーリーはどのようにして決めましたか?

五日一日:本作は実話では全くないのですが、自分の経験、さらには昨今の監視し合うような空気感から着想を得ました。自分も唯と同じ年齢だった時、派手な髪色とボーイッシュな服装に憧れがあったのですが、「自分なんかが……」と思って怖くなって挑戦できなかった時期があります。

――ご自身は、憧れのファッションを諦めたのでしょうか?

五日一日:いえ、最終的には思い切って好きなファッションを楽しめました。当時覚えた「意外と周りは受け入れてくれるんだ!」「たとえ何かを言われても私が選んだ今好きな自分はこれ!」という感覚を今でも大事にしており、そういった経験や感覚をベースにストーリーを練り上げました。

――ビジュアルが大きなカギとなる本作ですが、登場人物のデザインでこだわったことは?

五日一日:唯については、自分自身のファッションに納得していないため、「無難なモブの友人Aみたいな子にしよう」と思って作りました。イメチェン後は、私があのような中性的なキャラを描くことが好きなので「思い切り好きなように描こう」と思ってデザインしました。凪はインスタでカッコ良い人や可愛い人をたくさん検索して「こういう感じかも」と自分なりに好きな雰囲気を思い浮かべながら作りました。ちなみにほくろがチャームポイントです。麻里の見た目は最近の女の子をイメージしています。中身は自分の親友を思い浮かべながら描いたのですが、全然違う性格になりました。

■唯を喫煙者にした狙い

――他人からの悪意のない何気ない言葉により、無難を好むようになった唯の気持ちに共感できました。五日一日さんも実際唯のような経験をしたのですか?

五日一日:私も子供時代にショートカットにしたのですが、唯とは真逆で友達から大絶賛されました。この経験から短めの髪型も好きになったのですが、「真逆の反応だったら、私はもうショートにはしなかったのだろうな」とふと思い、唯がボーイッシュにして周囲から否定される過去を描きました。

――唯と凪が向かい合って座るシーンがありましたが、その際に2人で喫煙させた狙いを教えてください。

五日一日:個人的には煙草を吸っている人同士だからこその繋がりが存在すると考えています。加えて、“実は唯が煙草を吸っている”ということは、「今まで無難な選択しかしていなかった唯の意外な一面になるかな」と思って喫煙者にしました。作中では描かれていませんが、「麻里とは大学の喫煙所でよく一緒になるから仲良くなったのかな」と想像しています。

――SNSで簡単に他人の声に触れられる昨今だからこそ、勇気をもらえるストーリーでした。

五日一日:自分の選びたいことを自分の声を無視しないで選ぶことは、自分を大切にすることと思っています。「何かをやりたいけどできない」と考えている人の背中を少し押すような漫画になっていれば嬉しいです。

――最後に今後の目標など聞かせていただければ。

五日一日:今はデビューを目指して修行中です。どんどん漫画を描いてレベルアップしていきたいと思っています。人の心に寄り添うような、「ここにも仲間がいるんだよ」と隣にいられるような漫画を描いていきたいです。お知らせは私のXで発信していくのでよろしくお願いします。

(取材・文=望月悠木)

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