【霞む最終処分】(21)第3部 決断の舞台裏 跡地の再興協定に明記 まずは県内の理解を

中間貯蔵施設の安全確保に関する協定書の写し。施設の跡地を地域振興に活用する旨が記されている

 大熊、双葉両町に東京電力福島第1原発事故に伴う中間貯蔵施設の設置が決まり、環境省と県、両町の4者は2015(平成27)年2月に施設の安全確保に関する協定を結んだ。環境省が除染土壌の搬入を開始した後、30年以内に県外で最終処分を完了させるために必要な措置を講じるよう明記されている。「第14条の5」には「県や大熊、双葉両町の意向を踏まえ中間貯蔵施設の敷地の跡地が地域の振興および発展のために利用されるよう、協議を行うものとする」と施設の跡地を地域振興に活用する旨が盛り込まれた。

 国が施設の跡地に再びにぎわいを取り戻すとの「約束」を明文化した形だ。「国には地域をまた活性化させる責任がある」。双葉町長の伊沢史朗は記載の意義を語る。協定の締結時、伊沢は除染廃棄物が県外最終処分された後の施設跡地の姿を思い描いた。「『観光特区』として国が支援し、多くの人が集まってくる」。国が跡地に県内外から人が集う仕組みをつくり、地域が再興するイメージが脳裏に刻まれた。

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 中間貯蔵施設の跡地を活用するには、県外での最終処分の実現が欠かせない。だが、現時点で最終処分場は決まっておらず、最終処分量を減らすための除染土壌の再生利用も見通せない。法律で定められた2045年3月まで残り21年余り。伊沢は最終処分に関する結論が見いだせなければ、約束の期限が延ばされてしまうのではないかと危惧する。「法律は政治判断で変わってしまう。そのようなことは許されない」とくぎを刺す。

 県外最終処分の実現には理解醸成が重要だと訴える。福島第1原発処理水の海洋放出を巡り、政府は漁業関係者らの理解を得られず対応に苦慮した。除染廃棄物をため込む「日本一の迷惑施設」の受け入れについて、並大抵の努力では国民の理解を得られないと主張する。「なぜ、県外最終処分が必要なのか。歴史や背景、経緯を丁寧に説明する必要がある」と語る。

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 施設受け入れの際、大熊町の副町長だった鈴木茂も理解醸成の取り組みが足りないと指摘する。「国がしっかりと責任を持ち、まずは施設がある地元を含む県内の理解度を高めるべきだ。県民から最終処分に向けた取り組みに理解を得られなければ、県外には波及しない」と見解を示す。

 中間貯蔵施設跡地が再び活性化するのを願い、県外最終処分に向けた国の動きに今後も目を光らせる。伊沢、鈴木は同じ思いを抱く。「法律で定めた以上、土地を提供した町民たちは期限内に県外最終処分を果たすと考えている。国は約束を必ず履行すべきだ」と、除染廃棄物が置かれている限り「被災地」を脱せないとの考えだ。(敬称略)

 =第3部「決断の舞台裏」は終わります=

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