[社説]被災者の生活再建 住宅への支援重層的に

 被災者の生活をどう再建するか。地域の復興にも直結する重要な課題だ。着実に、かつ迅速に進めることが求められる。

 能登半島地震の被災者の仮設住宅への入居が始まっている。大きな被害を受けた珠洲市では小学校のグラウンドに40戸が完成した。

 9日に入居した人々は「水が出てうれしい」「あったかい」と喜びの声を上げた。被災者にとって、仮設住宅への入居は生活再建の第一歩だ。

 地震では約240人が亡くなった。被害の全容はいまだに明らかになっておらず、石川県の集計によると9日時点で住宅被害は約6万戸を超えている。

 仮設住宅について県は3月末までに約1300戸の入居が可能になるとするが、避難所に身を寄せる人など応急的な需要の9千戸には追い付いていない。

 避難生活が長期化すれば災害関連死にもつながりかねない。高齢の避難者が多いだけに急ピッチの整備が望まれる。

 被災した輪島市立小中学校計7校も、高校の空き教室を使って登校を再開。これで県内全ての小中学生が登校可能となった。

 ただ、遠方に集団避難する中学生もおり、再開初日の6日に登校できたのは在校生の2割強にとどまる。

 同じ6日には輪島市朝市組合などの会合が開かれ、地震時の大規模火災で被害を受けた輪島朝市の出張再開が決まった。

 多くの観光客が訪れる朝市は地域経済の要だ。出張開催を輪島市で再開する第一歩としたい。

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 今回の地震で特に深刻なのが断水の長期化だ。道路と配水管が広範囲に損傷したためで、9日現在でも約3万5千戸が断水している。

 県によると、仮の復旧でも珠洲市など一部は4月以降になる見通しだ。小学校に設けられた給水所などには、ポリタンクや袋をさげた住民らがひっきりなしに訪れている。

 過去の災害でも水道復旧は課題となってきた。水道事業は基本的に自治体や事務組合などが担うが、地方の財政状況の悪化で水道管の耐震化は進んでいない。

 水不足は飲食への影響にとどまらない。住民の衛生や健康にも直結し、命にも関わる課題だ。

 陸域に約2千もの活断層がある日本では、地震はどこで起きてもおかしくない。被災後の復旧はもちろんのこと、水道管の耐震強化にも国の早急な対応が求められる。

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 政府は、地震からの生活再建を支援するため高齢者世帯などに最大600万円を支給する方針を決めた。現行の被災者生活再建支援法の最大300万円から増額した。

 住宅などの被害が大きい能登地方6市町などへの追加支援。若者や子育て世帯向けに住宅ローンの金利負担助成も検討するというが、金額も給付対象も十分とは言えない。

 支援法の対象世帯を半壊全般に広げるべきだ。自治体独自の支援制度や民間の地震保険と組み合わせるなど、重層的な支援が必要だ。

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