義母の介護中にブランドバッグをすり替えられた、犯人は誰か?48歳、義実家介護に疲れ果て…

夫の実家は近所にあり、高齢の両親の介護の手伝いをしているが、同居の義妹が全く役に立たない。もともと母親とは折り合いが悪いそうなのだが、本来ならば彼女がやるべきことも放棄するのだ。

親の介護は誰にとっても他人事ではない。自分の親でさえ大変なのに、夫の親となればなおさら疲弊感は強まるだろう。そんな中で、夫の実家でさらに不穏なことが起きて心身共に疲れ果ててしまうこともある。

約束が違うとはいえ……

結婚して17年、15歳と13歳の子がいて、仕事ももっているヨリコさん(48歳)。最近、自身の体調も不安定なのに、そこへ夫の両親の介護をせざるを得ないことになった。 4歳年上の夫の両親はすでに80代。1年半前に義父が脳梗塞で倒れて、リハビリはしたが半身に麻痺が残った。義母がひとりで世話をしていたが、その義母も半年ほど前に腰椎を疲労骨折してしまい、ヘルパーさんが来てはいるものの介護が追いつかない状態となった。 「私と同い年の義妹は離婚して実家に戻って同居しているんです。子どももいないので、仕事をしている平日は難しくても、週末は彼女が面倒をみてくれるという約束だった。夫からも『平日だけでいい。きみの時間があるときだけでもいい』と頼まれて……。 幸い、私は週に2回の出社で仕事をしているので、在宅の日は出勤時間が短縮できる。夫の実家はうちから自転車で10分ほどなので、夕食の時間帯くらいは見てあげられると引き受けたんです。私の親ももういい年ですし、夫が困っているので協力したいという気持ちでした」

義実家と折り合いの悪い義妹が非協力的

夫は早朝、実家に寄って両親の体調を見つつ洗濯などをしてから出勤する。朝食と昼食についても何ができるか確認、あとはヘルパーさんに託す。そのくらいは義妹がして当然なのだが、義妹はもともと親と折り合いが悪く、夫は心配らしい。 「私もできる限りのことはしていました。だけど週末、義母から連絡がくるようになった。『今日は体調が悪くて食事の支度ができないの』『寝具を取り替えようとしたけど途中で動けなくなった』などなど。行ってみると義母が布団に埋もれていることもありました。 週末なのに義妹はいない。どうしたのかと思ったら、金曜の夜から帰ってないという。付き合っている人がいるのか夜遊びしているのかわかりませんが、無責任ですよね。当初の約束は週末はやらなくていいということだったのだから」 多感な時期の子どもたちを抱えているから、ヨリコさんだって自分の家族を大事にしたい。特に上の娘は受験でナーバスになっていた時期だった。

夫が言い含めてくれたけど

その後、疲れ果ててしまったヨリコさんの身を案じて、夫が妹に「週末だけはうちの家族を優先させてほしい」と言ってくれた。義妹は「わかった」と言ったらしいが、その後もときどき義母からSOSが入った。 「あるとき行ったら、義妹もいるんですよ。だけど足首に包帯を巻いていて。母親をトイレに連れていこうとしたら義妹も転んでしまったとか。でも義母は妙な顔をしている。義妹が嘘をついているんだとわかりました。 義母がかわいそうになってしまって、その日は家の中を片づけたり夕食を作ったりしました。義母は『ごめんね』と涙ぐんでいて。義妹は夕方になったら包帯は巻いていたけど足を引きずることもなく歩いていましたよ」 その日はたまたま夫が仕事で出かけていたのだが、「帰りに何か買って帰るからうちの食事は気にしなくていいよ」と連絡があった。 「その後、娘から連絡があって早く帰ってきてということだったので、あわてて義実家を出ました。自転車を飛ばして帰り、ちょうど帰宅した夫と4人で食卓を囲んで……。娘からは受験に関して愚痴を聞かされましたが、家族で励まし、笑顔になった娘にホッとして」 その晩遅く、ヨリコさんは自分のバッグがどこかおかしいと気づいた。それは夫がかつてプレゼントしてくれたもので、いつも持っている、とあるブランドの大好きなバッグだった。 「寝室でどういうことなんだろうと考えていたら、夫が入ってきた。朝持って行ったときは確かにいつものバッグだったんだけど、今見たら、私のより新しい。しかもシリアル番号がない。これってバッタもんじゃない? と。 義実家にしか行ってないから、もしかしたら義妹がすり替えたのかもしれないと思いましたが、そこまでは言えない。すると夫がすごい勢いで家を飛び出していきました」

ブランドもののバッグすり替え犯は?

夫は深夜に実家に突入、自分の妹が妻のバッグをすり替えたことを確認した。こんなことは両親には言えない、許してほしいと夫に頭を下げられ、ヨリコさんは夫のことも気の毒になってしまったという。 「義妹はもともと甘やかされて育ったようで、自分の思い通りにならないとかんしゃくを起こすような子だったそうです。大人になって社会人として日々を送っていても、やはりわがままは直らない。義妹だってブランドバッグくらい持っているのに、人のものをほしがったのか、私への嫌がらせだったのか」 どうやら後者だとわかったのは、義母がヨリコさんのことを褒めるたびに義妹が「お兄ちゃんもお母さんも、あの女に騙されている」と義妹が不機嫌になると聞いたから。だったら義妹がもう少し協力してくれれば、私は行く頻度が下がるのにとヨリコさんは言う。 「自分の親と折り合いが悪くて、兄の妻である私に親が心を寄せているから腹が立つんでしょう。わからなくはないけど、介護したあげく恨まれるのはちょっと筋が違う。夫は自分がなるべく行くようにすると言っていますが、義母は私が行かないと寂しがる。もう、どうしたらいいかわからなくなっています」 事務的に他人に任せればいいというわけではない。義母の気持ちを大事にしたいと思えば思うほど、うまくいかなくなるとヨリコさんは肩を落とした。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。 (文:亀山 早苗(フリーライター))

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