春節で帰省した際の親族からの「質問攻め」対策、中国の若者はAIゲームで予行演習

中国人は故郷を離れて暮らしていても、春節期には帰省して家族や親族と共に過ごすことが一般的だ。若者にとっての「悩みの種」は親族からの質問攻めだ。その悩みを軽減してくれるAIゲームが注目を集めている。

中国人は、故郷を離れて暮らしていても、春節(旧正月、2024年は2月10日)には帰省して家族と共に過ごすことが一般的だ。中国人にとって、家族や親族との絆を改めて感じ、自分が血のつながる人々と共に存在している喜びを感じる重要な“行事”だ。しかし若者にとっては、親族と久しぶりに会うことが、実に煩わしいことである場合も多い。「いつになったら結婚するの?」「去年はどれだけ稼いだの?」などと、質問攻めに遭遇するからだ。

春節という、本来ならば祝賀気分に浸れる日に、親族からの質問攻めで気分が重く沈んでしまう。そんな状況は、映画や小説などでも描かれてきた。不満を訴えるネット投稿も多い。そんな中で、注目を集め始めたのが「年賀の頂上決戦」というAIゲームだ。このゲームは一種のチャットボットで、プレイヤーは、多くの親族が入れ替わり立ち替わり発する仕事や結婚に関連する質問に回答していく。

質問をする親族の性格はさまざまで、回答になかなか納得しない人や、質問好きの人、また回答者のことを心から親身に考えている人などがいる。また、回答によっては「身勝手だ」「親不孝だ」「家族を失望させている」などの“お叱り”を頂戴する場合もある。ゲームには7段階が設定されており、プレイヤーは親族を納得させることでそれぞれの段階をクリアして、最後に両親と“対決”することになる。

「年賀の頂上決戦」はもともと、「24時間以内にゲームを完成させる」コンクールで学生チームが作り上げたものだった。チームづくりに参加した21歳の若者によると、最初は親族を貶(おとし)めるゲームと誤解された。しかしその後、ゲームを通じて親族とのコミュニケーションの方法を見出し、親族を喜ばせることに役立つと、理解されるようになった。一般公開されて以来、すでに100万のユーザーを獲得したという。

開発者の一人である史宏傑氏は、「従来型の状況では、(年上の親族に対して)思う存分に話すことができなかった。その鬱憤(うっぷん)がどんどん蓄積すれば、ある日突然爆発しやすい。今は、AIで発散できる。そうすれば、帰省した際に家族と話しやすくなる」と述べた。

別の開発者は「若者に対して、春節期間中の人とのつながりへの配慮をもたらしたい。肉親の自分に対する愛情を理解する手助けになってほしい」と述べた。

「年賀の頂上決戦」に登場する親族は年上の女性で、つまり「うるさいおばさん役」だ。そして、質問を発してプレイヤーの回答に反応するだけでなく、「自動車を運転する時には、必ず安全に気を付けて」あるいは「暖かくして過ごしてね」などの言葉もかける。ユーザーからは「ゲームが親族の替わりをしてくれたことに感動した」「親族とこういう風に会話したのは久しぶりだ」などの声も寄せられているという。(翻訳・編集/如月隼人)

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