『オッペンハイマー』ケネス・ブラナー新場面写真 オビ=ワン・ケノービのような存在に?

3月29日に全国公開されるクリストファー・ノーラン監督最新作『オッペンハイマー』より、ケネス・ブラナーのコメントと新場面写真が公開された。

本作は、第二次世界大戦下、世界の運命を握ったアメリカの理論物理学者オッペンハイマーを描いた実話に基づく物語。原子爆弾の開発・製造を目的とした「マンハッタン計画」の最高責任者である陸軍のレズリー・クローヴス(マット・デイモン)から極秘プロジェクトへの参加を打診され、その研究施設であるロスアラモス国立研究所の所長を務めたオッペンハイマー(キリアン・マーフィー)。マンハッタン計画を遂行した後、原爆投下による惨状を知り、その破壊力に対して苦悩することになる。

オッペンハイマーを演じたキリアン・マーフィーをはじめ、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピューらがキャストに名を連ねた。第96回アカデミー賞では、作品賞、監督賞をはじめ、最多13部門にノミネートされている。

『ダンケルク』『TENET テネット』などノーラン作品の常連でもあるブラナーは、量子論を展開したデンマークの理論物理学者で、オッペンハイマーがケンブリッジ大学で出会い師となるニールス・ボーアを演じている。1922年のノーベル物理学賞受賞者であるボーアは、核の構造に関する研究と、量子力学に関する有名な「コペンハーゲン解釈」によって、オッペンハイマーと彼の世代の科学者に崇拝されていた。

ノーランによって、オッペンハイマーに対して絶大な影響力を持つボーア役を託されたブラナーは、「ニールス・ボーアは偉大な科学者で、ノーベル賞受賞者、古典物理学から量子力学への転換の立役者の一人であり、量子力学がもたらした知識によって、世界は原爆や核エネルギーに向かって進み、それらに伴うもろもろの結果を生み出した。彼に関してはいろんな資料があった。彼の声を聴くことができたし、彼の姿を見ることができた。彼に関する本も山ほどあった。私が見つけたボーアのエピソードか一番役に立った」と振り返り、「彼はアインシュタインに匹敵する特別な知能の持ち主であり、普通の人間だった。時には道に迷うことがあったかもしれないが、その頭の働きは、カミソリのように鋭かった」と、聡明な思考回路を持った学者だったと分析する。

ノーランとのやりとりの中で「ボーアは本当に重要な人物。オッペンハイマーにとって彼はオビ=ワン・ケノービのようなものだと、クリスは考えていた。そういう理解で進めるのは役に立った。ボーアはある意味魔術師で、オッペンハイマー以上にものを知っている。しかしボーアの方でもオッペンハイマーを、原爆を世界にもたらす人物として評価している。オッペンハイマーであれば、科学を理解するとともに、その後に起こる試練や苦難に耐えられるだろうと直感していたんだ」と語っている。

さらに、ノーランとの仕事についてブラナーは「正しい道にいるとこれほど自然に自信を持っていられる映画作家と一緒にいるのはスリリングだね。彼は仕事に対しては類まれな道徳観念をもって戦いの先頭に立つ。彼は常に楽し気で、鋭いユーモアのセンスがあり、思いやりがあり、俳優の話を聞く。一緒に仕事をするものとして素晴らしく、リーダーとしては天性の懐の大きさを持っている。彼のような人物を見て、彼を支えることができるのは、素晴らしい経験だ 」と語り、三度目となるノーランとの仕事を心から楽しんことを明かしている。

新たに公開された場面写真は、そんなブラナーが演じるニールス・ボーアの姿を切り取ったもの。若き日のオッペンハイマーは、イギリスのケンブリッジ大学で物理の研究をしていた。場面写真は、ボーアの講演の翌日、大学の研究室でボーアに会ったオッペンハイマーの視点で捉えられている。右手に青リンゴを手にしたボーア、その隣には大学教授の姿が。この時、実験が得意ではないオッペンハイマーに「君は理論物理学に専念すべきだ。ドイツのゲッティンゲン大学のマックス・ボルン教授に学ぶべきだ」と助言し、その後の人生を大きく変えることになる。

(文=リアルサウンド編集部)

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