客が選んだ“器”に料理を盛りつけ 地元の窯元とタッグ「ごはん×ものづくり」注目の新店 沖縄からIターンした女性の思いとは?

1月31日、島根県松江市に古民家を改装したユニークな店舗がオープンしました。店の名前は「&(アンド)」。
中心となったのは、松江市の地域おこし協力隊を女性メンバーです。

「じゃあ、オープンいたします。オープンです!」

1月31日午前11時。松江市灘町の住宅街に新たな店がオープンしました。
築50年を超える古民家を改装した「キッチン×スペース『&』」。
松江市の地域おこし協力隊・岸本廣美さんを中心に、4人の料理人が料理を提供します。

松江市地域おこし協力隊 岸本廣美さん
「器を、お客様ご自身で選んでいただきます。『こういう方が、この選び方をするんだ!』という面白い発見につながりました」

「&」は、店内にある器を自分で選んで、それに注文した料理が盛り付けられるというちょっと変わったシステムの店です。

オープン日からさかのぼること1か月半前。
この場所は、まだ殺風景な古い家でした。

「この部分って、1階で外だったんです、奥にトイレがある感じだったの。」

この日、変わっていく店の過程を市民にもみてもらおうと、内覧会が開かれていました。

古民家ならではの急な勾配の階段で、2階に上がってみると、破りかけの障子がまだそのままになっていました。

こんな古民家を舞台にしたプロジェクトが始まったのは、去年6月のこと。
その主役が、岸本さんです。

松江市地域おこし協力隊 岸本廣美さん
「私、沖縄出身なので、日本の家が珍しいんです。コンパクトな2階建てで、階段が急でっていう。」

沖縄県出身の岸本廣美さん。
2022年4月から、松江市の地域おこし協力隊として活動しています。

松江市地域おこし協力隊 岸本廣美さん
Q.松江市に来た理由は?
「四季を感じたかったのが一番、大きいです。沖縄はすごく温暖で、四季の変わり目がないので。
調べてみればみるほど、松江がすごく、日本を"ぎゅーっと"したようなところだと思ったんです。」

岸本さんは、松江市で「工芸の魅力発信と担い手育成事業」というミッションを担いました。その中で、松江市内にあるいくつもの窯元の“器”に触れ、その魅力に惹かれていったそうです。

松江市地域おこし協力隊 岸本廣美さん
「表情が皆さん、違う。持った感じも、器から"気持ち"をすごく感じるんです」

松江の器とともに、おいしい料理が楽しめる場所。
そんなアイデアを、岸本さんは思い付きます。
岸本さん、実は地域おこし協力隊でありながら、料理人でもあるんです。

出身地・沖縄県で地元料理の店をしていた経験もある岸本さん。
地域おこし協力隊とは別に、月に1回程度、市内のチャレンジ応援施設で「ちむどんどん」という沖縄料理の店を開いています。
一緒に厨房に立つ男性は、出雲市出身の仲田悠生さん。
同じ松江市の地域おこし協力隊で出会った2人は、去年11月に結婚しました。
仲田さんも、洋食の料理人として働いた経験を持ちます。

松江市地域おこし協力隊 岸本廣美さん
「"あうんの呼吸"までは全然、全然、まだ遠いけど、彼の存在が本当に心の支えです。」

松江市地域おこし協力隊 仲田悠生さん
「彼女はしっかりしてる感じだけど、作る料理の味わいは優しいので。芯は優しい人なんだな、と感じています。」

岸本さんの熱意と魅力に惹かれ、プロジェクトには続々と仲間が集まりました。

&の調理スタッフ・飛田さんもそのひとり。
オープンを5日後に控えたこの日は、ランチメニューの試作が行われていました。

飛田さんが作った料理を、松江の窯元の器に盛りつけていきます。

ジャンルが違う料理人。
盛り付けは、それぞれ。
そして、器の形も違う。
これも、&の魅力のひとつです。

松江市地域おこし協力隊 岸本廣美さん
「皆さん各々、意見を言ってくれて、『こういう使い方あるよね』とか。肯定的に会話ができるので、すごく励みになります。
私は沖縄出身だけど、ほかの料理人3人は島根出身。皆さん、松江にゆかりがあるので、そういう方がどんどん『松江いいでしょ』と言ってもらえる環境にしたいです」

そして、迎えたオープン初日。
仲間たちと一緒につくり上げたキッチン・スペース「&」が、いよいよ始動しました。

松江市地域おこし協力隊 岸本廣美さん
「ほっとしてる。バタバタだけどほっとしてます。
皆さんが『&』を調理して、コーディネートして、ひとつの空間を作っていただけたら嬉しいです」

「&」は、岸本さんにとってまさに“器”。
この器に、どんなメニューが盛り付けられていくのか、これからの展開が楽しみです。

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