【大人気YouTuber理央奈ちゃん】手術中に下半身がまひ。5歳の娘に事実を伝えるまでの母の葛藤。「自分の体のことは知る権利がある」

手術後、入院中の様子です。

人気YouTuberのちいりおちゃんこと理央奈ちゃんは、母親の佳寿美さん(35歳)、父親の裕一さん(36歳)、兄の湊人くん(9歳)の4人家族です。
理央奈ちゃんは2歳半で背骨が左右に曲がってしまう側弯症(そくわんしょう)という病気の症状が現れます。背骨を少しでもまっすぐにする手術を受けますが、胸から下にまひが残ってしまうことに。全3回のインタビューの2回目です。

【大人気YouTuber理央奈ちゃん・6歳】低身長症や側弯症などの病気を抱えても「人間の価値は身長で決まらない」という医師の言葉が支えに

2歳半くらいで右の肩甲骨に小さなこぶが現れ、側弯症と診断

背骨のCTスキャン画像。背骨が横にも後ろにもねじれ、神経も曲がっています。

――理央奈ちゃんに側弯症の症状が現れたのはいつごろだったのでしょうか?

佳寿美さん(以下敬称略) 2歳半のとき、背骨のこぶのようなカーブを見つけました。あわてて受診したところ、側弯症と診断されました。その後、1年ごとに受診していましたが、4歳半のとき、急激な進行が発覚し、手術が必要と診断されました。
通常、側弯症の手術は曲がった背筋をまっすぐに固定するのが一般的なようです。ただ、その手術を受けると身長が伸びなくなるため、多くの場合、思春期を過ぎてから手術を受けると聞きました。

でも理央奈は低年齢で発症し、症状も重かったので5歳2カ月で手術せざるを得ませんでした。

――当時、どんな症状が出ていたのでしょうか?

佳寿美 4歳半のころは背骨が曲がることで肺が圧迫されてしまっていて、しゃべるときも歩くときも息切れするような状態でした。「ハアハア」いっている感じでした。

側弯症の手術を受けると身長が伸びなくなると聞いていたので心配していました。でも、背骨の成長を温存しながらカーブを矯正する方法があるとのことで、その手術を受けることにしました。

手術中、まひの兆候が出てしまい中断

側弯症の症状が出始めた2歳半のころ。

――手術はどのようなものだったのでしょうか?

佳寿美 脊髄の神経の状態をていねいに観察しながら、曲がってしまった脊椎を少しでも戻しつつ、身長が伸びることが期待できるプレートのようなものを脊椎に添え木のように添わせる手術だと理解しました。
その手術を受けたのが、2022年の5月、理央奈が5歳2カ月のときでした。
希望すれば手術の様子をモニターで見ることができるということで、私たち夫婦は、手術の様子を別室で見ていたんです。モニターには、手術している部分だけがクローズアップして映されていました。娘の体にメスが入るのはとってもショックでもあり、つらくてつらくて涙があふれてきたことを覚えています。

手術が始まって1時間くらいしたら、「主治医からお話があります」と呼び出されたんです。どうしたのかと思ったら、手術着のままの主治医から「手術中にまひが起きていないか頭から微弱な電気を流してモニタリングをしながら行っていましたが、信号が消えました。まひの兆候が出たため、これ以上手術を続けられません。手術を中止して術野を閉じます」と伝えられました。

――とてもショックだったと思います

佳寿美 「まひするってどういうこと?」と、何が起きたのかも理解できず混乱しました。痛い思いをして手術をしたのに、娘の人生が閉ざされたようで絶望しました。娘にも家族にも申し訳なくて、自分を責めました。
理央奈の脊椎は曲がりがひどく、かなり難しい手術だったとのこと。

医師からは「手術によって神経はショックを受けているので、最初の手術から1カ月くらい間をあけたらその間に神経も回復するはず。だから、その後2回目の手術をしましょう」と伝えられました。
でも、術後1週間くらい経って「神経の回復がよくない」と言われました。そこで最初の手術から2週間後には2回目の手術が決まったんです。

――2回目の手術を受けられるとわかったとき、どんな気持ちでしたか?

佳寿美 2回目の手術が受けられることにまず喜びました。側弯症を改善し、身長が伸びるためのプレートのようなものを入れるはずだった手術のどちらもできていなかったので、このままだと側弯症が進行し、肺や心臓を圧迫し、命すら救えなくなるのではないかと心配していました。

理央奈は気道が狭いため、手術のために気管挿管をすると、抜くときに刺激でむくんで気道が閉塞してしまうらしいんです。抜管をするときはかなり慎重に対応し、1回目の手術から1週間くらいは麻酔薬でずっと眠っていました。だから理央奈からすると、目を覚ましてみたら1週間後には再手術が決まっていた状態だったのです。

まひが残ることを本人に告げるべきか葛藤・・・

入院中、笑顔を浮かべている理央奈ちゃん。

――1回目の手術後、まひのことを理央奈ちゃんに伝えたのでしょうか?

佳寿美 本人に告げたほうがいいのかどうか、どのように伝えるかということはとても悩みました。
でも2回目の術後には激しい痛みがあるという説明もありましたし、そのような手術を黙って受けさせるのは、理央奈の尊厳を無視しているような気がしました。

本人の体のことなので、知る権利があると感じたし、黙っていても近いうちわかってしまうとも思いました。それだったら、理央奈がきちんと受け入れられるよう、私の口から伝えることにしました。

――理央奈ちゃんはどんな様子でしたか?

佳寿美 「よくなるために2回目の手術を受けようね」とできるだけポジティブに伝えたつもりでしたが、やっぱり取り乱して泣いていました。「一生このままなんでしょう!?」とも。手術が終わったら、呼吸が苦しいのも治って身長も伸びるかもしれない、と思っていたのに、目が覚めたら次の手術の説明です、理央奈がそう感じるのも、思うのも無理はないなと思いました。でも、本人もそれしか方法がないと理解し、次の手術を頑張ろうと決心しました。
「今できることを一緒に頑張ろう」と伝えました。

もともと理央奈は、自分が身長の伸びない病気だということは理解していたんです。幼稚園のお友だちの中でも自分だけ小さくて、「いつ背が伸びるの?」と感じていました。4~5歳くらいで「大人になったらどうなるのか」とか「ちゃんと働けるのか」という心配もしている子でした。

――2回目の手術はどのようなものだったのでしょうか?

佳寿美 2回目の手術は、脊髄を圧迫している骨を取ることと、背骨の曲がりを矯正することが目的でした。4~5時間の手術でした。この手術で背骨の矯正はできましたが、身長は伸びなくなる術式に変更となりました。神経が回復しやすい状況を作ると言われていたのですが、それには何年もかけて経過をみないといけません。結果として今はまだ神経の回復が見られない状態です。
そのため、まだ胸から下のまひは残っています。

実は2回目の手術が終了したその日の夜、「理央奈が心肺停止におちいった」と医師から報告を受けたんです。そのときはすぐに心臓マッサージを受けて回復したそうですが、その話を聞いたときはこちらの心臓が止まりそうでした。
このことがきっかけで、胸から下がまひしていてもいいから命だけはつないでほしい、生きていてほしいと心から願うようになりました。

とはいっても、理央奈のまひした体を見るのはとてもショックでした。手術前は体をくすぐられるのが大好きで、くすぐり遊びをすると明るいかわいい声であんなに笑っていたのに、おなかや足などに触られていることさえ気づかなくなっていました。
立てない、座れない、寝返りもできない様子を見て、まひの厳しい現実を思い知りました。

手術後の痛みがあっても周囲を気づかい、明るく振る舞っていた

入院中も会いたがるほど大好きなお兄ちゃんの湊人くんと一緒に。

――2回目の手術のあと、理央奈ちゃんはどんな様子でしたか?

佳寿美 突然寝返りもできなくなり、手術の傷も痛む状況でした。定期的な痛み止めが1日に3回必要になるくらいの痛みです。娘自身もは胸から下の感覚がまったくないとわかってきた様子のときには、一緒にいて、とてもつらかったです。
でも、理央奈は、意外なほど明るかったんです。手術の前までは歩けていたのに、急に歩けなくなって感覚もない、とてもつらかったと思います。でも理央奈は、泣くことはあっても「家族に会いたい」という内容がほとんどでした。

明るく振る舞っていたのはたぶん、私を気づかっていたからだと思います。数回程度ですが、がまんしきれなくなり、「どうしてこんなことになったの?」と号泣することもありました。でも、自分の置かれた状況を受け入れ、本当に頑張っていたので、無理をしていないかメンタルが心配でした。

手術を受けたのは2022年5月、コロナ禍でした。だから、家族も面会ができません。付き添い入院をすると、付き添ったほうもなかなか病院から出られませんでした。
4カ月入院しましたが、体の状態は変わらず、何よりも理央奈が精神的に限界で「お兄ちゃんに会いたい」というので退院することになりました。

――入院中、お兄ちゃんとは面会もできなかったのですか?

佳寿美 毎日ビデオ電話はしていましたが、直接は会えませんでした。理央奈はお兄ちゃんが大好きで、とても仲のいい兄妹です。入院中、お兄ちゃんに会えないのを寂しがっていました。理央奈にとってお兄ちゃんの存在はとても大きいんだと思います。

――お兄ちゃんの湊人くんはどんな性格ですか?

佳寿美 ものすごく優しくておだやかな性格です。理央奈は湊人にはわがまま放題で甘えるのですが、湊人が全部ニコニコして受け止めてくれるので、なかなかけんかになりません

退院してからは、家族と一緒に過ごせることもあり、理央奈もかなり元気になりました。家族の力の大きさを実感しました。

お話・写真提供/佳寿美さん 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部

YouTubeで明るくひょうきんな笑顔を振りまく理央奈ちゃんですが、佳寿美さんの話を聞くと、痛い手術やつらい経験を乗り越えてきたのだとわかります。わずか5歳で自分の置かれた状況を理解し、周囲を気づかう様子はけなげです。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

『今日もさわやかに麗しく生きていきましょう』

「ちいりお」ことりおなちゃんは、今やSNS総フォロワー数160万人越えのスーパーユーチューバー! 実は側弯症の手術の影響で身長は93センチで止まり、下半身がまひして歩けない女の子。人生ハードモードなりおなちゃんですが、また歩くことを信じて一生懸命リハビリと学業&ユーチューバーをこなす日々。ちいりお・ちいりおママ著/1650円(KADOKAWA)

理央奈ちゃんのYouTubeチャンネル「ちいりおちゃんねる」

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年1月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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