誰も待ってなかった「某ロボット生命体」パチモン最新作!『トランスモーファー メカ・ビースト』は14年ぶりに“WAR WAR”する便乗SF映画

『トランスモーファー メカ・ビースト』DVD価格:¥5,280 (税込)発売:ニューセレクト株式会社© 2023 Acme Holding Company, LLC

「超パロディ生命体」シリーズまさかの最新作!

知る人ぞ知るSFパチモン映画、『トランスモーファー -人類最終戦争-』(2007年)およびその続編、『トランスモーファー リターンズ』(2009年)。低予算映画スタジオ<アサイラム社>が、かつて『トランスフォーマー』に便乗して作った、低予算映画シリーズのタイトルである。

そして時は流れ2023年。かの超大作『トランスフォーマー ビースト覚醒』の公開に合わせ、誰もが予想だにしなかった『トランスモーファー』シリーズの第三弾が、めでたくリリースされることとなった。その名も、『トランスモーファー メカ・ビースト』だ。なぜ誰も予想していなかったかというと、間に10年以上空いているし、だいいち、どうでもよかったからである。

それはさておき今回は、しばらくぶりに寝ぼけまなこから覚醒した『トランスモーファー』シリーズの最新作、『メカ・ビースト』を紹介していこう。

ちなみに、名前こそ『トランスフォーマー』に寄せているものの、作品の中身はどちらかというと『ターミネーター』や『マトリックス』に近い。それも過去作から一貫して。

未知の機械生命体に勝利した人類を襲う新たな脅威

その昔、突如宇宙から飛来した謎の機械生命体が、一方的に地球文明を襲撃し始める(『トランスモーファー リターンズ』)。

侵略軍の圧倒的パワーは凄まじく、たちまち総人口の九割を失った人類は、地下に潜り込み徹底抗戦の構えを取る。長く苦しい戦いが続いたが、それでも最終的には人類側が、まさかの勝利を収めることになった(『トランスモーファー -人類最終戦争-』)。

そして2324年。300年以上の歳月を経て「Zボット」と呼ばれる敵ロボットを打ち負かし、地上を取り戻した人類は、今日も文明再興に力を注いでいた……。

が、地獄で生き永らえていたのは侵略軍も同様だった。滅ぼしたはずの機械生命体は、かろうじて破壊を免れた中枢のナノボット技術を駆使して蘇り、再起を狙っていたのだ。

Zボットに代わって出現した新型ライオン・ロボット「Qボット」は、驚くべきスピードで地上を制圧する。ナノボット技術であらゆるデジタル機器を取り込み、自らと同じQボットに作り替えてしまう侵略軍を前に、またしても苦戦を強いられる人類。残された最後の希望は、野球バットや自動小銃のようなアナログ兵器と、先の大戦で人類が捕獲した禁断の敵性メカ、旧式のZボットだった……。

細かいことは気にしない! ドサクサ設定改変

まずこのシリーズ、悪役の設定が絶妙にはっきりしていない。1作目では<実はロボットではなく、部分的に有機体を備えたエイリアン・サイボーグと機械兵器が地球人を突然攻撃>、2作目では<実はやっぱり大昔からあらゆるデジタル機器に仕込まれていたという、変形殺人ロボットが破壊工作を開始(後に本隊が襲来)>、3作目では<ナノボット技術で誕生したという動物ロボットが大暴れ>と、ギリギリ筋は通らなくもないにせよ毎回、侵略軍が丸ごと別物に変化しているかのようなイメチェンを図っている。

また、本作のオープニングでは1作目および2作目のあらすじがおさらいされるのだが、その中にもドサクサに紛れてさらっと新設定・新用語がねじ込まれていたり、微妙に過去作と話が違っていたりする。とにかく整合性も何もあったものではないが、この『トランスモーファー』シリーズの内容をいちいち細かく記憶している視聴者の方が少数派だと思われるため、そこは問題にならないだろう。

造形のクオリティは過去作から大幅アップ!

さて所感だが、とりあえず、見てくれのクオリティーは上がっている。初代『トランスモーファー』と比べると、登場するロボットの造形美が雲泥の差。四足歩行で動くライオン・ロボットの動きがぎこちなかったり、マシンの細かい変形シークエンスを謎のエフェクトでごまかしていたり、登場機体のバリエーションの少なさには物足りなさを覚えるが、過去作品の弱点だった<ぱっと見の安っぽさ>は劇的に改善されている。この点は素直に評価すべきだろう。また、「かつて倒した敵(1作目)の旧式ロボットを使って、新型の脅威に立ち向かう」という王道展開も嫌いではない。

一方、ストーリーのとっつきにくさとテンポの悪さは、一作目と同レベル。視聴者を置いてきぼりにする専門用語の数々と、群像劇めいた作りが合わさり、話がなかなか頭に入ってこない。この点は、まだ前作『トランスモーファー リターンズ』の方が比較的よくできていた部分だ(ただし『リターンズ』は話がわかりやすい代わりに展開が行き当たりばったりで、投げっぱなしの伏線が多いという問題を抱えている)。

最終的な視聴感は1作目と大差ないかもしれないが、それでも色々進化しているだけ上出来ではあるだろう。

文:知的風ハット

『トランスモーファー メカ・ビースト』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年2月放送

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