自民党「不戦敗」説も出る4月補選で現実味帯びる「岸田下ろし」キーパーソンは「恨み相当なもの」の麻生&二階コンビ

自民党両院議員総会に臨む(右から)岸田文雄首相(同党総裁)、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長(写真・時事通信)

4月28日、衆議院の補欠選挙が3選挙区で実施される。

派閥の裏金事件で起訴され議員辞職、1月26日付で罰金100万円、公民権停止3年の略式命令を受けた谷川弥一氏の長崎3区、東京都江東区長選をめぐる公職選挙法違反事件で起訴され、議員辞職をした柿沢未途被告の東京15区、そして、亡くなった細田博之前衆院議長の島根1区だ。

「どの選挙区も、争点が『政治とカネ』になりますから、自民党には大逆風。全敗もありえます。長崎は『10増10減』の対象選挙区で、次回の衆院選は選挙区定数が1減になり、補選で勝利してもほかの現職議員との調整が必要になることから、ある自民党幹部は『あえて候補者を出す必要はないのでは』とも言います。

東京15区も、茂木敏充幹事長は『(候補者を)擁立しないことはありえない』としていますが、人選は難航しています。この両選挙区では『不戦敗』が真実味を増しています」(政治担当記者)

島根1区は新人候補を擁立。細田前衆院議長の「弔い選挙」になるので有利なはずだが、細田氏は、裏金事件の舞台となった清和政策研究会(安倍派)の会長を長く務めていたため、影響は必至だ。保守王国とはいえ、安穏とできる状況ではない。

「補選の結果次第では、9月に控えた自民党総裁選にも影響があります。岸田文雄首相は再選を狙いますが、2025年夏には参院選が控えています。議員心理としては『岸田首相で大丈夫なのか?』となり『岸田下ろし』が本格化する可能性があります」(同前)

2021年、衆参の3補選で自民党は不戦敗を含めて全敗。菅義偉(よしひで)首相(当時)が総裁選不出馬に追い込まれた前例がある。

岸田首相に弓を引くのは誰なのか。永田町では「麻生太郎副総裁と二階俊博元幹事長だ」と言われている。2人とも岸田首相には「腹立たしい気持ちがあふれている」(自民党関係者)のだという。

「岸田首相は、政調会長だった2020年6月、ベテラン議員から党の衆院比例区の73歳定年制を見直す要望が出され、当時の二階幹事長も記者会見で『上限の年齢をとやかく言うべきではない』と牽制していたのですが『小選挙区なら誰でも立候補できます』と見直し要望を一蹴したのです。

また、総裁選に出馬した2021年には『党役員は1期1年、連続3期まで』と表明。幹事長歴が5年になる二階氏が念頭にありました。二階氏がこの沙汰に激怒したことは言うまでもありません」(週刊誌記者)

政治アナリストの伊藤惇夫氏も、本誌の取材に「二階氏は岸田氏に『蹴落とされた』と思っていて、その恨みは相当なものです。政局になったら、もうひと暴れする気落ちでいるはずです」と言う。

麻生氏も、岸田首相にメンツをつぶされたひとりだ。岸田首相は、裏金作りの温床となった派閥問題を議論する「政治刷新本部」の結論が出る前に、自ら宏池会(岸田派)の解散を発表。麻生氏にとっては寝耳に水で、茂木幹事長とともに「三頭政治」で岸田政権を支えてきた麻生氏は「聞いてねえぞ。岸田はなんで俺に言ってこないんだ」と激怒したという。

「その遺恨は、いまも解消されていません。麻生氏も茂木氏も派閥を維持したままですから、世間からは改革に後ろ向きな『守旧派』のように見られてしまっています」(永田町関係者)

補選後は、一気に政局になる可能性もある。

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