【80年代アニソンの魅力】エモいアニメ「きまぐれオレンジ☆ロード」とシティポップ  「きまぐれオレンジ☆ロード」とシティポップの蜜月関係

シティポップのイメージをわかりやすく表現した稲垣潤一「246:3AM」

松原みき「真夜中のドア」や竹内まりや「プラスティック・ラブ」が動画サイトなどを通じて話題になったのは、2015年あたりだっただろうか。日本のシティポップが多くの国の人々に愛されるようになり、令和になる頃には多くの隠れた名盤がアナログ盤で復刻されるという不思議な現象も起きている。

ただ、シティポップというジャンルは1980年代からすでに存在はしていたものの、近年のシティポップとは確実にニュアンスが違っていた。現在のシティポップはサウンド面から語られることがほとんどだが、80年代は歌詞の世界観も重要だった。

80年代シティポップのイメージをわかりやすく表現したのは、稲垣潤一のファーストアルバムのタイトル『246:3AM』だろうか。要約すると “青山通り、午前3時” 。これが自分のイメージするシティポップの世界だ。当時、稲垣潤一は東芝EMIに在籍しており、アルバム『リフレクション』がミリオンセラーを記録した寺尾聰や “シティポップの貴公子” と呼ばれた山本達彦、女性アーティストではユーミンや中原めいこも在籍していた。だからか、東芝EMIは “オシャレで音楽をリリースしていたレコード会社” というイメージを今でも持っている。

今回はそんな東芝EMIから主題歌がリリースされていたアニメ『きまぐれオレンジ☆ロード』について書いてみたい。

累計2,000万部を超える人気コミック「きまぐれオレンジ☆ロード」

『きまぐれオレンジ☆ロード』は漫画家・まつもと泉の連載デビュー作で、『週刊少年ジャンプ』に1984年15号から1987年42号まで連載され、現在では累計2,000万部を超える人気コミックになっている。

超能力をもつ主人公・春日恭介と、美少女・鮎川まどか、まどかの幼馴染み檜山ひかるとの三角関係を中心に展開される物語だが、テレビアニメとしては1987年4月から1988年3月まで、日本テレビ系列を中心に48話放送されている。テレビアニメのオープニングとエンディングテーマやサウンドトラック盤はすべて東芝EMIからリリースされており、スタイリッシュなシティポップサウンドが物語を華やかに彩っていた。

テレビアニメが放送された時期はディスコやユーロビート全盛期で、起用された楽曲にはその影響が色濃く反映されている。この贅沢なサウンドや世界観こそが ”シティポップ” なのかもしれない。

1話からの主題歌は池田政典、オープニングにふさわしい軽快なサウンド

『きまぐれオレンジ☆ロード』は全48話中、オープニングとエンディングテーマがそれぞれ3曲オンエアされたが、1話から19話までのオープニングには池田政典が起用されている。池田政典は1986年8月、林哲司作曲による楽曲「ハートブレイカーは踊れない」でデビュー。3枚目のシングル「NIGHT OF SUMMER SIDE」がこのアニメのオープニングとして起用された。当時コンポーザーとしても多くのヒット曲を生み出していたNOBODYが作曲、アレンジを新川博が手がけ、オリコンの最高位7位を記録するヒットになっている。オープニングにふさわしい軽快なサウンドの1曲だ。

20話から36話までのオープニングテーマに起用されたのが長島秀幸だ。1986年にキャニオンから鈴木秀幸としてデビューしたが、『きまぐれオレンジ☆ロード』のオープニングテーマ「オレンジ・ミステリー」で長島秀幸に改名している。鈴木秀幸時代のシングル「誘惑サマーナイト」も爽やかで軽快なシティポップサウンドなので、その世界をさらに追求したサウンドとも呼べる1曲だ。この曲は大ヒットにはならなかったが、最高位34位を記録しており、無名の新人としてはかなり健闘したのではないだろうか。ちなみに、この曲もNOBODYが作曲を手がけている。

軽快なデジタルビートを前面に出した「鏡の中のアクトレス」

37話から48話までのオープニングに起用されたのが、中原めいこの「鏡の中のアクトレス」だ。中原めいこは1985年に同じ日本テレビ系のアニメ『ダーティペア』主題歌「ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレット」をヒットさせており、すでにアニソンの実績を持っているアーティストであった。軽快なデジタルビートを前面に出したこの曲は、最高位8位を記録する大ヒットになっており、近年では同タイトルのLPが高額で取引される人気ぶりだ。同時にエンディングテーマにも中原めいこの「Dance in the memories」が起用されており、マイケル・フォーチュナティの「INTO THE NIGHT」を思わせるユーロビートサウンドが印象的なエンディングだった。

1話から36話までのエンディングテーマに起用された和田加奈子の「夏のミラージュ」「悲しいハートは燃えている」は今回の『80年代アニメソング総選挙!ザ☆ベスト100』ノミネート楽曲からは泣く泣く外れてしまったが、彼女のSpotifyの再生回数はこの2曲が断トツで高い。ちなみに中原めいこは「鏡の中のアクトレス」が、池田政典は「NIGHT OF SUMMER SIDE」が共にトップトラックだ。いかにこのアニメの楽曲たちが、長きに渡り愛されてきたかが実証されている数字だ(残念ながら「オレンジ・ミステリー」は未配信)。

「きまぐれオレンジ☆ロード」に起用された6曲は、根底に流れているものに、どこか共通点があるように感じる。タイアップを切り離して聴いても80年代後半のバブル期特有のゴージャスなエッセンスが随所にちりばめられていて、現在では決して制作することの出来ないサウンドも人気の要因のひとつだろう。当時あまり高い評価を受けなかった音楽が、近年、動画やサブスク等で再評価されているというのは、リアルタイムを生きてきた人間としては何とも言えず嬉しいものである。

カタリベ: 長井英治

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